Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

「レスキュー」の適正使用について

ある患者さんの、レスキューで使うオキノームの
使用状況が不適切だったので確認したところ、
誰がどこで説明したのか分からないのですが、
御家族は5分経ったら再度使用して良い、と理解
されていたことが分かりました。

オキノームはオピオイドを使用していても起こる
突発痛の際に使用します。1回量はベースのオキシ
コンチンの1/4~1/8とされており、通常は
「1時間経過して痛みが強ければ再度内服して良い」
と説明を受けているはずです。
オキノームは15分程度からようやく鎮痛効果が
発揮され、1~2時間で効果がピークになります。
5分はもちろん、15分でも判断が早過ぎることが
分かると思います

「効果が最大」のところで、多くの副作用も最大
になります。具体的には、嘔気、眠気とせん妄、
呼吸抑制等です。最大の副作用の状態を確認せずに
次のレスキューを使用するということは、副作用の
リスクも高めてしまいます
。5分空けて再度内服し、
効かないから更に5分後…と誤った使用を繰り返せば
それだけ危険が増します。

また、そこまで強い痛みであれば、いつもとは
違う、別の原因を考えなければいけないと思い
ます。オキノームが効きにくい可能性もあり、
別の種類の痛み止めを検討する必要があるかも
しれません。

医療用麻薬は確かに極めて安全な薬ではありますが
それは「正しい使い方をすれば」という前提条件
あります。医師はもちろんですが、看護師、そして
家族や出来れば御本人も正しい使い方や副作用に
ついてきちんと理解していることが望ましいです。
医療者で「習慣的にこう使っている」という方も、
誰かの「自己流」で実はオーソドックスな使い方では
ない場合がありますので御自分で必ずガイドライン
くらいは読むべきだと思います。

確かに臨床の場面においては、難しい場合があります。
オキノームの例でいけば痛みが強く「1時間待つ」こと
が困難なケースです。「時間が経てばもっと効いて
くる」と分かっていても、我慢が難しかったり、
傍にいる家族や、痛みが強くて看護師さんが患者さん
から離れられない(他の患者さんのケアが出来ない)
場合等です。

なので実際には臨機応変に対応していくしかないです。
患者さんの全身状態(予後、看取り)や考え方、病院か
在宅か。色々なケースがあり画一的に何が正解とは
言えません。しかし、だからこそ、しっかりした薬の特性
を知っておくべき
です。冒頭のオキノームは呼吸抑制が
出るだいぶ前に強い眠気が出るのが普通なので、過剰に
飲み過ぎるケースは確かに少ないです。しかし経口摂取
以外の方法や、フェンタニルのレスキュー、イーフェンや
アブストラルは突然に呼吸抑制をきたす場合がありますので
より慎重な使用が求められます。