Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

心肺停止で救急車を呼び警察沙汰になった話

訪問診療で看取りを前提にしている場合、もし患者さんが 呼吸をしていないと分かった場合は訪問医(私)にまず 連絡をするように、と伝えています。搬送になると運ばれた先 の病院では診断書が書けないという理由で、警察が呼ばれる のが普通です。呼ばれた…

自費診療は悪か?

皆さんは自費診療のクリニックを受診されたことは ありますか?我が国は皆保険という制度をとっており、 保険診療によって自己負担額は1~3割となっており、 残りは公費で賄われています。医療はサービス業と 言われることがあります。確かにサービス業的な…

地上の星

中島みゆきさんの地上の星という歌があります。www.youtube.comNHK総合テレビ「プロジェクトX 挑戦者たち」の 主題歌ということで、wikipediaによるとみゆきさん のシングルの中でも1994年発売の「空と君とのあいだに /ファイト」に次ぐ2番目の売れ行きであ…

老いと「受容」

私は患者さんが病気や死を受け入れるか、それ自体はどちら でも良いと考えています。投げやりな意味ではなく、それは 患者さんの価値観や生き方によるからです。過去のエントリーでも、 kotaro-kanwa.hateblo.jpkotaro-kanwa.hateblo.jpこの辺りで書かせて頂…

分子栄養学、その後

昨年11月のブログで、私の分子栄養学、 『オーソモレキュラー』などと呼ばれる分野について 思うところを書かせて頂きました。 何、それ?という方はお手数ですがこの記事をお読みください。kotaro-kanwa.hateblo.jp新しい栄養学に対して期待をすると共に、 …

男の介護と虐待

過去にこちらのブログで、『迫りくる「息子介護」の時代』 という本の紹介をさせて頂いたことがあります。迫りくる「息子介護」の時代 28人の現場から (光文社新書)作者: 平山亮,解説上野千鶴子出版社/メーカー: 光文社発売日: 2014/02/18メディア: 新書この…

看取りを支える

長尾和宏先生のブログ記事を紹介させて頂きます。blog.drnagao.comとても大切な内容を取り上げて下さったと思います。 介護施設における看取りの現場で、「体温が上がりました」 「血圧が下がりました」、「酸素の数字が下がりました」と 時間を問わず連絡し…

お医者様と患者様

こんな記事を読んでの感想です。http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/column/kumagai/201807/556919.html登録していないと読めない記事かもしれません。 主治医を「お医者様」と呼び、薬を減らして欲しいと思いながら 言い出せない80代の男性の患…

「異常者」と殺意を生む職場

大口病院の事件は衝撃的な内容でした。 「信じられない」「許せない」という多くの声の中で、 一部の医療者・介護者はTwitter等で高齢者医療・延命治療 のあり方、医療・介護者の置かれている過酷な環境などを 発信していました。しかし、これに対しては、「…

介護における「ボディタッチ」の是非

昨日Twitterで、「介護におけるボディタッチは風俗法に 抵触するのではないか」という意見をお聞きしました。 個人的には結構ショックで、「ついにこういう時代が 来たか…」と思いました。この指摘は、看取り前の がん末期の患者さんに対して、看護師が手を…

命の重み

私がレジデントの頃の話です。 病院かかりつけの患者さんが窒息で救急救命センターに 搬送されました。一命を取りとめましたが食事も会話も 出来ず、胃瘻に。また、もともと透析をするかどうか ギリギリの方でしたが、救命後は透析も必要となりました。 経過…

入院時に受ける急変の説明

病院に入院すると、家族が病状の説明を受けた時に、 「急変時の方針」を決めるよう求められる場合があります。 もちろん、この場で答えたことが今後も変更不可能ということ ではありません。後に変更も可能です。しかし後述のように いざ起こってしまってか…

同居孤独死

Yahooニュースにこんな記事がありました。headlines.yahoo.co.jp家族と同居をしているのに孤立状態で異常死を遂げる ケースがあると記事は述べています。別の記事によると、 このような「同居孤独死」は都内で年間2000件ある そうです。ちなみに一人暮らしの…

自分で決めない文化

日本において本人よりも家族の意思が優先される場面が多々あるのは 確かに課題ではある。しかしそれを本人自身が望んでいる場合という のもまたあり、それが日本人としての特性だろう。 ACPを進めて本人の意思を最優先させる仕組みを整えていくことは重要 だ…

「ヘルプマン!!」とキラキラ系介護

今回は、前回の続きの予定のつもりでしたが、うまく まとまらないので、他の内容にさせて頂くことにしました。ヘルプマン!!作者: くさか里樹出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2015/05/20メディア: コミックこの商品を含むブログ (1件) を見る皆さんは…

『母親に、死んで欲しい』

将来介護をする、受ける人になる可能性は、とても高いと 思います。特に家族に介護する/される人にとって、是非 一度は読み、考えて頂きたい本だと思います。「母親に、死んで欲しい」: 介護殺人・当事者たちの告白作者: NHKスペシャル取材班出版社/メーカー…

「一番苦しいのは本人」ですか?

がんの末期に限ったことではありませんが、介護している家族 に向かって「あなたも大変だと思うけれど、御本人の方が辛いの ですよ」等と声がかかることがあります。これは間違っていると 思います。もちろん、痛みや呼吸苦、嘔気などの身体的な苦痛を 感じ…

「死の受容」に対する疑問(2)

昨日の続きになります。kotaro-kanwa.hateblo.jp昨日のブログでは、西先生のブログ記事、「患者さんは死を 受け入れられるのかどうか」を紹介させて頂きました。 そして我が国のホスピスがキュブラー・ロスの影響を強く 受け、まるで「死の受容」に至ること…

「死の受容」に対する疑問(1)

3月28日、川崎市立井田病院の西先生がこんなブログを書いて おられました。https://www.buzzfeed.com/jp/tomohironishi/shihaukeirerarerunoka?utm_term=.yxG1bjPa#.end58z4Zwww.buzzfeed.comTwitterでも散々絶賛したのですが、私がこの仕事をしながら 長年…

『1000の夜を駆ける: ーわたしは統合失調症』

本日は本の紹介です。統合失調症を発症された著者 『しらたま』さんが、これまでの経験や想いを綴った漫画です。 これは2012年に描かれた作品ですが、AmazonのKindle Unlimitedに 登場したのを発見し読ませて頂きました。1000の夜を駆ける: ーわたしは統…

ホスピス医を目指す私が言われた言葉

医師になる前から緩和ケアに興味があった私は、がんという 病気を学ぶために消化器内科が良いと考え入局しました。 消化器は、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、 胆嚢・胆管がんなど悪性疾患の患者さんが多いのが理由です。 しかし、医局の…

介護職員への暴力を黙認すべきではない

高齢者や認知症の患者さんは、心身ともに衰えた「弱者」 であり、その人権が侵され易いため、これを守ることが 大切であるとしばしば指摘されます。これはその通りです。しかし同時に介護・支援する側の家族や介護職員・看護師の 人権を尊重すべきだ、という…

寄り添うことは悩むこと

2017年3月14日に開始したこのブログですが、明日で 1年を迎えることになります。敢えて有料のブログを選んだ ことで、「書かないともったいない」ような気分になり、 結果として私にしては頻繁に記事を更新出来たのではないか と思います(笑)。ブログを書…

「それでも良いですよ」~私の考える良い在宅医

いつも参考にさせて頂いている、いまいホームケアクリニック の今井先生のブログ記事から。「在宅医に求められる資質」に ついてのお話です。imai-hcc.com私も全く賛成です。在宅医に求められる資質は、病院医とは 少し異なります。いえ、究極的には人間とし…

『痛い在宅医』

2017年12月に出た、長尾和宏先生の著書。 在宅療養を、特に看取りを考えている御家族に必須の本 ではないかと思います。痛い在宅医作者: 長尾和宏出版社/メーカー: ブックマン社発売日: 2017/12/21メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見…

スパゲティ症候群とクオリティ・オブ・デス

「ピンピンコロリが良い」「眠るように死にたい」と多くの 方がおっしゃいます。しかし「ピンピンコロリ」で死を迎える ことが出来る人は5%に過ぎない、と在宅医の長尾 和宏先生は おっしゃっています。「スパゲティ症候群」という言葉を御存知でしょうか。…

オンライン診療の可能性

医療関係者の方は既にご存知の通り、今回の報酬改定から オンライン診療にルール付けと保険点数が設置されました。 ただ、定められた点数は非常に微々たるもので、手間と初期 費用、維持費を考慮すると完全にペイしないものでした。例によって、今井先生のブ…

医療ドラマと実際の医療

MTproに登録をしている医療関係者以外は読めない記事かも しれませんが、こんな記事がありました。medical-tribune.co.jp曰く、 患者の死亡率はドラマでは22%と、現実の7%の約3倍だった(P<0.0001)。また、救急診療部からそのまま手術室に搬送された患者…

「本人には言わないで下さい」

がん等の病気が判明し、説明が必要な時に、 我が国はまず、本人ではなく家族に告知をする傾向が あります。特に患者さんが高齢者である場合、その 配偶者と、お子さんがいらしゃる場合にはお子さんを 一緒に呼んで病気の事実を伝えることが多いです。そうす…

「より良い医療」を受けるために

日本の医療の特徴は、国民皆保険、フリーアクセスと されています。「医療費が高かった」という声も聞き ますが、一方でかかった金額の7~9割は公費で賄われ ています。最近、情報提供書なしで総合病院を受診 すると窓口で一定額の負担を求められるようにな…