Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

終末期に点滴をしないで苦しくないのか

少し前の記事ですが、yomiDr.にこんな記事がありました。

yomidr.yomiuri.co.jp

タイトルを読んで、多くの医療者はキョトンとするかも
しれません。点滴をしないと苦しむ?…誰が?家族…?と
いうのが私の最初の反応でした。

しかし、医療従事者ではない、看取った経験の少ない方
であれば、こういった疑問もあるのかもしれません。
『餓死』を連想し、お腹は空かないか、喉は乾かないか
という心配が出て来るのだと思います。

しかし、餓死は食事が食べられる健康な人間が、食べる
事が出来なくなって亡くなることです。がんの終末期、
悪液質と呼ばれる状態になるとお腹は空かず、むしろ
食べ物を見ることも苦痛と訴える方が多いです。

「食べられないから死んでしまう」ではなく、「もうすぐ
亡くなるので食べ物を受け付けなくなる」
のです。逆です。
無理して食べさせようとするから、嘔吐したり、誤嚥したり、
窒息するのです。御家族は「本人のため」と思うあまり、
一番残酷なことをしているのです。

これは少し前にTwitterで私が書いたものですが、この時期
食事の量が減ることはむしろ自然なことなのです。
終末期の患者さんはむしろ、「食べろ、食べろ」と言われること
が辛い
、とおっしゃる場合が多く、周囲は満腹のところに
「食べなければダメだ!」と言われるところを想像し、
患者さんの辛さを少しでも理解して頂きたいと思います。

そういう訳で、この時期空腹で苦しむというケースを見た
ことがありません。口渇に関しては、確かに感じる方は
おられます。しかし終末期の患者さんで1日1000mlの点滴
の口渇への効果はプラセボと変わらなかったという報告
もあり、また日々の診療の中でも否定的と考えます。
もっと大量の点滴では話しは変わるかもしれませんが、
昨日もお話した通り浮腫や胸腹水の増加など間違いなく
別の苦痛が増すと思います。適切な口腔ケアや小さな氷片
などで対応する方が適切です。

yomiDr.の記事にもあるように、脱水はむしろ徐々に眠る
時間を増やし、眠るような最期を提供する事が多い

と言えます。以前こちらでも紹介させて頂いた、看取り士
柴田久美子さんの本を読んだ事がない方は是非一度読んで
頂きたいと思います。医療行為などなくても、多くの人は
穏やかに眠るように最期を迎える事が出来るものなのです。

幸せな旅立ちを約束します 看取り士

幸せな旅立ちを約束します 看取り士

500人以上の患者さんの最期を担当させて頂いた経験から、
「終末期に点滴をしないで苦しさが増すか」という問い
にははっきりNoと言えます。もちろん、点滴の有無に
関わらず色々な苦しさを全く経験しないという事もありません
が、少なくともその期間を点滴で長引かせない方が良い
のではないか、と私は考えます。