Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

『がんになった緩和ケア医が語る「残り2年」の生き方、考え方』

この秋に出版された、緩和ケア医 関本 剛先生の著書です。
タイトル通り、肺がん脳転移、治癒は見込めず、
生存期間の中央値は2年と。
少し前に購入してしましたが、同じ世代の緩和ケア医、
開業医であり訪問診療も行っている先生ということもあり
なかなか本を開くのにエネルギーが必要でした。

本を開いてみると、考えていたよりも共通点が多く、
もちろん私などよりずっと優秀な先生なのですが、
医師になった歳も一年違い、がんを学びたく消化器内科
に入局したこと、クリスチャンであること、」
また開業も私と2年違いでした。
緩和ケア医を目指すきっかけが映画『病院で死ぬという
こと』であったと言いますが、私は映画こそ観ていない
ものの、この映画のもとになった書籍が切っ掛けでした。

咳が続き、撮ったCTに大きな腫瘍が映り、被検者名を
見直した、という記述、その後の家族との会話などが
とてもリアルに想像出来て、まるで自分の将来を体験
しているような、夢を見ているような気持ちでした。

ただ、そこから関本先生は立派でした。1000人を
看取った緩和ケア医として、患者さんに語って来た
こと、行って来たことを、自分に実行していかなければ
いけないと言います。決して虚勢ではなく、無理をする
ではなく冷静に病に向き合おうとされる姿勢には心を
動かされます。

そして、ACP、治療や告知、宗教、周囲の人との関わり、
代替治療、緩和ケアなどについて医師兼患者という特別
な立場からなされる語りは皆さんにもきっと届くものが
あると思います。

印象に残ったことは、余命2年の告知を受けた関本先生が
それでも好きなことだけをして生きようとはせず、
今までと同じようにクリニックに出勤し患者さんを診る、
という生き方を選ばれたこと。それはもちろん、経済的
な理由もありましたが、それだけが理由ではなかっと
思います。それは、私にもとても良く分かりました。
これまでと同じように仕事をしながら、家族と語り、
笑う時間が持てたら…と少なくとも今の私なら思うでしょう。
それは、幸運なことに誇りを持ち、やりたいと思える仕事
を持てたから考えられることなのかもしれませんし、
そこに自分の存在する意味を見出そうとしているのかも
しれません。

手元に置き、何度も読み返したい本です。