Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

治療の選択における医師の影響力

先日Twitterで胃瘻に関する話題を
書きました。

患者さんも奥さんも
延命はしないと言っていましたが
いざ入院し食事が出来なく
なった時、ご家族に迷いが生じ、
結局胃瘻をすることになりました。

胃瘻について本来はもっと詳しく
話しておきべきでしたが
「しない」と言われているのに
胃瘻の具体的なメリットや
デメリットについて話すのも
どうかと思い、
それ以上話が来なかったのです。

ですので、「これからも奥様と
話し合いを続けていく」と
ツイートしました。
すると、私が無理にやめさせると
思ったのでしょうか。

「医師に反対されたら
それを押し切って治療の判断を
するのは難しいのが
分からないのか」

という内容の抗議?が
届きました。

私はブログやTwitterでも
胃瘻についての考えを
何度も話していますが、
知識もないまま慌てて
治療を選択した結果、
以降何年もつらい想いをする
ということは出来れば
避けたいと思っているのです。

逆に経験上何度も話し合い、
納得と覚悟のもと胃瘻を選ぶ
ご家族は、
その後も後悔も少ないように
思っています。

ただ、医師が無理に治療を
やめさせていると考える人がいる
ところをみると、
実際にそのようなケースが
あるのでしょう。
または、いくら私達がなるべく
平等な立場で話をしたとしても
説得されているように感じる
ご家族もいるに違いありません。

ただ、逆もあります。
家族は「延命はかわいそう」
と思っていたとしても、
担当医から
「餓死させるのか」
「見殺しにするのか」
などと言われてしまうケースです。
やはりそう言われると
拒否が難しくなってしまう。

多くの家族は迷いながら判断し、
「生きていて欲しい」、
「苦しめたくない」
と相反するふたつの気持ちを
同時に持っていると思います。
ただ、どちらかと言うと
家族の命を終わらせてしまう
判断はより難しいでしょう。

こんな時に、家族ではない者が
強い信念を持ってどちらかを
勧めた場合、それに逆らうのは
確かに難しいです。

しかし、延命治療の場合に
限ったことではありませんが、
医師の信念やポリシーというものは
必ずありますので、
全く平等な見地で話しをすることは
なかなか難しい。

私は緩和ケア医ですので
どうしても長く苦しめるのは気の毒
と思ってしまいます。

かと言って、
「どっちにしますか?」
だけではあまりに無責任です。

やはりベターな方法は
突然、選択を迫られる前に
胃瘻や心肺蘇生、人工呼吸器
といった医療に
知識を持っておくこと。
知識なく選択することは難しい
に決まっています。

最近は胃瘻を介護していた方も
かなり多くなりましたので
意見が聞ければ
胃瘻を介護したことがない医師
よりも、参考になると思います。

特にメリット、デメリットを
紙に書きだして考えると良いです。
と言うより、必須です。

いずれにしても、
医師がどちらかを強く勧めてくる
ことも想定し、決定しておくと
良いです。

患者さんを介護するのは、
主治医ではありません。
責任もとってくれません。
きちんと気持ちを伝えて
良いのです。

どちらにしても苦しい選択で
あることが予想されます。
正解はありませんが
進学、就職、結婚と同じく
焦って揺れ動く気持ちで
決めるよりも、
知識を得て
考えて選択した方が良いのは
言うまでもありません。