Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

「どちらが、本人がより幸福か」という軸

胃瘻造設に当たり、多くの患者さんは自分の意思を表現 出来る状態にないため、家族が決断を迫られることが しばしばあります。「延命」か「実質的な患者の死」を 限られた時間の中で決断しなければならない苦悩は 計り知れないものがあります。また、少し異…

「身体拘束ゼロ」が生む悲劇

一昨日、Twitterで想いのほどを散々呟かせて頂いたのですが…。 私はもともと、「身体拘束を出来る限り減らす」は大賛成ですが 「ゼロ」という考えにはかなり抵抗があります。 そういった考えは過去にも、kotaro-kanwa.hateblo.jpまた、kotaro-kanwa.hateblo.…

終末期の輸液

本日は『いまいホームケアクリニック』さんのこちらの記事 から。imai-hcc.com書いてある内容は、私個人は全く賛成です。 ただ、少し自分の意見を加え、書かせて頂こうと思います。少しずつ衰弱された患者さんが、口から水分を摂れなく なった場合、多く余命…

施設訪問診療の終焉か

昨日、中医協から2018年度の診療報酬改定の個別項目が発表 されました。細かい点数配分はこれからですが、訪問診療は 大きな節目を迎えることになりそうです。個人的にはだいたい 要件を満たしていますので、今回は大きな影響はないと 思っていますが…。具体…

VSEDに対する私見

新城先生が書かれた、VSED (voluntary stopping eating and drinking) に関する記事が、Twitterで話題になっていました。headlines.yahoo.co.jpVSEDとは患者さんが自ら飲食を止めることによって死期を早める 行為を指します。上記の記事では、新城先生が10年…

曖昧に始まるセデーションは是か非か

今回は終末期鎮静についての、医療者向けの内容になります。 「セデーションって何?」という方には理解しにくい内容と なりますので御了承下さい。御承知の通り、終末期鎮静(特にcontinuous deep sedation、 以下CDS)はガイドラインでかなり慎重に選択す…

『身体拘束』を本当に減らすために必要なこと

2018年1月11日放送のクローズアップ現代で、『身体拘束』の特集 がありました。見逃してしまった方は、サイトで内容を閲覧する ことが出来ます。www.nhk.or.jp拘束の存在もあまり知らない一般の方々への問題提起という 意味では大変意義のある内容でしたが、…

ドキュメンタリーに登場する「大門未知子」

現実の医療界に、大門未知子(ドクターX)やブラックジャック はいません。敢えて言うまでもなく、「失敗しない医者」など 漫画やドラマにしか出て来ないことは子供でも知っています。しかし、「ノンフィクション」「ドキュメンタリー」を謳う テレビ番組も…

丸山ワクチンについて言いたいこと

最近テレビで丸山ワクチンについての放送があったようで 末期がんの患者さんからワクチンについての質問・問い合わせ がありました。丸山ワクチンについて聞かれるといつも独特な 気持ちになります。「手伝って」と言われれば期待に沿いたい と思いますが、…

平成30年診療報酬改定における『訪問診療』予測と私の考え

平成30年4月の診療報酬改定に向けて話し合いが行われて います。この中で訪問診療ではどのような変更がありそう でしょうか。まず、全体的な見通しですが前回までの、 特に施設(特医総管)の大幅な削減がたたり、在宅支援 診療所の数は緩やかに減少していま…

予め、自分で決めることの重要性

ここのところブログで続けて「医師任せにしてはいけない」 ことについてお話して来ました。診療をしていると、 「素人なので分かりません。先生にお任せします」 という方が必ずいらっしゃいます。御高齢になるに従い 比率は増えると思います。 一見、主治医…

「すがる」こととその対象が生む悲劇

今日は前回の続きです。元になる記事は、ex.yahoo.co.jp科学的根拠に乏しい代替療法にすがった結果、たくさんの 金銭を失ってしまう患者さんがいます。場合によっては、 完治の可能性すらある方でも、残念ながらそのチャンスを 失ってしまうこともあります。…

「緩和ケアも治療です」

今日はこの記事に沿ってお話させて頂こうと思います。ex.yahoo.co.jpこの、背を向けた医師と右側から伸びるたくさんの手、 とても印象的な、象徴的なイラストですね。進行再発がんで化学療法を行っても、殆どの場合がんを完全に 治癒させることは出来ません…

『「残された時間」を告げるとき』

心から尊敬している臨床医は?と聞かれ真っ先に浮かぶ先生の ひとり、西 智弘先生の本を紹介したいと思います。 特に研修医やレジデントの先生、また医師だけでなく患者さん と家族、またそれ以外の方が病や死について学ぶのにとても 良い本です。「残された…

顔の見える連携(関係)

在宅医療はクリニックだけでは成立しません。ケアマネージャー と訪問看護師、時に介護士やデイサービスとの情報交換も大切に なります。もちろん、病院とクリニックの連携も重要になります。 ですので、いかに良好な連携を組めるかが重要になり、 しばしば…

『安楽死で死なせて下さい』

あまり気持ちの余裕がなく、少し更新が滞っておりました。 今日は『おしん』『渡る世間は鬼ばかり』等で有名な 橋田 壽賀子さんが書いた本の紹介をさせて頂きます。安楽死で死なせて下さい (文春新書)作者: 橋田壽賀子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2017…

『食べてうつぬけ』

前回お話したように、特に閉経前の女性のうつ、パニック、 また成人のADHDと診断されるような方には栄養療法は かなり効果的な治療のひとつです。本日ご紹介する本は このこころに効く栄養学のエッセンスが詰まった本に なります。漫画やイラストが多いのは…

分子栄養学はオカルトか

以前もお書きしたように、自分自身に糖質制限を試し効果が あったので関連書籍やネットでの情報収集をするようになる と、あちこちで『分子栄養学』に出会うようになりました。 分子栄養学は『分子生物学』を土台とした栄養学で、その 土台の部分で糖質制限…

痛み治療の先にあるもの

永寿総合病院で病棟・在宅の緩和ケア治療で活躍されている 廣橋猛先生の書かれた記事を御紹介します。http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/hirohashi/201711/553443.html (前略) 切除不能な胃癌を患い、現在は化学療法中です。食べると胃が…

平穏死ー患者は本当に苦しんでいないのか

長尾和宏先生のブログにこんな記事がありました。blog.drnagao.com長尾先生は在宅医療の一線で活躍されている先生です。 たくさんの本を書かれ、あちこちで講演を行うなど 在宅医療普及に向けた活動も精力的に行っておられます。 胃瘻の本などはとても良く書…

『私の脳で起こったこと』

私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活作者: 樋口 直美出版社/メーカー: ブックマン社発売日: 2015/07/10メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る本の存在は知っており、以前から読みたいと思いながら 読んでいなか…

糖尿なのに脂質(あぶら)が主因!

糖尿なのに脂質(あぶら)が主因!―糖尿病とその合併症予防の脂質栄養ガイドライン作者: 奥山治美出版社/メーカー: クオリティケア発売日: 2017/08/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る2017年8月に、“あの”日本脂質栄養学会から出た本です。 主な内容…

認知症独居の高齢者を支える

昨日地域の介護事業所の勉強会にお誘い頂き参加しました。 あるケースカンファレンスを行いましたが、そこで考えた ことを今日は書かせて頂こうと思います。 90代独居の男性。簡単な会話は出来るが短期記憶障害は 著しい。糖尿病と心不全あり。奥様との想い…

韓国で「尊厳死」の選択が可能に

10月23日より、韓国の一部の医療機関で「尊厳死」を選ぶことが 出来るようになりました。試験期間を経て、来年2月から本格的 に法が施行されるとのことです。私は尊厳死法は賛成です。過剰な治療により苦しみ続ける患者さん、 そして介護者(家族)を本当に…

『ニルスの国の認知症ケア』

ニルスの国の認知症ケア―医療から暮らしに転換したスウェーデン作者: 藤原瑠美出版社/メーカー: ドメス出版発売日: 2013/08メディア: 単行本この商品を含むブログを見るはじめにお断りしておきますが、2013年出版の本です。 内容に感銘を受けたので紹介させ…

『がんと命の道しるべ』

がんと命の道しるべ 余命宣告の向こう側作者: 新城拓也出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 2017/07/24メディア: 単行本この商品を含むブログを見る素晴らしい本です。多くの患者さんとその御家族、そして さまざまな場所で緩和ケアに従事しているスタッフ、…

『カロリー制限の大罪』

まず、私自身の糖質制限の報告です。2017年5月より、正確に お書きするとまずカロリー制限で開始し、7月よりロカボ (以下参照)に切り替え、ここ1~2ヵ月はだいたい9kg減 で落ち着いています。だいたいとお書きしたのは、測定する タイミングで随分体重が異…

痛みを我慢する患者

がん性疼痛で、強い痛みがあるにも関わらず痛みを我慢する 患者さんが一定の割合でいます。中には未だにモルヒネを 使うとクセになる、頭がおかしくなる等正しいとは言えない 知識のために使用しない方もいますが、多くはそうではない ように思います。一つ…

スピリチュアルケア-私達に出来ること

スピリチュアルケアを考えるには、まずそのケアの対象である スピリチュアルペインの存在を理解する必要があります。このような図を良く見ると思います。患者さんの苦痛は身体的 なものにとどまらず、様々な種類があります。その中でWHOは わざわざ「精神的…

希望

川崎市立井田病院の、西先生のブログの記事から。tonishi0610.blogspot.jp西先生は緩和ケアを専門にされているという理由もありますが、 とても私と考えが近く、「本当にそうだよなぁ」と思うことが 多くあります。大学の同期が以前西先生と同じ病院に勤めて…