Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

胃瘻が「卒業」出来る患者さんの割合は?

胃瘻は口からモノを摂れなくなった患者さんの胃壁に 穴を開け、直接胃に栄養剤や水、薬を注入する方法です。栄養剤で栄養状態が改善すれば、治療中の病気が良く なればまた嚥下機能も改善し、食事が摂れるように なるのではないか?それはその通りなのですが…

モルヒネを13年間飲み続けた患者さん

またもやTwitterからの話題になりますが、こんなニュース を見掛けました。毎日新聞の医療プレミアから、 『緩和ケアの誤解 医療用麻薬は怖くない!』。少し前の 記事でした。https://mainichi.jp/premier/health/articles/20151202/med/00m/010/016000c私が…

医師ならばその治療を受けるのか

救急ドラマの患者さんは殆ど元気になりますが、 現実とのギャップがあり過ぎです。 心肺蘇生を受けた患者さんで一ヶ月後に生きていたのは8%、 社会復帰したのは3%。これでも多いと感じるのが医療者の 感覚です。メディアで奇跡ばかりをとりあげれば、それは …

胃瘻を作らないことは「弱者の切り捨て」か

昨日Twitterでこんな記事を見掛けました。headlines.yahoo.co.jp京都市で、市民が自分の終末期に備え、胃瘻や 人工呼吸器等の治療に対して、また療養の場所 などを予め書いておく事の出来る「事前指示書」 が配布され、物議を醸しているというニュース です…

「人は死ぬために生きる」のか

今はなくなってしまいましたが、以前『桜町病院 聖ヨハネホスピス』のホームページにアクセスすると、 「ホスピスはあなたらしく生きる場所です」という メッセージが流れていました。ホスピスはしばしば「死ぬ場所」と考えられていますが 本当は「苦痛を和…

医療リテラシー

リテラシー(literacy)という言葉を頻繁に目にするように なりました。これを読んでおられる多くの方々に今更説明 は不要だと思いますが、一言で言えば情報を理解・解釈し、 真偽や有益性を吟味し、人生に役立てていく能力を言います。 特にメディア、経済…

医師に出来てAIに決して出来ないこと

昨年から今年にかけて、AI(人工知能)に関する記事、特に 医療においても積極的にAIを活用していこうとする、あるいは 既にこんなことが研究されているという記事を目にするように なりました。AIの性能はまだまだ発展途上もいいところですが、たとえば IBM…

最高の5分を演じる患者さん

百聞は一見にしかず、という言葉がありますが、 逆に自分のみているものだけが正しいと思い込むと 色々なものを見落とすことになる場合があります。たとえば入院している患者さんの場合、最も近くに いるのは看護師さんです。多くの場合患者さんは 体調の変…

「易怒」に使う薬

患者さんの易怒に薬が効くか、というと結構効きます。 介護者が助かる場面ばかり強調して来ましたが、易怒 の症状を呈する患者さんの多くは強い不安や苛立ちを 抱えていますから、御本人も楽になると思います。 せん妄で興奮している方にも同じアプローチは…

コウノメソッド

昨日は認知症患者さんの多くに「易怒」があり、この症状 が介護負担を増す大きな原因のひとつではないか、と述べ ました。根底には患者さんの不安・苛立ちがあり介護の 工夫で軽減出来る可能性があるというお話をさせて頂き ました。しかし、誰も患者さんを…

認知症患者さんの易怒について

昨日は認知症の患者さんの暴言・暴力の話をしました。 認知症の患者さんと関わったことがある方であれば、 「怒りっぽい方が多いなぁ」と感じられた事がある かもしれません。約半数の認知症の患者さんにこの易怒 がみられると言いますが、私はこの「易怒」…

98%が「暴言や暴力受けている」

昨日の記事の中に、介護者である家族(親族・同居人) が要介護者である認知症の方、高齢者を虐待してしまう ケースが年間にどれだけあったかをお書きしました。 読んで下さった方、覚えておられますか?年間、15000件です(平成26年度)www.mhlw.go.jp 相談…

介護殺人

昨日また、介護殺人の記事がYOMIURI ONLINEに出ていました。 sp.yomiuri.co.jp4月2日、朝日新聞の一面で『入院病床 1割減らす計画』 という見出しの記事が掲載されたのは記憶に新しいと思います。 また、横には「在宅医療促す」とあります。また同時に 「介…

サンドスタチンの在宅での使い方

医療者ではない、一般の方には面白くない話が続いてしまい、 申し訳ありません。本日は末期がん患者さんの消化管閉塞で 症状緩和に用いられる「サンドスタチン」を在宅で使用する ためのコツをお話したいと思います。まず、サンドスタチンは皮下注用と書かれ…

サンドスタチンの今(2)

昨日の続きです。昨日は、がん終末期に起こる腸閉塞 に昔から使われてきたサンドスタチンの紹介。 しかし新たなエビデンスは効果に疑問を投げ掛ける 結果となりました…という内容でした。この内容について、『緩和ケア2015年9月号』で特集 されています。文…

サンドスタチンの今(1)

消化管内のがんや、がん性腹膜炎の患者さんで 腸の中の内容物(腸液・便・ガス)が詰まって しまう場合があります。これを腸閉塞と言います。 主な症状は嘔気/嘔吐、腹痛、腹部の膨満感です。 腸閉塞はがん以外でも起こりますが、がんが原因 で起こった腸閉…

アブストラルとイーフェン

本日はがんの疼痛緩和に用いる薬のお話です。 フェンタニルという麻薬のレスキュー(痛みが強い時に 追加で使う)として使用される薬剤になります。どちらも2013年に発売されましたが、それまではフェンタニル のパッチ(デュロテップ、フェントス)を使って…

お迎え

まずは2012年8月放送のクローズアップ現代のページを 御紹介します。www.nhk.or.jpなんだか私のブログ、クローズアップ現代の記事が多い ですが別にNHKの回し者ではありません^^; この番組は結構介護・看取りや死に関する特集が多いもので。さて、実は過…

遠方に住む家族

医療者にとって、最も苦手な存在のひとつが、患者さんの 体調が悪くなった時に初めて現れる、「遠方に住む家族」 ではないでしょうか。普通我々は患者さんの近くで実質 患者さんを支えている中心人物をキーパーソンと呼びます。 体調が悪い患者さんに代わり…

また夜がやって来る

昨日NHKのETV特集で、「こんなはずじゃなかった 在宅医療 ベッドからの問いかけ」という番組がやって いました。70年間在宅医療を行って来た早川 一光医師 が、自ら末期がんとなり訪問診療を受けている。ずっと 「畳の上での養生は天国」と説いて来た早川医…

迫りくる「息子介護」の時代

本日は同名の本の紹介です。 本の帯に「介護なんて俺には他人事」と書いてある、 その横に移った男性の表情がほんとに「他人事」 っぽい感じでちょっと笑えました。 迫りくる「息子介護」の時代 28人の現場から (光文社新書)作者: 平山亮,解説上野千鶴子出版…