Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

「いい在宅医」を探す時に大切なこと

こんな記事がありました。

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記事は、いい在宅医の条件として以下を挙げています。
1.自宅から近い
2.訪問看護やケアマネジャーと連携がとれている
3.看取りの実績

概ね賛同します。
まず、1.ですが非常に大切です。自宅から離れれば一般的に
距離に反比例してサービスの質は下がってしまうでしょう。
患者さんの具合が悪いという連絡があったとして、近い
患者さんであれば医師も余った時間に立ち寄りやすい
ですが、往復1時間かかる患者さんの家であればそう簡に
「訪問の合間に対応」が出来ません。物理的な距離は重要
です。

2.は当たり前なのですが十分に出来ていないクリニックが
多いです。連携の上手さはだいたいコミュニケーションの
とりやすさと相関しますので、連携が上手な医師は患者さん
や家族にとっても話しやすい医師が多いのではないでしょうか。

そういう意味で、訪問看護師やケアマネジャーにお勧めの
在宅医を尋ねることは、最も良い方法のひとつだと私は思って
います。もちろん、相性はありますが。

そして3.看取りの実績。熱心に在宅医をやっていれば自然と
看取りに当たる数は増えますので目安になります。ただ、
この数字は「自宅で最期を迎えたい」「迎えさせてあげたい」
患者さんや家族には重要な数字ですが、医療機関がこれを
「自分たちの実績」と考えるようになってしまうと
「実績を上げるために患者さんを在宅に繋ぎとめる」ように
なってしまう危険があります
。実際、入院したいと言うと
自宅で最期を迎えるよう「説得」されるケースもあると聞き
ます。どこまでが無理な繋ぎ止めなのかは難しい場合もあり
ますが、いずれにせよ「看取りの実績」にあまりこだわるのも
それはそれで問題を生むのではないでしょうか。

3番目の看取りの実績の代わりに、私は2.と少しかぶりますが
「対話が出来るかどうか」を挙げたいと思います。話したい
時に、話が出来るのか。医師が自分の意見ばかりでなく、
患者さんや家族の気持ちを聞いてくれるのか。その時間を
割いてくれるのか
も大事です。話しやすい医師でも忙し過ぎて
滅多に話が出来ないならあまり意味がありません。

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これは、24時間対応なのに電話が来たのが翌日だった、という
記事です。これはあまりにひどいケースですが…。私は24時間
携帯を持ち歩く在宅医です。いつ電話しても患者さんをよく
知っている私が電話に出る、というのが私のクリニックの
「売り」ではありますが、日中にきちんとコミュニケーション
が図れ、気持ちを受け止めてもらえ信頼関係が築けていれば、
夜間は当直医でも良い場合が多いのではないかと思います。

対話出来る、信頼出来る。これより大切なことがあるでしょうか。