「自宅で最期」が意味するもの
昨日に引き続き、新城先生のブログからお話をさせて頂きます。
また、自宅で過ごして私のような在宅医が治療やケアを行って
いても、本当に家で亡くなりたいと本心から思っている人は
全体の3割です。ということは、残りの7割の患者は入院できる
病院を私が探さなくてはいけないということです。だから
在宅で何が一番大変かというと、家で最期を看取ること
ではなく、患者や家族に入院したいと言われたときに
入院できる病院を探すことです。
※赤字は私が勝手につけました。
本当にその通り!と思います。病院でどのような聞き方をして
いるか分かりませんが、「自宅看取り希望です」と紹介される
ことがあります。希望は本人なのか、家族なのか。そしていわゆる
「急変」の場合も、搬送せずに自宅で亡くなることを希望されて
いるのか。こちらで確認してみるとニュアンスが異なる場合も
少なくありません。新城先生が感じておられる葛藤を、私も以前
のエントリーで書かせて頂いたことがあります。とても大切な
内容だと思いますので、興味がある方は是非お読み下さい。
淀キリの『緩和ケアマニュアル』には、『急変』を「予期
せぬ突然の病態の変化」と定義したところ、15.4%の患者
さんに急変が起こるとあります。部位別では頭頚部がんが
トップで、28.3%です。脳浮腫や痙攣でしょうか。全体と
しては出血、呼吸不全がそれぞれ全体の30%を占めます
(ただ、逆に言えば急変のない多くの方は自宅看取りは
困難なことではないとも言えます)。
このような急変が起こった場合、いくらそれまで自宅療養
を希望されていたとしても考えが変わることはいくらでも
あります。このような場合、以前かかっていた病院に入院
をお願い出来れば良いですが、断られてしまうと患者さん
家族も私もかなり大変です。
上記の過去記事にも書きましたが、確かに搬送すれば患者
さんの苦痛がとれるか、楽になるのかは疑問もあります。
夜間休日では病院も手薄ですし、当番医が緩和に長けて
いるとは限りません。病院は「亡くならないようにする
医療」が優先されるのが常ですし、延命で苦痛を感じる
時間が長くなる可能性もあります。
しかしここで私が「パターナリズム」を発揮し、搬送する
よりも自宅で亡くなる方が良いのだ、と看取りを誘導する
ことはどうなのでしょうか。大切なのは私達の信念を
通すことではなく、究極の場面で患者さんや家族の強い
想いを優先することではないかと思うのです(もちろん、
事前にお話をしていますし、自宅を選ばれる方も多い
ことは付け加えておきます)。