Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

看取りにルーチンに酸素が必要なのか

久し振りの更新です。昨年Noteを始めたため、
ブログの更新を中止しようと思ったのですが
内容によってはこちらの方が読んでもらいやすい
かなと思い、こちらで更新することにしました。

表題の件ですが、最近ある看取りを積極的に行う
施設で患者さんを担当することになった時の話です。
患者さんの死期が近づき、SpO2が測定不能
たまに拾える数字が80%台になった時のこと。

「先生、そろそろ酸素入れといてもらえませんか」
と看護師さんに言われ、ちょっと驚きました。
在宅でたくさんの看取りをしている私ですが、
SpO2が低いというだけで酸素を使うという発想が
私にはなかったので。

「患者さん、全然苦しそうじゃないですよね」
と私は答えましたが、
「そんなこと分からないでしょ」
とでも言いたいような目つき…。
でも患者さんの呼吸とか表情とかで
だいたい分かるじゃないですか。

確かに、がんの終末期は亡くなる月に限り
保険で在宅酸素の利用が認められる
ようにはなりました。

ただ、人が亡くなる過程で必ずSpO2は下がります。
低酸素のこともあるでしょうが、
末梢の循環不全であることも多いはずです。

意識レベルも低下していきます、
その患者さんも既に吸引刺激などに
にかろうじて反応をするくらい。
看取りに際し、全例で在宅酸素というのは
私はどうしても納得がいかないのです。

でも、その施設ではどうやらほぼ全例に
在宅酸素を“入れておく”のが常識のようです。
なので、どの看護師さんもそれが当然と
思っているようでした。

どこの医療機関でしょうね、
まさか全例「高度慢性呼吸不全」に
しているわけではないですよね…。

酸素を入れて、たとえ数字が上がったとしても
結局いつか下がるまでの
延命になっているという側面もあると思うんです。
患者さんが苦しんでいなければ
別に延命が悪いわけではないですけれど。

それに、たぶん患者さんは楽になるより
煩わしいのではないかとも思うんです。
マスクもカヌラも
患者さん一生懸命どけようとする人が
多いではないですか。

ちなみに、これはこの施設ではないですが
「口呼吸だからマスクにしました!」
ってのもよく見ますね…。
酸素流量低いと死腔が増えるから
かえって呼吸に負担かかりますよね。
ご丁寧に外せないようにテープで固定したり
していることもありますね。

酸素も本当に患者さんが苦しんでいるなら
保険適応云々は抜きにして
導入することはもちろん私もありますよ。

全身状態が悪化し意識レベルが下がる前に
低酸素になると苦しいことがあります。
そういう時は持ち出しでも入れるべきだと
私も思います。

言いたいのは、SpO2が下がったから
自動的に全例酸素ってどうなのよ、
プロなんだから、そういうアセスメント
大事にして欲しいなぁ、ということでした。