Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

同居孤独死

Yahooニュースにこんな記事がありました。

headlines.yahoo.co.jp

家族と同居をしているのに孤立状態で異常死を遂げる
ケースがあると記事は述べています。別の記事によると、
このような「同居孤独死」は都内で年間2000件ある
そうです。ちなみに一人暮らしの孤独死が年間3000件
余りだそうです。

もちろん、最初から孤独死させようと同居する家族は
いません。初めは良かれと思い、独居の親と一緒に住む
決心をされたのだと思います。にもかかわらずこのような
事態になってしまうことに、老いた親との同居の難しさ
を痛感します。

最近つくづく思うことは親、特に認知症の親との同居、
介護は本当に大変だということです。家族だからこそ
の衝突が必ずあります。認知症の親の介護をしていた
方であればお分かりのように、何故か老いた親は嫌な
ことばかり覚えており
、時には間違った記憶で子供を
責めます
。我慢が出来ずにすぐ怒ります。味覚が衰えて
いるので一生懸命食事を作っても「まずい」と言います。
ただでさえ大変な介護が、BPSDなどを伴うとやがて
介護者は追い詰められていくことになります。
「これだけ犠牲を払い、同居しているのに!」という
気持ちが出てきても当然ではないかと思います。
すると、同居していても顔を合わせたり親のところを
訪ねる回数は少なくなると想像出来ます。

「同居孤独死」では親子の関係がもっと劣悪になった果てに
起こるものも少なくないようです。紹介した記事でも遺品や
写真をを全て捨てて欲しい、とか葬儀も一切しない、
お金は出すから(葬儀は)勝手にやってくれ、という家族は
少なくないと書かれてありました。親ではなく、介護者である
息子・娘に問題はあることもあるでしょう。しかし、そのような
冷酷な人間が親と同居し介護をしようとするでしょうか

一人暮らしは寂しいだろう…確かにそれはそうです。しかし、
物理的には傍に家族がいても実際には家族との関係が冷え、
より一層孤独になっている人もある
。記事にもあるように、
『老後は家族と一緒が幸せという概念を考えなおす時が
来ている』のかもしれません。「一緒に住めなくて申し訳
ないなぁ」という気持ちで、笑顔で時々会いに来てくれる
くらいが、もしかしたら親は幸せかもしれません。少なくとも
私の老後は、それを望みます。