Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

緩和ケア医の燃え尽き

6月24日の、日経メディカルの記事から。

medical.nikkeibp.co.jp

緩和ケアに携わる若手医師の69%に燃え尽き、30%に心理的
苦痛
、というタイトルです。今回の、第24回日本緩和医療学会
学術大会でも発表された内容でした。緩和ケア医療に携わる
229人にMBI(Maslach Burnout Inventory)を用いて解析を行い、
上記結果となりました。心理的苦痛とは気分・不安障害の指標
を用いて判定しており、さらに程度の重い心理的苦痛も14.4%
に認めた、とあります。

「燃え尽き」って何?分かるようで分からないという人も
いるかもしれません。検索するとすぐ出て来る医学書院の
座談会では、このように定義されていました。

バーンアウト燃え尽き症候群)とは,対人的サービスを提供する
職種において,活発に仕事をしていた人が「燃え尽きたように」
意欲を失う状態を指す。 医師のバーンアウトでは,心身の不調,
離職など医師自身への影響だけでなく,診療の質の低下や共感性
の欠如といった患者への悪影響も懸念される

赤字は私が勝手につけたものです。

医師の「燃え尽き」に関する調査は対象や手法も様々で、従って
結果も色々ですが、他の分野の医師達でも50%程度の燃え尽き
がある、という報告は国内・国外問わず複数あります。
中でも救急診療や腫瘍内科に燃え尽きが多いと読んだことが
ありますが、中でもこの今回の結果、7割に「燃え尽き」と
いうのは「緩和ケア大丈夫?」と心配になってしまう結果です。

燃え尽きの理由は人それぞれだとは思いますが、多くに共通
で挙げられるのは「激務」と「無力感」ではないかと思います。
やはり人が亡くなるということは慣れている医師にとっても
何の感情も起こらないはずはありませんし、ここに更に十分な
緩和ケアが提供出来なかった、等の後悔が加われば若い医師
の気持ちを弱らせてしまうには十分な理由になると想像します。

ただ、正直なところ私はこのような無力感を感じることが出来る
医師こそ、緩和ケアに適正があり、仕事を続けて欲しい
なぁ、と
思っています。もちろん、看護師さんも同じです。
「患者さんに寄り添う」ことは、色々な意味でとても自身を削り
消耗することです。それを真面目にやっている医師は、
「私は緩和が得意です」なんておこがましいセリフは
とても言えないでしょう。オピオイドを使いこなすことが、
緩和ケアではないのです。

このブログでも何度か取り上げている、めぐみ在宅クリニック
小澤 竹俊先生の言葉を、私はまず緩和ケアを目指す人達に
伝えたいと思います(詳しくは過去の記事に)。

kotaro-kanwa.hateblo.jp

また、これは緩和ケア医を対象にしたものではありませんが、
病院側が理解を示し勤務時間の短縮やカウンセリング等を導入
することは効果がある
ようです。また、「患者さんのため」
と24時間365日携帯に連絡が入る状況は、医師を消耗させ、
実は巡り巡って患者さんのためにもなっていないことにも
気付くべきでしょう。