タペンタが使いにくい理由
平成26年8月18日に発売されたタペンタドール、商品名
「タペンタ」ですが、オピオイドのμ受容体を刺激する
作用と、ノルアドレナリン再取り込み阻害を合わせ持つ
薬剤です。オピオイド作用+SNRIと言えば分かりやすい
かもしれません。
オピオイド作用+下降系抑制効果を合わせ持つ薬剤と
言えば既にトラマドールがありましたが、トラマドールの
μオピオイド受容体への作用は言わば「おまけ」的で
あったのに対して、タペンタでは主の作用として期待
されます(当然そのための副作用対策は必要です)。
また、トラマドールの持つセロトニンの再取り込み阻害
作用はタペンタには殆どありません。
痛み止めとしての作用はタペンタが上ですが、タペンタ
は「麻薬指定」となります。
徐放剤なので12時間おきの1日2回内服になります。
25mg、50mg、100mgの剤型があります。
増量は他のオピオイド同様25~50%増しで。
ちなみにフェンタニルのパッチやメサドンのように、
他のオピオイドから切り替えて使用すること、という
文言はありません。
さて、タペンタにはいくつか使いにくい問題があります。
新薬の14日制限は、8月には解除されますが、まずは
なんと言ってもレスキューがありません。座薬や注射
はともかくレスキューは必ず必要なものなので困ります
が、SNRI様作用を考えると、レスキューは出ないんじゃ
ないか、とも思います。
タペンタ100mg=オキシコンチン20mg=モルヒネ30mg
なので、この換算を利用しレスキューを決めることに
なります。タペンタ1日100mg使用なら、例えばオキノーム
なら2.5mg程度を使用するのが妥当でしょう。
タペンタの利点があるとすれば便秘等の一部の副作用が
少ない可能性、肝臓でのグルクロン酸抱合というシンプル
な代謝経路にありましたが、レスキューで他のオピオイド
を併用するとこれらの利点も消えてしまいます。
もう一つの問題点は500mg/dayを越えての使用経験・データ
が乏しく、安全性や有効性が確立されていない、という点。
SNRI様作用がありますので、確かに闇雲に増量するのは止めて
おくべきだと思います。
つまりタペンタは麻薬の処方箋が必要でありながら、
500mg程度で他のオピオイドにスイッチングしなければ
いけないだろう、という事になります。除痛ラダーでは
麻薬処方箋が必要な強オピオイドでありながら使用量の
制限があるので、個人的には第2段階という位置づけが
妥当な気がします。
最大の利点であるSNRI様の作用ですが、この作用も用量が
少なければ小さく、用量が増えるごとに強くなっていく
ので、実は結構使いにくいです。高齢者では副作用の懸念
が強くなります。素直にトレドミンやサインバルタを併用
した方が調整しやすいと言えそうです。
おまけに置いてある薬局を探すのも一苦労です(切実)。
その他参考文献
タペンタドール使用経験にもとづく適応の検討
Palliat Care Res 2016; 11(1): 306–10