Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

2020-01-01から1年間の記事一覧

『男の孤独死』

本日は、長尾和宏先生の著書の紹介です。 お断りしておくと新刊ではありません。2017年のちょうど 今頃に出版されたものです。買っておいてすっかり読む のを忘れておりました。 男の孤独死作者:長尾 和宏発売日: 2017/12/21メディア: 単行本(ソフトカバー…

日本は異様に身体拘束が多い?

先日、石川県の男性が身体拘束中に肺塞栓を起こし、その後 死亡した件の判決が名古屋高裁でありました。 この件について私は詳しく知りませんのでコメントが難しい のですが、亡くなった患者さんは拘束に至る前に看護師への 暴力行為があり、「人を割けば」…

『がんになった緩和ケア医が語る「残り2年」の生き方、考え方』

この秋に出版された、緩和ケア医 関本 剛先生の著書です。 タイトル通り、肺がん脳転移、治癒は見込めず、 生存期間の中央値は2年と。 少し前に購入してしましたが、同じ世代の緩和ケア医、 開業医であり訪問診療も行っている先生ということもあり なかなか…

BSC(ベストサポーティブケア)という言葉

病院の先生からの情報提供書に、「BSCの方針となりました」、 「BSCを選択されました」等という言葉が書かれていることが いつしか増えて来たように思います。BSCはBest Supportive Careの略ですが、抗がん剤や手術などの有効な治療がなく、 「今後患者さん…

安心して死にたいと言える場所

だから、もう眠らせてほしい 安楽死と緩和ケアを巡る、私たちの物語作者:智弘, 西発売日: 2020/07/14メディア: 単行本『だから、もう眠らせてほしい』 以前私が紹介した西 智弘先生のこの本。 安楽死について緩和ケア医としての考えや葛藤をまとめた 素晴ら…

『死亡直前と看取りのエビデンス』

今日は久し振りの本の紹介です。全く新刊ではないです。 過去にTwitterでも紹介したように記憶しています。 既に読まれたという方も多いかもしれませんが、まだ の方は是非お勧めしたい本になります。死亡直前と看取りのエビデンス作者:森田 達也発売日: 201…

何が「本人の意思」なのか

終末期の患者さんに、「どのような治療を受けたいか」、 あるいは「受けたくないか」を決めて頂くことは、しば しば難しくなります。意識がはっきりしていない事も 多くありますし、記憶や判断力が落ちた状態での「意思」 を、御本人の本当の意思として捉え…

記憶より感情を

認知症の患者さんのご家族が患者さん本人に対して、 出来事や約束をどうにか思い出してもらおうと画策する ことがあります。これは当然の心理ですが、相手が認知症 の患者さんである以上、この試みはうまくいきません。 よく見掛けるのは、約束事を書いて壁…

『安楽死に至るまで』

この本は、今私がTwitterでフォローさせて頂いている、 くらんけさんが書かれた本です。 くらんけさんは、スイスで安楽死(正確には介助自殺) の権利を得ている方で、この本は「スイスで安楽死の 権利を得るための手順」が書かれています。 安楽死反対の方…

私が行くまでもたせて下さい

9月6日にTwitterで私がこのような書き込みをしたところ、 人生の終末期に「心肺蘇生」をして意識が戻った人を 何人かみましたが、肋骨がボキボキになっている痛みは 相当なもののようです。全身状態が非常に悪いので、 食べたり普通に話したり笑ったりはとて…

緩和ケアは安楽死を望む人を救えるのか

47NEWSの『安楽死を問う』の4回目は、西智弘先生でした。www.47news.jp西先生は、2020年7月に、『だから、もう眠らせてほしい』と いう、安楽死と緩和ケアについての本を出版されました。 私も8月9日のブログでこの西先生の本について感想を書かせて 頂きま…

偽りの希望は是か非か

昔、自分が書いたブログを読んでいて、代替療法に ついて書かれた記事を見つけました。blog.livedoor.jp 大部分の患者様は病気を受け入れ、自分が長くない事を ご存知ですし、食品で癌が治らない事も理解されています。 しかし、同時に現実的ではないにせよ…

備えること、備えないこと

今年になり、比較的若く独居のがんの終末期の患者さんを 引き受けることが多くなりました。 昔と比べると、抗がん剤の副作用が軽減し、 ぎりぎりの状態まで抗がん剤治療を行うことが多く、 いよいよ治療が終了し外来通院が出来なくなると残された お時間が1…

『だから、もう眠らせてほしい』

だから、もう眠らせてほしい 安楽死と緩和ケアを巡る、私たちの物語作者:智弘, 西発売日: 2020/07/14メディア: 単行本緩和ケア医、西智弘先生が「安楽死を受けたい」 と訴える二人の患者さんを通し、安楽死について 考えていく内容。 途中、多発性骨髄腫を発…

一体誰と話しているのか

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者女性の依頼を受け、 「殺害した疑い」があるとして、7月23日に二人の医師が 逮捕されました。この事件はTwitterでも大勢の人が取り 上げ、またこの事件について書かれた記事も多数、 インターネット上で読みました。識者は「…

訪問をお断りすること

今回は日記のような内容になります。開業して、7月1日で7年目を迎えます。 訪問診療の殆どは紹介で成り立っています。 病院の連携室、訪問看護師さん、ケアマネジャーさん が、「この患者さんは虎太郎先生が合っているのでは」 と考えて下さりご紹介を頂くこ…

「在宅ひとり死」に必要なこと

Yahooに、上野千鶴子さんの「在宅ひとり死」についての 記事がありました。news.yahoo.co.jpよく、おひとり様が在宅死を迎えることが出来るか、と いうことが話題になります。結論を言えば可能ですが いくつか条件があります。まず、ご本人の強い決意と 意思…

危険を事前に伝える難しさ

眠剤に関係すると思われる転倒が、時々起こります。 そもそもあまり処方したい薬ではないし、 最大限注意はしますが、それでも起こります。 特に、がんの終末期では皆さんぎりぎりの状態で トイレまで歩かれるので、転倒の確率は飛躍的に 上がってしまいます…

認知症介護を取り巻く感情

認知症のケアで最もやってはいけないことのひとつは、 御本人の記憶違いや出来なかったことに対して厳しく 注意したり叱責することだと思います。 もちろん一生懸命介護をしている家族を責める意図は ありませんし、仕方のないこともあると思います。 ただ、…

トラムセットによる食欲低下は意外と多い

今年に入り、「食欲が落ち、衰弱したため訪問診療を お願いしたい」という患者さんのうち、食欲低下の 原因が「トラムセット」という痛み止めであった方が 偶然とは言え3人続いたため、これは注意喚起した方が 良いのでは、と記事にさせて頂きました。トラム…

電話・オンラインによる訪問診療についての提言

新型コロナウイルスの流行を受けて、厚生省は2月28日から 定期的な外来受診の代わりに、電話・オンラインでの再診を 認め、続いて4月13日より初診も、直接クリニックや病院を 訪れることなく診察を受け、薬を受け取ることが可能と なりました。しかし、4月15…

介護崩壊の足音

新型コロナウイルス蔓延に伴い、本来必要な医療を提供 出来なくなる『医療崩壊』が懸念されていますが、介護 も結構厳しい状況になっています。www3.nhk.or.jp昨晩のNHKのWEB NEWSの記事ですが、緊急事態宣言の 出ている7都道府県で、なんと234の介護事業所…

新型コロナウイルスの流行のなかで

【追記】 この記事を書いてすぐのタイミングで、大田区の老健の 職員に新型コロナウイルスの患者さんが出ました。 いよいよ、近くま迫って来ました。 ブログ記事の内容が実際に起こりそうです。都内でも新型コロナウイルス陽性の患者さんの報告が 増えて来ま…

「いい在宅医」を探す時に大切なこと

こんな記事がありました。dot.asahi.com記事は、いい在宅医の条件として以下を挙げています。 1.自宅から近い 2.訪問看護やケアマネジャーと連携がとれている 3.看取りの実績概ね賛同します。 まず、1.ですが非常に大切です。自宅から離れれば一般的に 距離…

BZ系薬中止の議論の前に

2月2日の、AERAの記事です。dot.asahi.com高齢者への睡眠薬、安定剤の処方が危険なことは正しいです。 転倒⇒大事な骨を折ってしまうことで取り返しのつかない ことになるかもしれません。きちんと覚醒していない状態で 食事を摂れば誤嚥のリスクも高くなるで…

救急搬送は訪問診療の「失敗」か

今日は、こんなタイトルにしてみましたが、訪問診療医の 多くは特に看取りを意識して訪問している患者さんの場合、 患者さんが救急搬送になると自分の訪問が「失敗してしまった」 と感じる医師が、あるいは看護師が、割合に多くいるようです。 講演や勉強会…

患者さんに『寄り添う』とは

私が訪問診療医として特に大切に考えていることは 「対話」です。ですので私は一人当たりにかける 時間は数十分、移動を合わせ一時間程度時間がとれる ようにしています。御本人が会話が出来ない方では 御家族と。そしてメールや電話でも殆ど私自身が対応 し…

酸素投与は緩和ケアにつながるか

medical.nikkeibp.co.jp本日17日の、日経メディカルの記事です。何か新しい知見でも あるのかと期待してしまいましたが、特に目新しい内容では ありませんでした。上記は会員登録しないと見れませんし、 私の以前書いた記事が我ながらよくまとまっていますの…

「カウンセリング」から学ぶこと

私は今、カウンセリングの資格を勉強していますが、 医療とカウンセリング、どちらも「問題の解決」を 目的としながら、考え方が大きく異なることは興味 深いと思います。医療は、具体的な問題の解決策を医師が考えて提案 します。より専門的な知識が必要で…