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主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった

非常に面白い本だったので御紹介します。

うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった (光文社新書)

うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった (光文社新書)

私がいつも勉強させて頂いているひらやま脳神経外科
のブログでも度々糖質制限や鉄不足の話題が出ていま
したので以前から興味を持つ分野ではありました。特に
糖質制限は、7月初めから私自身も始めています。

さて、本の紹介に移ります。

精神科医として研究・臨床を熱心にやって来られた
藤川先生が、御自身の採血結果に異常があった事が切っ掛け
で糖質制限に興味を持ち、その効果の大きさから、
「分子栄養学」を学ぶようになったそうです。その中で
少しずつ鉄・蛋白の欠乏とうつ病、パニック障害、
また最近社会的に問題にされて来た発達障害等の治療
にも、栄養学的なアプローチが必要で効果も高いという
事に気付かれました。特に月経のある女性では慢性的に
鉄不足であり、妊娠で大幅に栄養障害が加速することも
あきらかになりました。

私もそうですが、栄養学の大切さは医学部では殆ど勉強
をしません。やったとしても、「コレステロールが多い
から肉を控えましょう、卵は1日1個にしましょう」程度
の、古く、浅い栄養学的知識しか持ち合わせていない
事が多いのです。栄養士さんも、余程新しい知識を吸収
することに時間が割ける方でないとカロリー制限を主と
した古い栄養指導になっているかもしれません。

本に詳しく書いてありますが、私達は日本では栄養は
十分に足りている、という大前提で話をします。しかし、
細かい栄養素に目を向けると意外なことに多くの方が
ミネラルやビタミンが不足しているという現実がある

そうです。

確かに、私も貧血の際の鉄の評価はフェリチンまで殆ど
測っていません。理由は保険で査定されてしまうからです。
もちろん血清鉄以外にTIBCを測っていますから、これが
正常値以上ではあまり鉄が不足しているという感覚は
ありませんでした。しかし実例が示す通り、これ程の効果
があるならフェリチンの測定くらいは査定されてもやる
価値はあるのではないかと思っています。

確かに現代医療は栄養学を疎かにしがちです。優れた薬
が次々に開発されていますが、栄養指導に関しては古い、
エビデンスの少ない方法が行われているに過ぎません

藤川先生は以前は論文をとても良く発表される先生でしたが
最近はFacebookでの報告を行い、論文は書かれなくなった
そうです。これについての理由も本文に述べられており、
確かにおっしゃる通りだと思いました。河野先生が論文を
書かれない理由も同じだろうと思います。

しかし、学会という場はデメリットもありますが必ず批評
的な立場からの意見も得ることが出来ます。優れた先生
でも御自分の考えを否定的な見地から見直すことはきっと
難しいと思うのです。また厳しい二重盲検などは恐らく
していない事になると思いますのでプラセボやバイアスも
混じりやすくなると想像します。

またより多くの医療者によって効果を再確認/報告して貰える
メリットがあります。Facebookでも出来ないことはないかも
しれませんが、同じく好意的な仲間からのpositiveな結果しか
フィードバックがないと想像します。藤川先生を信頼していない
訳ではありませんが、考えが偏ってしまうリスク、「トンデモ」
な医療が批判されることなく広まってしまう可能性もあり、
その点は十分注意する必要があるのではないかと思います。
鉄投与でどれだけの方に効果がなかったのかも合わせて知り
たかったです。それがscienceですので。

うつやパニックにお困りの方は多いと思います。有害な方法
ではありませんので一度試してみる価値があるのではない
でしょうか。