Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

介護崩壊の足音

新型コロナウイルス蔓延に伴い、本来必要な医療を提供
出来なくなる『医療崩壊』が懸念されていますが、介護
も結構厳しい状況になっています。

www3.nhk.or.jp

昨晩のNHKのWEB NEWSの記事ですが、緊急事態宣言の
出ている7都道府県で、なんと234の介護事業所が既に
休業中とのこと。多くはデイサービスですが、ショート
を受け入れている施設や介護サービス事業所を含む、と
記事にはあります。

もちろんこれらの事業所は休業要請の対象ではありません
が、「地域での感染の発生」、「マスクや消毒液など衛生
用品の不足」、「事業所での人手不足」等が理由として
挙げられていました。友人の勤めているデイサービスでは
職員が発熱したために休業の措置をとったとのこと(コロナ
ウイルスのPCR検査は出来ていない)。これらの施設では
基礎疾患のある高齢者ばかりですし、一度発生すると施設名
も公表になりますので風評もひどいことになりそうです。
どうしても濃厚接触を避けられませんので休業の判断も
やむを得ないようにも思います。

しかし多くの家族はこのデイサービス、ショートステイ
を当てにしており、なんとか生活を維持出来ている方も
多いので休業は大変厳しいと思います。また介護家族に
余裕があるお宅でも、デイで入浴、リハビリ、レクを
受けている利用者の方にとって大きな痛手です。
これら休業した事業所を利用していた方の家族が困り
ケアマネジャーに詰め寄ったり役所に苦情の申し立てを
したという話も聞きました。皆、相当困っているのだと
思います(苦情を受ける方も良い方法がないので気の毒
です)。

また、事業所側も心配です。友人の勤めるデイサービス
では、休業の際の職員の補償は「まだ決まっていない」
とのことでした。補償がなければ当然職員は生活が
出来ません。退職者も出ると思います。ただでさえ人数
の足りないギリギリの施設が多く、すぐに再開が難しい
かもしれません。とは言え、テレワークも出来ませんし、
働いていない職員に何か月も満額支給出来る事業所など
皆無でしょう。

今の状況を考えると、これから休業する事業所は増える
と思います。もしかしたら、そのまま閉鎖してしまう
事業所もあるのではないかと思っています。
当然今頑張ってオープンしているところに利用者さんは
集まりますが、これで実際に感染者が出た場合…地域で
支え合う余裕は残っているでしょうか。

飲食店、旅行代理店、風俗店などが大変な状況だと日々
報道されていることと比べると、介護業界の危機は何故か
あまりニュースになっていないと感じますが…介護の危機
も相当なものだということを皆さんに知って頂き、考えて
頂ければと思います。