Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

分子栄養学はオカルトか

以前もお書きしたように、自分自身に糖質制限を試し効果が
あったので関連書籍やネットでの情報収集をするようになる
と、あちこちで『分子栄養学』に出会うようになりました。
分子栄養学は『分子生物学』を土台とした栄養学で、その
土台の部分で糖質制限を重要視している場合が多いからです。

現在の分子栄養学はもともと海外ではライナス=ポーリングや
エイブラム=ホッファーら、国内では三石巌などに端を発し
ます。彼らの考え方は現在あまり不足するとは考えられて
いない、むしろ過剰が心配されている栄養を、必須アミノ酸、
必須脂肪酸、各種ビタミン、ミネラルと詳しく見ていった時、
実は不足する栄養素があり、健康に悪影響が出ていること、
それを補うことで疾患の治療が出来るのではないか、という
考え方です。もちろんその後色々な先生方の考え方が取り入れ
られ、また考えの相違が生まれ、少々混沌とした感じになって
いるのが現状ではないかと思います。

自分自身分子栄養学(もしくは分子整合栄養医学)に興味を
持ち、数か月学んで来ましたが、とても興味深いと思うと
同時に、いくつかの問題も感じました。

まず、確かに生理学的に解明された事実を基に、一貫性のある
説得力のある考えではあるのですが、一部を除き非常にエビデンス
が乏しいということです。つまり、一部のエキスパートオピニオン
の発言力が強く、また批判的な検証を殆ど受けていません。
生まれたばかりの学問であればこれは仕方ないことですが
やはり効果のない人達がどれくらいいて、
何故効果がなかったのかという考察がなされるようにならないと
恐らく大部分の医師にはあまり響かないのではないかと思います。
仮説と証明された事実がごっちゃになっているのも気になります。

また、ポーリングのビタミンC治療がメイヨークリニックの
研究等で否定され続けた歴史から、どうも分子栄養学の提唱者、
実践者には医療否定が根強く(もちろん全員ではありません)、
同じく医療否定繋がりで近〇誠や反ワクチン、脂質栄養学会
等と親和性が高い傾向にあります。共通点は、人類が築き上げて
来たエビデンスの全否定、ねつ造と陰謀!という論理です。

少し強い言葉を使いましたが、私は分子栄養学を否定する立場
ではなく、むしろ今後の可能性を強く感じています。例えば
分子栄養学が得意な分野、女性の神経症・うつ・パニックや
一部のアレルギー等は十分試みる価値があると思っていますし、
少なくとも現代医療で解決出来ない多くの問題のうち、栄養面
を見直すことで体調が改善するなら、それは素晴らしいことだと
思います。

危険だなぁと思うのは、

分子栄養学→全て○
現代医療→全て×

といった極端な構図です。これも個人の理解であれば何も問題
ありませんが、一歩間違うと多くの患者さんの健康を損ね得る
問題になるかもしれません。

私達が学んでいる現代医療は、もちろん非力で不完全ですが
多くの仮説を検証し、多くの人々の批判・再検証を受けながら
確立して来た学問であることは間違いありません。また、今ある
分子栄養学も恐らくはそのようなプロセスを経て間違いの訂正や
より良い理論へと発展して行くのだと思います。

最後に、栄養学を「情報弱者がハマる疑似科学」というような
書き方をする医療者は逆の極論者であり、私は強い不快感を
覚えます。第一、内容以前にこういう言い方をするから医療
不信が強まるのです。一言で分子栄養学と言っても色々で、
全てを十把一絡げに否定することも無理があると思います
(栄養学全て肯定に無理があることもまた当然です!)。
きっと、恩恵を被る人がいる。しかし、エビデンスが乏しい
ので間違いもきっとある。冷静に、慎重に。これが私の新しい
栄養学に対するスタンスです。