Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

医療と祈り

宗教と医療は一見、相容れないものという印象が
あります。医療は科学であり、根拠・裏付けが
はっきりしいているのに対して、宗教の本質は
究極的には「信じる」ことであって、根拠が明確
なものを信用することは「信仰」とは言いません

また、「エホバの証人」の輸血拒否事件のように、
しばしば宗教が医療行為否定の根拠になっている
例がマスコミ等で取り上げられ、医療と相反する
存在、という漠然としたイメージが出来てしまった
のかもしれません。

医師が布教を始めたら大問題ではありますが、
私は「祈る医師」の存在はあって良いと思いますし、
むしろ好ましいとさえ思います。恐らく祈る医師は
自分や医療(医学)の限界を自覚しており、謙虚さを
持ち、感謝が出来る医師
だと思うからです。
「自分が患者を治した」という気持ちは医師を傲慢
にします。それが言えるなら逆に、力及ばすに患者
さんが亡くなった時は「私が殺した」と言わなければ
ならないはずです。

人間が生きものの生き死にを自由にしようなんて
おこがましいとは思わんかね

これは御存知ブラックジャックの師、本間丈太郎先生
の台詞です。医師は患者の治癒・改善の手助けが出来る
に過ぎず、そこから先はまさに「サムシンググレート」
の領域なのです。医師自身が、本当は無力な自分に
気付かずに、無力な患者さんの気持ちなど分からない
のではないか
、と私は思っています。

また、祈りがもし患者さんに向けられているのであれば
それは尚更美しく尊いものではないかと思います。
他人に向けられた祈りは利己的なものがなくとても優しい
ものだと思います。

さて、本を紹介させて頂きます。

祈る医師 祈らない医師―ホリスティック医療の明日へ (手のひらの宇宙BOOKs)

祈る医師 祈らない医師―ホリスティック医療の明日へ (手のひらの宇宙BOOKs)

ホリスティックの普及に尽力されている要先生の
書かれた本です。先生は長い間甲状腺を手術する
外科医として仕事をされており、医療を否定する
本ではありません。要先生によればホリスティック
の目指すところはNBMとEBMの双方の長所を生かそう

ということであり、今の医学に希薄な、患者さん
を一人の人間として捉え、対話を重視した姿勢は
頷けるものがあります。「患者さんが幸せになれば
それで良し」という考えも(極論でなければ)悪く
ないと思います。

個人的には、「祈り」の効果を科学的に証明した?
研究について、興味がありもう少し詳しく知りた
かったです。もちろん、祈りは「叶うからする」
のが本質ではないと思いますが、どんな方法で
何に有意差があって効果ありと判断したのかは
知りたいと思いました。

本著は一般向けに、ホリスティックを知らない方
向けに書かれた本で、読みやすいと思います。
ただ、要先生も慎重に、控えめに?書かれている
とは言え、「波動」や「パワースポット」等も
登場するので個人的には素直に読めないところも
ありましたが。

ホリスティックを推進するかは別として私は一人の
医療者として科学的根拠に基づき治療を選択する
ことが医療の全てではないと思っています。もし
医療がそれだけの存在であれば、すぐに「人工知能」
にとって変わられて行くでしょう。エビデンスの
上に、患者さんに希望を与え、「個」を尊重し、
幸せを願うものであって欲しいと心から思っています。