Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

ホスピスはもう、「終の棲家」ではありません

少し前になりますが、私が問題に感じていたことを西智弘先生が記事
にして下さいました。皆さんの理解とは別に、ホスピスは徐々に
「最期まで過ごす場所」ではなくなって来ています。背景には診療
報酬の変更が大きく関係しています。記事の中でとても詳しく触れて
いますので是非一度お読み頂けたらと思います。

https://www.buzzfeed.com/jp/tomohironishi/hospice-rentaisekinin

欧米では、ホスピスの平均入院期間は一週間程度とお聞きしたこと
があります(随分前の話ですから、現状とは違うかもしれません)。
これには保険制度の違いもあると思いますし、もともとホスピス
本当に辛い症状を取り除き、また自宅に戻るための入院施設であった
ということでしょう。

我が国では、ホスピスは独居、老々介護、認々介護、一般病棟の
長期入院に対して入院が継続出来る場所としての受け皿の役割を
していたのは、良し悪しは別として事実です。
「もっとつらい症状でホスピスに入院を待つ患者さん」のために
限られた入院のベッドを空ける。それも確かに必要なことですが、
「何かの理由で退院出来ない患者さん」が何の助けもないまま、
これまでの急性期病院同様に半ば強制的に退院させられてしまう
ようになるのは、何ともやり切れない気持ちです。

また、西先生の記事では、こういった制度により提供したいケア
が出来なくなった医療者が緩和病棟を去る決意をしたという話も
紹介されていました。西先生がおっしゃるように、それを望んで
いない患者さん・家族に退院を迫るということは(もちろん
医療者も不本意です!)、結局究極的なところでの信頼関係は
築きにくくなるのは想像に難くありません。恐らく理想の緩和
ケアを目指し志を持って緩和ケアにやって来た医療者にとって、
このような変化は耐え難いのではないかと思います。
本音は、このような時だからこそ心ある医療者には居て頂きたい
ですが、記事のような切実なTweetを読むとそうも言えなくなります。

このような患者さんは「消去法」で不本意ながら在宅を選ぶこと
になるのでしょう。もちろん、患者さんやご家族が不本意でも
在宅を選択された方が少しでも負担少なく良い時間を過ごせる
ためにベストを尽くすのが私達の役割です。しかし在宅もまた、
毎年のように報酬が削られつつあり、やる気のある先生達が次々
に限界を感じて去り、何年か前の緩和ケア病棟を見ているような
気がしているのは私だけでしょうか。私達が在宅ケア、緩和ケア
を受けるそう遠くない未来、医療はどうなっているのでしょうか。