Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

『今日から第二の患者さん』

最近登録したnoteを見ていて青鹿さんの記事が目にとまり
ました。

note.mu

これ、なんですが。私は医師になってこの方、ずっと疑問視、
問題視していたテーマだったので、漫画もすぐに購入させて
頂きました。

「第二の患者さん」は、病気の患者さんの御家族の
ことです。漫画にも登場しますが、部外者の

「患者さんが一番つらい」

という言葉。間違いとは思いませんが、これがどれだけ
家族にプレッシャーを与え、孤立させている
のか。
皆さんは考えたことがありますでしょうか。

ホスピス時代、パートナーの介護・看取りをした女性が、
自らも病気になりホスピスで療養をしている時に、
「私は『患者の家族』だった時の方がつらかった」
とおっしゃいました。「つらいことに一番・二番と
順番を付けることは出来ない」と思います。比べること
自体ナンセンスです。ただ、この女性の言葉は家族の
苦しみを現すリアルな言葉
として、今でも私の記憶に
残っています。また、近い内容を複数の患者さんからも
お聞きしました。

患者さんの家族にも、患者さん自身とは違う苦しみが
たくさんあります。青鹿さんの漫画は、そこを上手に
表現されていると感じました。つらいけれど、本人には
言えない。周囲も分かってくれない。不安と、自己嫌悪。
また怒鳴ってしまった、傷つけてしまった…。

それから、もうひとつ。特に強調したいエピソードは、
周囲からの「アドバイス」です。怪しいサプリメント
だけでなく、こうしなよ、それはダメだよ、という
無責任な一言。つい、発してしまうことも良く分かり
ますが、相手が具体的なアドバイスを希望しているか
を少し考えてみる必要がないでしょうか。
多くはむしろ、「聞いて欲しい」「肯定して欲しい」
のだと思うのです。アドバイスは、時として、
「聞く」とは逆の行為、「もう聞きません」に近い

のではないかと最近は考えています。

患者さんの家族の方は孤立しやすいので、「みんなも
大変な想いをしているんだなぁ」と、きっと共有出来る
部分があると思います。また、そうではない方も、
「二人に一人ががん」の時代、自分や家族、そして
友人を含め患者さん・第二の患者さんに接する機会は
間違いなくあるでしょう。このような本は本当に少ない
ので、是非多くの方にご一読頂きたいです。