Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

一般の方向け

がんと闘う

『闘病』という言葉があります。 がんの場合狭義には手術・放射線療法・化学療法 (いわゆる三大治療)などがんの治癒や延命効果を 期待した積極的な治療を受けることを指す場合もあり ますが、もっと広い概念で『病と対峙し生きる』 ことを指すこともあるか…

身体拘束は減らせるか

高齢者への身体拘束とは、施設や病院などで、認知症などの 高齢者を、「治療のじゃまになる行動がある」、あるいは 「事故の危険性がある」という理由で、ひもや抑制帯、ミトン などの道具を使用して、ベッドや車椅子に縛ったりすること をいいます。部屋に…

「なんとめでたいご臨終」で私が感じた違和感

なんとめでたいご臨終作者: 小笠原文雄出版社/メーカー: 小学館発売日: 2017/06/21メディア: 単行本この商品を含むブログを見る昨日、この本の紹介をさせて頂きましたが、本日は その続きです。書籍の主旨には賛同しますし、決して ケチを付ける目的ではあり…

なんとめでたいご臨終

なんとめでたいご臨終作者: 小笠原文雄出版社/メーカー: 小学館発売日: 2017/06/21メディア: 単行本この商品を含むブログを見る在宅医、小笠原文雄先生の著書。 すごい売れ行きでAmazonでは早々に品切れになって いました。もうすぐ重版が出るようですが、私…

がんの告知と自殺率

がん全体の5年生存率は上がっており、50%になると言われ ますが、依然がんは死の病のイメージが強く診断後自殺して しまう方が多いと問題視されています。まず、私の過去の記事を御紹介します。blog.goo.ne.jpこちらで私はニューイングランドジャーナルオブ…

末期がん患者さんの吐下血

報告によりまちまちではありますが、末期がんの患者さんの 1~5%に顕著な吐下血が起こると言われています。特に吐血 は御本人にとっても死を強く連想する恐ろしい出来事だと 思います。この場合医療者は、家族はどのような対処をすべき でしょうか。まず、…

目的と手段を入れ替えてはいけない

Twitterで見た、ある薬剤師さんのツイートを御紹介します。 在宅医療の主語は誰か? 他ならぬ患者さんである医療従事者が訪問するから在宅医療なのではなく、 患者さんが自宅で暮らしながら受ける医療が在宅医療なんだと思うだからこそ、訪問は手段なんだと…

「身の置き所のなさ」

がんの終末期に、表現のしようもない辛さを経験する 患者さんがいらっしゃいます。このような場合、表題の 「身の置き所がない」と表現される場合があり、 また逆にこちらから「身の置き所がない感じですか?」 と問い、肯定される場合もあります。しかし、…

認知症~安全よりも大切なもの

2015年に、関西のカジノやパチンコ、マージャンなど 娯楽設備を備えた介護施設について、行政はパチンコ やカジノを主なリハビリ手段として使用すること、施設内 で流通する疑似通貨の使用を禁止する条例を制定しました。 理由は、高齢者がギャンブル依存症…

認知症患者さんと三八式歩兵銃

数日前、Twitterでこんな写真入りのツイートを見ました。介護施設で、認知症の患者さんに旧日本軍が使用していた 三八式歩兵銃のモデルガンを渡したところ、今まで座って ばかりだった人が立ち上がって歩き出した、という記事 でした。昔の戦争の記憶が脳を…

がん医療の狭間

東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンターの大津秀一 先生のブログから。ameblo.jp抗がん剤治療の継続が困難になると、これまでの担当医の 外来に通院出来なくなる事がしばしばあります。がんの 治療医は多くの治療中の患者さんを担当しており、その後 …

認知症~家族介護の難しさ

私は今グループホームや老人ホームへの訪問診療は 行っておらず、訪問しているのは全て患者さんの自宅 です。独居の方も多いですが、大半は御家族が同居し 介護されています。つくづく思うのは家族介護は家族ならではの難しさを 持っており、しばしば非常に…

『100点中10点』に思う

6月24日のm3(エムスリー)に、めぐみ在宅クリニック院長、 小澤竹俊先生のインタビューが載っていました。ホスピスを 経験し、現在は訪問診療医として多くの患者さんと関わり、 たくさんの方を看取って来られた先生です。診療体制に ついてのお話のあと、こ…

死に目に会う

小林 麻央さんの旅立ちがニュースになっていました。 私は芸能界に疎いのですが御夫婦の姿をネットで度々 拝見し、子を持つ親としても穏やかで優しい時間が 過ごせることを願わずにはいられませんでした。 海老蔵さんは麻央さんが亡くなる瞬間に 立ち会えた…

点滴に代わるもの

初めにお断りしますが、本日のエントリーはかなり 主観が入ります。終末期の医療に対する、私の個人的 な考えと御承知の上、お読み頂ければと思っています。ここ数日、末期がんの患者さんの看取り前の体調変化と 輸液についてお話をして来ました。正確な予測…

終末期に点滴をしないで苦しくないのか

少し前の記事ですが、yomiDr.にこんな記事がありました。yomidr.yomiuri.co.jpタイトルを読んで、多くの医療者はキョトンとするかも しれません。点滴をしないと苦しむ?…誰が?家族…?と いうのが私の最初の反応でした。しかし、医療従事者ではない、看取っ…

がん終末期の輸液について

昨日は、残された時間のがん患者さんに現れる身体的 な変化について簡単にお話しました。患者さんの食事 や移動能力、眠る時間等がどれくらいの速度で変化して いるか。また時にはがんがCT等でどれくらいの速さで 大きくなっているか、採血の結果はどうか…

がん終末期の症状について

がんも種類によって経過が違いますが、多くの患者さんで 当てはまることは、最後の2~3か月からの病状の変化は とても速いということです。分かりやすい変化としては、・食事が極端に少なくなる。 ・移動が大変になる。 ・眠る時間が増える。等の症状の変化…

終末期の在宅酸素使用は保険適応外

先週末、私がTwitterで取り上げた話題です。 多くの方に知って頂いた方が良い内容なのでブログでも お話させて頂こうと思います。まず、6月15日の記事にも書きましたが、終末期医療は 患者さんの苦痛を取り除くために行う医療には保険適応 外のものが多く、…

在宅緩和医療、保険適応外の壁

2017年6月7日の、薬事日報の記事です。 とても大きな問題だと思うので紹介させて頂きます。www.qlifepro.com緩和ケア領域の薬剤は保険適応外処方が多く、病院から 在宅へのスムーズな以降に支障を来たす例があるという内容。 長野県の医師を対象としたアンケ…

BPSDに対する抗精神病薬の使用と中止(3)

今回は、BPSDに使用した抗精神病薬の減量と中止について の話をしたいと思います。こちらのメタアナリシスを参考 にさせて頂きます。www.ncbi.nlm.nih.gov上記はシステマティックレビューを含む9つの研究を分析 しています。どれもRCTであり、プラセボとの比…

BPSDに対する抗精神病薬の使用と中止(2)

本日は抗精神病薬の中止に関する話題にする予定でしたが、 その前に薬の効果判定についてもお話したいと思います。 治療の目的を考えると介護者の主観で「効いた」とか 「効かなかった」でも良いと思うのですが、ある薬剤が 患者さんの症状のどの部分に効い…

BPSDに対する抗精神病薬の使用と中止(1)

認知症患者さんの暴言・暴力・介護抵抗・徘徊等周辺症状 と言いますが、周辺症状をBehavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの頭文字をとってBPSDと呼びます。 介護する側にとってしばしば大きな悩みをもたらし、 介護の継続が困難となる主たる原…

本当は月1回でも訪問診療が可能な件

昨日、訪問診療についての基本的な説明をさせて頂き ました。その中で、訪問診療は原則『月2回以上』と 書きましたが、実は平成28年4月より月1回の訪問診療 が可能になっています。月1回でも、24時間365日の、 従来の訪問診療のサービスが利用出来るというこ…

訪問診療の基本+α

今日は訪問診療を考えている、一般の方向けの記事です。今のカタチの訪問診療の仕組みが出来上がったのは 2006年4月からです。訪問診療は文字通り、通院が 困難な患者さんに対し、医師が患者さん宅を訪問し 診察することを指しますが、保険が使える(つまり …

医療者目線の「死の受容」

昨日は、近年ギア・チェンジという言葉が使われなくなった という話と、しかし実際は殆どの患者さんがギア・チェンジ を経験しているという事実があるというお話をさせて頂き ました。本日はギア・チェンジに関する話題で、 緩和ケア医として有名な有賀先生…

がん治療の「ギア・チェンジ」は過去の言葉か

我が国に「Palliative Care」の概念が入って来た時に、 「ホスピス」という「建物」や、ホスピスに 入院する時期である「終末期」という点が強調され 過ぎてしまいました。そこで、「Palliative Care」 は何もホスピスという場に限ったことではない、 また終…

医療と祈り

宗教と医療は一見、相容れないものという印象が あります。医療は科学であり、根拠・裏付けが はっきりしいているのに対して、宗教の本質は 究極的には「信じる」ことであって、根拠が明確 なものを信用することは「信仰」とは言いません。また、「エホバの…

終末期のリハビリテーション

最近愛読している、終末期・緩和ケア専門のリハビリを 行う理学療法士・藤田さんのブログの記事です。kanwakea-fujita.hatenablog.com毎回興味深いテーマをするどい視点で書いておられる のですが、読者登録が少なくもっと多くの方に読んで 頂ければ良いのに…

「誤診だらけの認知症」

誤診だらけの認知症作者: 座間清出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2016/11/24メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る御自身の親族が誤診から体調を崩された事が 切っ掛けで認知症診療に携わるようになった 座間清先生が、現在の認知症に…

高齢者の認知症とうつ病の鑑別

昨日、高齢者の認知症とうつ病の鑑別が困難な場合 がある事に触れましたので、その見分け方について お話をさせて頂きます。医療者には当たり前過ぎる 内容かもしれません。まず、区別と言っても認知症の患者さんにうつ病が 発症する場合もある訳ですから、…

「老人性うつ」

老人性うつ (PHP新書)作者: 和田秀樹出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2012/03/15メディア: 新書 クリック: 1回この商品を含むブログを見る老年精神科医、和田秀樹先生の著書。 なんと言ったら良いのだろう…。 一言で言うと、この先生は大丈夫だろうか、 …

「うちのセンセイ」

ブログを始めて2ヵ月が経ちました。 なかなか長続きせず、油断すると更新しなくなって しまうタチなので、今回は敢えてはてなProという 有料のブログに挑戦しています。 さすがにこの週末から数日間は多忙で書けなかった ものの、有料がプレッシャーになり更…

緩和ケア医とDr.キリコ

手塚治虫先生の代表作『ブラックジャク』にDr.キリコ という医師が登場するのですが、御存知でしょうか? 助からない患者さんを「法に触れない方法(!)で」 安楽死に導く、という仕事をしています。ブラック ジャックでは準レギュラー的存在で、全部で9回…

がん代替療法、医師の態度

本日は最近読んだ朱郷 慶彦さんのブログを紹介します。 朱郷さんは小説や脚本を手掛けるライターですが、 2015年11月に末期がんの宣告を受けています。 ブログの記事は、 朱郷さんが代替医療の話に触れた 途端、読者からの批判が相次いだ、という内容です。g…

胃瘻が減って、経鼻が増えた!?

文春オンラインより。bunshun.jp 2010年、自然に任せて穏やかな最期を迎える「平穏死」 を提言してから6年が経ちました。その間、終末期医療の 現場は大きく変わりました。中でも特筆すべきは、胃ろう で栄養補給をしている認知症高齢者が、56万人から20万人…

「臨床宗教師」

我が国では、医療と宗教は相容れない存在である かのように扱われています。 山崎章郎さんが東北大学医学部で講義されたことが あって、それを聞きに行った時のことだ。宗教性の 重要性を話し始めた途端、学生たちはうすら笑いを 浮かべていた。なんとも異様…

川崎市立井田病院の取り組み

昨日もお書きした通り、がんの治療中の患者さんも 痛みや嘔気、四肢の痺れや不安、不眠等様々な症状 に悩まされている方がおられます。しかし治療中の 患者さんの多くは満足な症状緩和治療を受けていません。 一方緩和ケア外来は、「緩和ケア病棟」に登録す…

「早期からの緩和ケア」は実践出来るのか?

がんの終末期の患者さんの苦痛を軽減する目的で行われて 来た「ターミナルケア」は、より早期の患者さんに対して も必要なケアであるという理解が深まり、「緩和ケア」と 呼び名が変わりました。しかし多くの患者さんは、いえ、 医療者ですら「緩和ケア」=…

「治さなくてよい認知症」

本日は書籍の紹介です。治さなくてよい認知症作者: 上田諭出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 2014/04/28メディア: 単行本この商品を含むブログを見る老年期精神医学の専門家である著者が、今の認知症医療 の問題点、疑問点を取り上げた一般向けに書かれた…

胃瘻が「卒業」出来る患者さんの割合は?

胃瘻は口からモノを摂れなくなった患者さんの胃壁に 穴を開け、直接胃に栄養剤や水、薬を注入する方法です。栄養剤で栄養状態が改善すれば、治療中の病気が良く なればまた嚥下機能も改善し、食事が摂れるように なるのではないか?それはその通りなのですが…

モルヒネを13年間飲み続けた患者さん

またもやTwitterからの話題になりますが、こんなニュース を見掛けました。毎日新聞の医療プレミアから、 『緩和ケアの誤解 医療用麻薬は怖くない!』。少し前の 記事でした。https://mainichi.jp/premier/health/articles/20151202/med/00m/010/016000c私が…

医師ならばその治療を受けるのか

救急ドラマの患者さんは殆ど元気になりますが、 現実とのギャップがあり過ぎです。 心肺蘇生を受けた患者さんで一ヶ月後に生きていたのは8%、 社会復帰したのは3%。これでも多いと感じるのが医療者の 感覚です。メディアで奇跡ばかりをとりあげれば、それは …

胃瘻を作らないことは「弱者の切り捨て」か

昨日Twitterでこんな記事を見掛けました。headlines.yahoo.co.jp京都市で、市民が自分の終末期に備え、胃瘻や 人工呼吸器等の治療に対して、また療養の場所 などを予め書いておく事の出来る「事前指示書」 が配布され、物議を醸しているというニュース です…

「人は死ぬために生きる」のか

今はなくなってしまいましたが、以前『桜町病院 聖ヨハネホスピス』のホームページにアクセスすると、 「ホスピスはあなたらしく生きる場所です」という メッセージが流れていました。ホスピスはしばしば「死ぬ場所」と考えられていますが 本当は「苦痛を和…

医療リテラシー

リテラシー(literacy)という言葉を頻繁に目にするように なりました。これを読んでおられる多くの方々に今更説明 は不要だと思いますが、一言で言えば情報を理解・解釈し、 真偽や有益性を吟味し、人生に役立てていく能力を言います。 特にメディア、経済…

医師に出来てAIに決して出来ないこと

昨年から今年にかけて、AI(人工知能)に関する記事、特に 医療においても積極的にAIを活用していこうとする、あるいは 既にこんなことが研究されているという記事を目にするように なりました。AIの性能はまだまだ発展途上もいいところですが、たとえば IBM…

最高の5分を演じる患者さん

百聞は一見にしかず、という言葉がありますが、 逆に自分のみているものだけが正しいと思い込むと 色々なものを見落とすことになる場合があります。たとえば入院している患者さんの場合、最も近くに いるのは看護師さんです。多くの場合患者さんは 体調の変…

認知症患者さんの易怒について

昨日は認知症の患者さんの暴言・暴力の話をしました。 認知症の患者さんと関わったことがある方であれば、 「怒りっぽい方が多いなぁ」と感じられた事がある かもしれません。約半数の認知症の患者さんにこの易怒 がみられると言いますが、私はこの「易怒」…

98%が「暴言や暴力受けている」

昨日の記事の中に、介護者である家族(親族・同居人) が要介護者である認知症の方、高齢者を虐待してしまう ケースが年間にどれだけあったかをお書きしました。 読んで下さった方、覚えておられますか?年間、15000件です(平成26年度)www.mhlw.go.jp 相談…