Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

『男の孤独死』

本日は、長尾和宏先生の著書の紹介です。
お断りしておくと新刊ではありません。2017年のちょうど
今頃に出版されたものです。買っておいてすっかり読む
のを忘れておりました。 

男の孤独死

男の孤独死

  • 作者:長尾 和宏
  • 発売日: 2017/12/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

『孤独のグルメ』という人気番組があります。
輸入雑貨商を営む井之頭五郎というオジサンがひたすら
美味しそうに料理を食べるだけの番組です。
タイトルは「孤独の~」となっていますが、皆さんは
五郎さんを不幸そうだと思うでしょうか?
「孤独死」という言葉はとてもネガティブなイメージを
含みますが、それが幸せか不幸かと他人がどうこう言う
ことではないように思います。
長尾先生も、孤独死=不幸としてこの本を書いている
わけではありません。ただ、一人でいることを本人が
選んだのかどうか、身体的な強い苦痛があったのか。
またどうしても警察の介入や後始末の問題など
家族や賃貸業の大屋さん等に迷惑を掛けてしまうかどうか

等は気にする人も多いのではないでしょうか。

本著は、孤独死にまつわる様々なデータを挙げ、独居男性
の数が少ないのに対して孤独死の7割は男性ということから
その考察やどうしたら避けられるか等のアイディアが
書かれています。全体的に入門書として易しく、楽しく
読めるようにという意図が感じられますが、逆に雑学の
本のようになっていて、私達のような専門職が読むと
ちょっと内容が薄い感じもします。
また、知り合いを多く持つことは確かに孤独死を減らす
ことは出来るかもしれませんが、「死にそう」な段階で
発見された場合、知人の多くは病院に搬送しざるを
得ず、そこで苦しさだけ取り除いてもらえれば良いですが
延命治療を受けることになるリスクもあります。

何が良いかはそれ程簡単に言えることではないでしょう。

しかし、だからこそ「孤独死」を他人事として考えず、
このような本を読むことで考える切っ掛けを作ることは
良いことなのではないかと思います。
孤独死を考えたこともないまま突然死を迎えることと、
考えてある程度備えているのでは違うと思います。
この本でも触れられていますが、50~60代の孤独死も
かなり多いです
。積極的に機会を作らないと、死について
考える歳でもないでしょう。
そして、こうした死に方のスタイルを一方的に悲しい、
寂しい等と決めつけず、自宅で一人で最期を迎えること
を望む人達のために手段を分かりやすく案内したり、
法律を整備したるする必要もあるのではないでしょうか。