Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

在宅でのセデーション事情

今日は訪問診療におけるセデーション(鎮静)について私の
経験から話をさせて頂こうと思います。まず、セデーション
を御存知ない方のために説明させて頂くと、

患者さんの苦痛緩和を目的として意識を低下させる薬剤を
投与すること。または苦痛緩和のために薬剤によって生じた
意識低下を意図的に維持すること。

を言います。セデーションにはその様式によって、一定期間の
鎮静の後に覚醒して頂くことを意図して行う「間欠的鎮静」と、
中止を定めずに意識低下を維持する「持続的鎮静」に分類され
ます。また鎮静の深さとして「呼べば覚醒する」程度の「浅い
鎮静」と、完全に深い眠りに導く「深い鎮静」があります。
特に深く持続的な鎮静(continuous deep sedation;CDS)
は苦痛をほぼ完全に取り除く事が出来る一方、患者さんのQOL
を完全に奪ってしまう方法
として是非が議論されます。
私はセデーションを回避することが緩和ケア医・看護師の腕の
見せ所だと思っています
。実際、ガイドラインでも鎮静は非常に
慎重な議論に基づき使用されるべきであるとしています。
しかし、経験上呼吸苦は時にどうしても鎮静が必要になります。

ちなみにセデーションはよく安楽死と混同されますが、前者の
目的が「患者さんの死」である事に対して、後者の目的が
「苦痛の緩和」である事が明確に違います

在宅では通常、セデーションを考慮する余地すらない事が多い
です。意図的に意識を落とさなくても徐々に眠りが深くなり、
殆どの患者さんは病院とは比較にならないくらい楽そうです。
しかし例外的に呼吸苦が強い患者さん、若く高カロリー輸液を
続けていた患者さんは、結果的にCDSになってしまった方が
いらっしゃいました。

また、昨日のエントリーでもお話した「独居の在宅死」では、
苦痛が残った状態では患者さんは不安なものです。私も、
自分なら考慮して欲しいな、と思う時には選択肢として提示
することはあります。この場合まずCDSは不要で、浅い
鎮静や一時的な鎮静(と、言うより経口摂取が出来ない方に
眠剤を使う感覚に近いかもしれません)で殆ど問題ないはず
です。よく使う方法は、ダイアップ座薬6mg、ダイアップが
合わない場合はセレネース0.5~1A。これで随分楽に夜を
過ごせます。

【おまけ】

尚、深いセデーションについて持続皮下注が無理なら、
ワコビタールが良いです。

初回200mgを挿肛した後、100mgを1日2回程度で使用
深い鎮静が得られたら多くは50mg1日1回

これで殆ど問題ないと思います。もちろん体重や素早い鎮静
を考慮されているなら適宜増減、他の鎮静剤を併用します。
ちなみに点滴していると、十分な鎮静が出来ないことも。