Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

レスキュー依存?

がんの突発痛に使用するレスキュー製剤。オプソ、
オキノーム、ナルラピド等ありますが、レスキューの
使用が1日3回を越えるような場合にはベースライン
オピオイド増量を検討する(あるいは異なる
痛み止めを追加する等)ことが多いと思います。

ただ、時々レスキューがやたらと多い患者さんに
出会います。1日6回とか、8回とか。効果を確認すると、
そういった方は殆ど「痛くなりそうだから」で
内服していることが分かります。要は、何割かは
疼痛への不安」がレスキューの使用に繋がっている
のです。オピオイドは感情面にも作用し不安が軽減
したり、「こころ」が楽になる面もあります。
この理由でレスキューを使っている場合には注意が
必要で、最近言われる「ケミカルコーピング」
なっていないか医療者は考察しなければなりません。

痛みではない理由でレスキューを使用するのは確かに
不適切です。しかし、実際には痛みがゼロであること
は少なく、「痛みが強くなりそう」という「予期」
も当たることも少なくない
ため、必ずしも不適切とは
言い切れませんし、その後予期通り実際に疼痛が増せば
場合によっては痛みへの恐怖を増す結果になります。

対応策として万能なものはありませんが、大切なこと
はまず、より良いコントロールを目指し、患者さんの
不安を和らげること
だと思います。コントロールが良好
になれば自然とレスキューの頻度は減るので一番理想的
です。逆にオピオイドをしっかり増やしてもレスキューが
減らない時は上記「ケミカルコーピング」の」可能性が
高まります

また、抗不安薬の併用がうまくいく場合があります。
痛みの性質によっては疼痛への効果も期待出来る薬剤、
SNRIリボトリール等は使用しやすいかもしれません。
不安を軽減することも緩和ケアです。

オピオイドの副作用や依存のリスクがあること等を
患者さんに伝えることもひとつの方法だと思います。
確かに痛みが少ないのに血中のオピオイドが上下する
状況が続くのはあまり好ましいことではありません。
実際、それで患者さんが理解され使用が適正化される
場合もあります。しかしそれが後々オピオイドそのもの
レスキューに対する罪悪感、恐怖心になってしまう
可能性
があります。また、患者さんが我慢する結果
になってしまうのも好ましくありません

ですので、基本的な考え方は疼痛コントロール
見直す、痛みの性質やレスキューの効果等をもう一度
アセスメントし直すことを優先的に考えた方が良いと
思います。