Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

『食べてうつぬけ』

前回お話したように、特に閉経前の女性のうつ、パニック、
また成人のADHDと診断されるような方には栄養療法は
かなり効果的な治療のひとつです。本日ご紹介する本は
このこころに効く栄養学のエッセンスが詰まった本に
なります。漫画やイラストが多いのはとても良いと思い
ます。うつ等で苦しむ方は文字をたくさん読むのは苦痛
だと思うからです。

マンガでわかる ココロの不調回復 食べてうつぬけ

マンガでわかる ココロの不調回復 食べてうつぬけ

もちろん私も栄養学で全てが良くなるとは思っていません
環境や出来事が影響している場合も多いでしょう。
また、ここで勧められる栄養療法の実践がどうしても
難しい人もいるでしょう。
しかし、余程高価なサプリメントに手を出さない限りは
失うものは少ないと思いますので、試す価値は大です。

特に若い女性に不足しがちな鉄はかなりページを割いて
います。月経、出産、ダイエット等で身体の中の鉄の
貯蔵量が危機的状況になっている女性は多いと思います。
本の中の、鉄不足に現れる症状として爪の変化がとても
重要だそうです。爪を切る時に「パチン」と気持ち良い
音がしないことは鉄不足のサイン
といいます。
また、固いものをがりがり食べたくなるというのも
興味深いと思いました(鉄不足の方は氷を食べたくなる
というのは昔から有名です)。

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図は、蛋白質からセロトニンやアドレナリンが合成される
経路を示したものです。セロトニン不足はうつの原因として
重要なものの一つであることは御存知だと思います。

図を細かく見ると多くの反応に鉄やビタミンが必要である
ことが分かると思います。セロトニンは心のやすらぎに、
アドレナリンはやる気に関係します。またセロトニンが不足
すると夜間の安眠に必要なメラトニンが不足することも一目
瞭然です。最近の研究で、鉄不足は貧血を起こす前に、
これらの反応やエネルギーを生み出す働きが落ちる
ことが
分かって来ています。採血では『フェリチン』を測定
しないと真の不足は分からない
ことが多いです。詳しくは
本著に譲ります。

鉄以外にも、蛋白質の大切さ、ビタミン群の大切さ、
ミネラルの大切さ、過剰な糖質を減らすことが重要である
ということが書かれています。糖質はエネルギーを
生み出す時に鉄やビタミンをたくさん消費するそうです。

同じジャンルの本としては、以前このブログで紹介した
藤川先生のこの本も面白いです。

うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった (光文社新書)

うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった (光文社新書)

藤川先生のクリニックでは、1000人のうつ・パニックの女性
のうち、なんと50%が一年以内に薬が不要になっている
、と
書かれています。最後になりますが、独断で現在内服中の
薬を止めるのは少し待って下さい。SSRIやBZ系の薬剤を急に
止めると体調を崩す方が多いです。また、栄養療法はかなり
コツがありますので、必ずこれらの本によく目を通し、
最低限の知識を身に着けてから実践されることを強くお勧め
します
。出来れば栄養療法に詳しい先生の指導のもとで
始めるのが良いですが、少ないうえに自費診療でかなり料金
が高いのがネックです。