Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

電話・オンラインによる訪問診療についての提言

新型コロナウイルスの流行を受けて、厚生省は2月28日から
定期的な外来受診の代わりに、電話・オンラインでの再診を
認め、続いて4月13日より初診も、直接クリニックや病院を
訪れることなく診察を受け、薬を受け取ることが可能と
なりました。

しかし、4月15日現在、訪問診療は電話・オンラインを定期
訪問に代えることは許されていません
。何故なのでしょう。
私は訪問診療こそ、電話・オンラインによる指導・管理が
必要なのではないかと思っています。

…何故か。これは4月1日のブログにも書いたのですが、

kotaro-kanwa.hateblo.jp

訪問診療を行っている開業医は、自らが新型コロナウイルス
に感染する可能性、それを訪問している患者さんにうつして
しまうことをとても心配しています。
私も自分が濃厚接触者になったり、発熱する可能性を考え、
担当している患者さんを極力速やかに他の医療機関にお願い
出来るよう、情報提供書などをまとめています。
しかし、この状況ではすぐには見つからない可能性があり、
『訪問診療難民』が出るのではないかを危惧しています

このような事態を極力避けるために何が出来るか。
やはり単純に、患者さんとの接触回数を減らすことは
有効だと思います

もちろん在宅の患者さんは病状が重い方が多く、
電話での診察は限界があるかもしれません。ただ、

・もちろん、期間限定で今だけ
・もちろん、定期訪問だけ(臨時往診は別)
・移動は難しいが体調は安定している(訪問診療が月に
1回で済んでいるなど)
・数か月以上、主治医が担当している
・御本人や家族が電話での診察を希望している

等の条件を満たす患者さんだけでも、電話・オンライン
診療が許されないものでしょうか?

これに加え、開業医が発熱した等の状況で、他の医師
がバックアップ出来るような体制作りが必要だと思います

このような体制は開業医を守るだけでなく、
患者さんの感染リスクをも減らし、『訪問診療難民』を防ぐ
ことが出来るのではないかと考えています。

私は2月から危機感を持ち、区に意見を提出したり、
医師会や近隣の在宅を行っているDr.には声を掛けて
いますが、残念ながら一介の開業医の努力だけでは、
なかなか実現はしません。正直、今のままでは熱を
出した開業医がマスクをして
患者さん宅を訪問しざるを得ない…等ということになる
のではないでしょうか。

最後に、電話だけで高額な『在医総』を許すべきだろうか、
という考えもあると思います。しかし、仮に電話での診察で
あったとしても、在宅の患者さんに熱や咳の症状がある
患者さんを診察する時は相当なリスクと、
病院への救急搬送が難しい現状で、
普段と比べても多大な責任を負います

また、開業医が感染した場合クリニック閉鎖は免れず、
そのまま閉院になってしまうリスクすらあります。

電話・オンラインによる訪問診療が認められ、
バックアップの体制が整えば、
仮に開業医が倒れても患者さんは困らず、
開業医も退院すれば仕事を続けることが出来ます。

医療崩壊が起こった場合、在宅で高齢・基礎疾患のある
患者さんを診るのは私達訪問診療医です。
訪問診療医を守ることが、地域の在宅の患者さんを守る
ことに繋がると私は考えています