Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

なんとめでたいご臨終

なんとめでたいご臨終

なんとめでたいご臨終

在宅医、小笠原文雄先生の著書。
すごい売れ行きでAmazonでは早々に品切れになって
いました。もうすぐ重版が出るようですが、私は
kindleで読ませて頂きました。

患者さん御本人が自分の希望・納得・満足の中で
迎える最期は決して不幸ではない
。お別れは寂しい
かもしれないけれど、御本人も御家族も笑顔で最期
を迎えることが出来るんです。簡単に言えば、それが
この本の内容です。そんなエピソードが詰まった本です。

これまでは、いや、今でもそうですが、末期がんや老衰
でご飯が食べられなくなれば入院が当たり前でした。
点滴だ、酸素だ、抗生剤だ、痰が多ければ吸引だ。
処置に抵抗すれば、身体拘束が必要です。
血圧が下がったら昇圧剤。ついに呼吸が止まれば挿管、
人工呼吸器。さすがに昇圧剤と人工呼吸器は最近は見なく
なりましたが、あらゆる「死なない」ための医療行為が
施され、多くは苦しみの中で最期を迎えることになります。
「がんは最期は苦しむ」等というイメージは、実は
がんが問題ではなく延命行為こそが人の死を壮絶に
していた、というだけの話
だったのです。
ここ最近になり、ようやく病院で迎える最期に医療者
でない方々からも疑問の声が上がるようになりました。

この本を読むと本当に分かると思いますが、人間って
「心の状態」だけでこんなにも大きく変わる
ものなのです。
病院では特に「これをしたい」という患者さんの希望が
「危ない」、「無理だ」、「寿命が短くなる」等と色々な
理由で禁止されてしまいます。味気ない食事、それすら
も「誤嚥する」と取り上げられ、話し相手もおらず、毎日
天井を眺め死を待つ生活。すぐに「生きていても仕方ない」
と思ってしまうでしょう。ここは考え方次第です。
もし旅行に行って、途中で亡くなってしまったとしても、
小笠原先生が言われるように「希望の中の死」であれば
それはそれでHappy Endではありませんか

まして、これは本の中にもありますが希望の中にいる患者
さんは不思議としばしば長生きです。これはエビデンスは?
と言われると困るのですが、在宅をされている先生であれば
このように実感するのは日常のことだと思います。

そして、「在宅が良さそうなのは分かったけれど、実際には
難しい」と思われるケースが、実はやってみると大概うまく
行くという経験がたくさん載っています。もちろんこの本に
載っているように全てがうまく運ぶことばかりではないでしょう。
しかし心配ばかりしていては在宅医療は出来ません。理解と
ちょっとの覚悟があれば、めでたいご臨終の可能性は多くの
方に残されているのです

さて、素晴らしい本である事に間違いはないのですが、同じ
在宅医として違和感を感じる部分がない訳ではありません。
次回はそのことについてお話出来ればと考えています。