Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

『100点中10点』に思う

6月24日のm3(エムスリー)に、めぐみ在宅クリニック院長、
小澤竹俊先生のインタビューが載っていました。ホスピスを
経験し、現在は訪問診療医として多くの患者さんと関わり、
たくさんの方を看取って来られた先生です。診療体制に
ついてのお話のあと、このような事を言っておられました。

在宅医に必要な心構えは、自分の弱さを認め、
力になれなくても逃げないこと。
そして、周囲の人からの支えに気づくことだと思います。

とても大切な言葉だと思いました。

患者さんのベッドサイドに5分程度いるだけでは、
この感覚はなかなか分からないと思います。
真剣に向き合えば向き合うほど、私たちは無力
であるという事実を思い知らされるのです

だから私は、自信満々な在宅医・緩和ケア医は
正直胡散臭いな、と思っています。

次に小澤先生はこのように言います。

わたしはよく看取りに関わる人に「あなたは自分に
何点をつけますか?」と問います。医師であれば、
十分な治療ができたときに100点中100点をつけるでしょう。
これは英語でvery good(よくできました)。一方、治療
しても完治が見込めず、それ以上何もできないときは
どうでしょうか。自分の不甲斐なさに10点をつけるかも
しれません。

これもまた、同じ在宅医である私にはとてもしっくり
来る言葉でした。提供した治療が患者さんの苦痛を
とても緩和出来ることもありますが、一方何をしても
辛さが癒えないこともあります。
「そうですね…辛いですよね…」としか言えない時は
逃げ出したい程の無力さを感じるものです。
しかし、在宅医はここで逃げてはいけないのです。

4月2日のブログで紹介させて頂いた、在宅医早川一光
先生の言葉を、もう一度紹介させて頂きます。

「長い人間の人生とおつきあいしてくると治せずに
老いを迎え治せずに死ぬ事ばかりなのです」。
「一緒に泣こうよ一緒に語ろうよ一緒に悩もうよと
一緒に歩いていく事しか僕らにはできないのではないかと
いうのが僕の医療に対する基本的な考え方です。」

私達が出来ることを全て行い、手立てがないとしたら、
最後に残された手段は、逃げないで一緒にいること。
つまり、Beingです。

そして小澤先生はこう言います。

医師として100点を目指したいのは当然です。しかし、
在宅の現場では力になれない自分を認めないと、
いずれ燃え尽きてしまう可能性が高い
。わたしは
「誰かの支えになろうとする人こそ支えが必要」
だと考えています。

100点満点で10点でも、先生は「good enough」と
考えるべきと言います。これに対して掲示板で
「10点でも十分とはプロフェッショナルとして
甘いのではないか」という意見がありましたが
私はそれは違うと思います。本当に自分に甘い
医師は、同じ状況で60点、70点をつけるでしょう

しかし、そうではなくたとえ10点として認識しても、
それでも絶望せずこれからもずっと患者さんと向き
合って行くために「good enough」と考えよう、
というところに小澤先生の謙虚さと優しさを感じるのです。

最後に、関連する小澤先生の著書を御紹介します。

医療者のための実践スピリチュアルケア―苦しむ患者さんから逃げない!

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