Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

一般の方向け

『いのちの停車場』

5月から上映が始まった、『いのちの停車場』。 訪問診療を題材にした映画です。 残念ながら都内では「緊急事態宣言」延長の ため観ることが出来ません。 俳優陣がとても豪華で良さそうなのですが 他県に行く時間もなく、私は小説を読むこと にしました。いの…

患者さんの「死にたい」という言葉

今日は、こまち先生のブログを読んで考えたことを書きます。ameblo.jpまずブログがとても良いので是非お読みください。私は訪問診療を行っていますので、がんの終末期の患者さん や、介護を受けている高齢者の患者さんと出会い、話をする ことが多いのですが…

85歳、フルコース

患者さんの状態が急変し、心肺停止あるいはそれに近い 状態(バイタルサインが悪化していく状況)にある時、 昇圧剤を使用したり心肺蘇生を含めあらゆる医療行為を 行い回復を目指す時、医療者はよく「フルコース」と いう言い方をします。これに対して蘇生…

『早川一光の「こんなはずじゃなかった」』

往診医の大先輩である早川一光先生は、多発性骨髄腫の ため2018年6月にご自宅で亡くなりましたが、この本は 同タイトルで京都新聞に連載していた早川先生の連載を 娘さんがまとめ、介護の様子を加筆して出版された本になります。早川一光の「こんなはずじゃ…

「緩和ケア」の名称をもう一度考える

Twitterで話題になったので、もう一度「緩和ケア」という 言葉について思っていることをまとめてみたいと思います。何度もお話している通り、本来「緩和ケア」には「終末期」 という意味は全くありません。患者さんの困りごとを助ける、 様々な医療やケアの…

「何処で亡くなるか」より大事なこと

最終的に自宅で亡くなった患者さんの家族から、 「最後まで家にいさせてあげられて良かったです」 という言葉を頂くことが多いです。 「そうですね」と答えると同時に、在宅医として お役に立てたと嬉しく思う瞬間でもあります。しかし、自宅でなく病院で亡…

『男の孤独死』

本日は、長尾和宏先生の著書の紹介です。 お断りしておくと新刊ではありません。2017年のちょうど 今頃に出版されたものです。買っておいてすっかり読む のを忘れておりました。 男の孤独死作者:長尾 和宏発売日: 2017/12/21メディア: 単行本(ソフトカバー…

日本は異様に身体拘束が多い?

先日、石川県の男性が身体拘束中に肺塞栓を起こし、その後 死亡した件の判決が名古屋高裁でありました。 この件について私は詳しく知りませんのでコメントが難しい のですが、亡くなった患者さんは拘束に至る前に看護師への 暴力行為があり、「人を割けば」…

『がんになった緩和ケア医が語る「残り2年」の生き方、考え方』

この秋に出版された、緩和ケア医 関本 剛先生の著書です。 タイトル通り、肺がん脳転移、治癒は見込めず、 生存期間の中央値は2年と。 少し前に購入してしましたが、同じ世代の緩和ケア医、 開業医であり訪問診療も行っている先生ということもあり なかなか…

安心して死にたいと言える場所

だから、もう眠らせてほしい 安楽死と緩和ケアを巡る、私たちの物語作者:智弘, 西発売日: 2020/07/14メディア: 単行本『だから、もう眠らせてほしい』 以前私が紹介した西 智弘先生のこの本。 安楽死について緩和ケア医としての考えや葛藤をまとめた 素晴ら…

何が「本人の意思」なのか

終末期の患者さんに、「どのような治療を受けたいか」、 あるいは「受けたくないか」を決めて頂くことは、しば しば難しくなります。意識がはっきりしていない事も 多くありますし、記憶や判断力が落ちた状態での「意思」 を、御本人の本当の意思として捉え…

記憶より感情を

認知症の患者さんのご家族が患者さん本人に対して、 出来事や約束をどうにか思い出してもらおうと画策する ことがあります。これは当然の心理ですが、相手が認知症 の患者さんである以上、この試みはうまくいきません。 よく見掛けるのは、約束事を書いて壁…

『安楽死に至るまで』

この本は、今私がTwitterでフォローさせて頂いている、 くらんけさんが書かれた本です。 くらんけさんは、スイスで安楽死(正確には介助自殺) の権利を得ている方で、この本は「スイスで安楽死の 権利を得るための手順」が書かれています。 安楽死反対の方…

私が行くまでもたせて下さい

9月6日にTwitterで私がこのような書き込みをしたところ、 人生の終末期に「心肺蘇生」をして意識が戻った人を 何人かみましたが、肋骨がボキボキになっている痛みは 相当なもののようです。全身状態が非常に悪いので、 食べたり普通に話したり笑ったりはとて…

訪問をお断りすること

今回は日記のような内容になります。開業して、7月1日で7年目を迎えます。 訪問診療の殆どは紹介で成り立っています。 病院の連携室、訪問看護師さん、ケアマネジャーさん が、「この患者さんは虎太郎先生が合っているのでは」 と考えて下さりご紹介を頂くこ…

「在宅ひとり死」に必要なこと

Yahooに、上野千鶴子さんの「在宅ひとり死」についての 記事がありました。news.yahoo.co.jpよく、おひとり様が在宅死を迎えることが出来るか、と いうことが話題になります。結論を言えば可能ですが いくつか条件があります。まず、ご本人の強い決意と 意思…

危険を事前に伝える難しさ

眠剤に関係すると思われる転倒が、時々起こります。 そもそもあまり処方したい薬ではないし、 最大限注意はしますが、それでも起こります。 特に、がんの終末期では皆さんぎりぎりの状態で トイレまで歩かれるので、転倒の確率は飛躍的に 上がってしまいます…

認知症介護を取り巻く感情

認知症のケアで最もやってはいけないことのひとつは、 御本人の記憶違いや出来なかったことに対して厳しく 注意したり叱責することだと思います。 もちろん一生懸命介護をしている家族を責める意図は ありませんし、仕方のないこともあると思います。 ただ、…

BZ系薬中止の議論の前に

2月2日の、AERAの記事です。dot.asahi.com高齢者への睡眠薬、安定剤の処方が危険なことは正しいです。 転倒⇒大事な骨を折ってしまうことで取り返しのつかない ことになるかもしれません。きちんと覚醒していない状態で 食事を摂れば誤嚥のリスクも高くなるで…

救急搬送は訪問診療の「失敗」か

今日は、こんなタイトルにしてみましたが、訪問診療医の 多くは特に看取りを意識して訪問している患者さんの場合、 患者さんが救急搬送になると自分の訪問が「失敗してしまった」 と感じる医師が、あるいは看護師が、割合に多くいるようです。 講演や勉強会…

酸素投与は緩和ケアにつながるか

medical.nikkeibp.co.jp本日17日の、日経メディカルの記事です。何か新しい知見でも あるのかと期待してしまいましたが、特に目新しい内容では ありませんでした。上記は会員登録しないと見れませんし、 私の以前書いた記事が我ながらよくまとまっていますの…

言えない医者、聞けない患者

Aさんは、あるかなり進行したがんの患者さんです。 一時期抗癌剤が効いて安定した時間を過ごせていましたが 治療に効果がなくなり、そんな中がんが原因と考えられる 腸閉塞で入院となりました。運よくイレウス管が抜けて 退院出来ましたが、腹水は溜まり食…

施設系訪問診療の難しさ

昨日、「施設系訪問診療のピットフォール」という勉強会 に参加させて頂きました。その中でとても共感したことは、 施設の「担当者」、これは主に看護師さんですが時に 施設長さん等も含みますが、要するに「本人」と「家族」 以外の担当者が介在する難しさ…

ACPのポスターに思うこと

厚生省の発表した、ACP普及のためのポスターに批判が 集まり、自治体へのポスターの発想やPR動画の公開を 中止にしたという記事が出ていました。www.asahi.comこのポスターは厚生省が吉本興行へ作成を依頼していた ものらしく、対象は「ACPは他人事」と思っ…

レスキュー依存?

がんの突発痛に使用するレスキュー製剤。オプソ、 オキノーム、ナルラピド等ありますが、レスキューの 使用が1日3回を越えるような場合にはベースライン のオピオイド増量を検討する(あるいは異なる 痛み止めを追加する等)ことが多いと思います。ただ、時…

「レスキュー」の適正使用について

ある患者さんの、レスキューで使うオキノームの 使用状況が不適切だったので確認したところ、 誰がどこで説明したのか分からないのですが、 御家族は5分経ったら再度使用して良い、と理解 されていたことが分かりました。オキノームはオピオイドを使用してい…

居場所

CDブック 発達障害のピアニストからの手紙 どうして、まわりとうまくいかないの?作者: 野田あすか,野田福徳・恭子出版社/メーカー: アスコム発売日: 2015/05/22メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る私は普段殆どテレビを観ないのです…

皮下輸液

在宅でお看取りとなる、多くの方に私はこの皮下輸液という 方法をとります。人は最期のときに近付くと、次第に柔らかい 食べ物しか受け付けなくなり、やがて水分を摂ることも難しく まります。水分なしで人間が生きることが出来るのは多くの 場合数日から長…

平穏死は良いが誰にでもベストだと言えるだろうか

Dr.和こと長尾和宏先生が、また鎮静について書いておられました。blog.drnagao.com面識はないですが非常に熱心な良い先生だと思います。 文才もおありなので、在宅医療や平穏死について数多くの本 を書かれ、啓蒙活動にも力を入れておられます。 賛同出来る…

医療における「7つの習慣」

皆さんは、「7つの習慣」を御存知ですか?完訳 7つの習慣 人格主義の回復作者: スティーブン・R・コヴィー,フランクリン・コヴィー・ジャパン出版社/メーカー: キングベアー出版発売日: 2013/08/30メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (9件) を見る…