Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

一般の方向け

『1000の夜を駆ける: ーわたしは統合失調症』

本日は本の紹介です。統合失調症を発症された著者 『しらたま』さんが、これまでの経験や想いを綴った漫画です。 これは2012年に描かれた作品ですが、AmazonのKindle Unlimitedに 登場したのを発見し読ませて頂きました。1000の夜を駆ける: ーわたしは統…

ホスピス医を目指す私が言われた言葉

医師になる前から緩和ケアに興味があった私は、がんという 病気を学ぶために消化器内科が良いと考え入局しました。 消化器は、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、 胆嚢・胆管がんなど悪性疾患の患者さんが多いのが理由です。 しかし、医局の…

介護職員への暴力を黙認すべきではない

高齢者や認知症の患者さんは、心身ともに衰えた「弱者」 であり、その人権が侵され易いため、これを守ることが 大切であるとしばしば指摘されます。これはその通りです。しかし同時に介護・支援する側の家族や介護職員・看護師の 人権を尊重すべきだ、という…

寄り添うことは悩むこと

2017年3月14日に開始したこのブログですが、明日で 1年を迎えることになります。敢えて有料のブログを選んだ ことで、「書かないともったいない」ような気分になり、 結果として私にしては頻繁に記事を更新出来たのではないか と思います(笑)。ブログを書…

「それでも良いですよ」~私の考える良い在宅医

いつも参考にさせて頂いている、いまいホームケアクリニック の今井先生のブログ記事から。「在宅医に求められる資質」に ついてのお話です。imai-hcc.com私も全く賛成です。在宅医に求められる資質は、病院医とは 少し異なります。いえ、究極的には人間とし…

『痛い在宅医』

2017年12月に出た、長尾和宏先生の著書。 在宅療養を、特に看取りを考えている御家族に必須の本 ではないかと思います。痛い在宅医作者: 長尾和宏出版社/メーカー: ブックマン社発売日: 2017/12/21メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見…

スパゲティ症候群とクオリティ・オブ・デス

「ピンピンコロリが良い」「眠るように死にたい」と多くの 方がおっしゃいます。しかし「ピンピンコロリ」で死を迎える ことが出来る人は5%に過ぎない、と在宅医の長尾 和宏先生は おっしゃっています。「スパゲティ症候群」という言葉を御存知でしょうか。…

オンライン診療の可能性

医療関係者の方は既にご存知の通り、今回の報酬改定から オンライン診療にルール付けと保険点数が設置されました。 ただ、定められた点数は非常に微々たるもので、手間と初期 費用、維持費を考慮すると完全にペイしないものでした。例によって、今井先生のブ…

医療ドラマと実際の医療

MTproに登録をしている医療関係者以外は読めない記事かも しれませんが、こんな記事がありました。medical-tribune.co.jp曰く、 患者の死亡率はドラマでは22%と、現実の7%の約3倍だった(P<0.0001)。また、救急診療部からそのまま手術室に搬送された患者…

「より良い医療」を受けるために

日本の医療の特徴は、国民皆保険、フリーアクセスと されています。「医療費が高かった」という声も聞き ますが、一方でかかった金額の7~9割は公費で賄われ ています。最近、情報提供書なしで総合病院を受診 すると窓口で一定額の負担を求められるようにな…

「どちらが、本人がより幸福か」という軸

胃瘻造設に当たり、多くの患者さんは自分の意思を表現 出来る状態にないため、家族が決断を迫られることが しばしばあります。「延命」か「実質的な患者の死」を 限られた時間の中で決断しなければならない苦悩は 計り知れないものがあります。また、少し異…

「身体拘束ゼロ」が生む悲劇

一昨日、Twitterで想いのほどを散々呟かせて頂いたのですが…。 私はもともと、「身体拘束を出来る限り減らす」は大賛成ですが 「ゼロ」という考えにはかなり抵抗があります。 そういった考えは過去にも、kotaro-kanwa.hateblo.jpまた、kotaro-kanwa.hateblo.…

終末期の輸液

本日は『いまいホームケアクリニック』さんのこちらの記事 から。imai-hcc.com書いてある内容は、私個人は全く賛成です。 ただ、少し自分の意見を加え、書かせて頂こうと思います。少しずつ衰弱された患者さんが、口から水分を摂れなく なった場合、多く余命…

施設訪問診療の終焉か

昨日、中医協から2018年度の診療報酬改定の個別項目が発表 されました。細かい点数配分はこれからですが、訪問診療は 大きな節目を迎えることになりそうです。個人的にはだいたい 要件を満たしていますので、今回は大きな影響はないと 思っていますが…。具体…

VSEDに対する私見

新城先生が書かれた、VSED (voluntary stopping eating and drinking) に関する記事が、Twitterで話題になっていました。headlines.yahoo.co.jpVSEDとは患者さんが自ら飲食を止めることによって死期を早める 行為を指します。上記の記事では、新城先生が10年…

『身体拘束』を本当に減らすために必要なこと

2018年1月11日放送のクローズアップ現代で、『身体拘束』の特集 がありました。見逃してしまった方は、サイトで内容を閲覧する ことが出来ます。www.nhk.or.jp拘束の存在もあまり知らない一般の方々への問題提起という 意味では大変意義のある内容でしたが、…

ドキュメンタリーに登場する「大門未知子」

現実の医療界に、大門未知子(ドクターX)やブラックジャック はいません。敢えて言うまでもなく、「失敗しない医者」など 漫画やドラマにしか出て来ないことは子供でも知っています。しかし、「ノンフィクション」「ドキュメンタリー」を謳う テレビ番組も…

丸山ワクチンについて言いたいこと

最近テレビで丸山ワクチンについての放送があったようで 末期がんの患者さんからワクチンについての質問・問い合わせ がありました。丸山ワクチンについて聞かれるといつも独特な 気持ちになります。「手伝って」と言われれば期待に沿いたい と思いますが、…

予め、自分で決めることの重要性

ここのところブログで続けて「医師任せにしてはいけない」 ことについてお話して来ました。診療をしていると、 「素人なので分かりません。先生にお任せします」 という方が必ずいらっしゃいます。御高齢になるに従い 比率は増えると思います。 一見、主治医…

「すがる」こととその対象が生む悲劇

今日は前回の続きです。元になる記事は、ex.yahoo.co.jp科学的根拠に乏しい代替療法にすがった結果、たくさんの 金銭を失ってしまう患者さんがいます。場合によっては、 完治の可能性すらある方でも、残念ながらそのチャンスを 失ってしまうこともあります。…

「緩和ケアも治療です」

今日はこの記事に沿ってお話させて頂こうと思います。ex.yahoo.co.jpこの、背を向けた医師と右側から伸びるたくさんの手、 とても印象的な、象徴的なイラストですね。進行再発がんで化学療法を行っても、殆どの場合がんを完全に 治癒させることは出来ません…

『安楽死で死なせて下さい』

あまり気持ちの余裕がなく、少し更新が滞っておりました。 今日は『おしん』『渡る世間は鬼ばかり』等で有名な 橋田 壽賀子さんが書いた本の紹介をさせて頂きます。安楽死で死なせて下さい (文春新書)作者: 橋田壽賀子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2017…

『食べてうつぬけ』

前回お話したように、特に閉経前の女性のうつ、パニック、 また成人のADHDと診断されるような方には栄養療法は かなり効果的な治療のひとつです。本日ご紹介する本は このこころに効く栄養学のエッセンスが詰まった本に なります。漫画やイラストが多いのは…

分子栄養学はオカルトか

以前もお書きしたように、自分自身に糖質制限を試し効果が あったので関連書籍やネットでの情報収集をするようになる と、あちこちで『分子栄養学』に出会うようになりました。 分子栄養学は『分子生物学』を土台とした栄養学で、その 土台の部分で糖質制限…

痛み治療の先にあるもの

永寿総合病院で病棟・在宅の緩和ケア治療で活躍されている 廣橋猛先生の書かれた記事を御紹介します。http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/hirohashi/201711/553443.html (前略) 切除不能な胃癌を患い、現在は化学療法中です。食べると胃が…

平穏死ー患者は本当に苦しんでいないのか

長尾和宏先生のブログにこんな記事がありました。blog.drnagao.com長尾先生は在宅医療の一線で活躍されている先生です。 たくさんの本を書かれ、あちこちで講演を行うなど 在宅医療普及に向けた活動も精力的に行っておられます。 胃瘻の本などはとても良く書…

『私の脳で起こったこと』

私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活作者: 樋口 直美出版社/メーカー: ブックマン社発売日: 2015/07/10メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る本の存在は知っており、以前から読みたいと思いながら 読んでいなか…

糖尿なのに脂質(あぶら)が主因!

糖尿なのに脂質(あぶら)が主因!―糖尿病とその合併症予防の脂質栄養ガイドライン作者: 奥山治美出版社/メーカー: クオリティケア発売日: 2017/08/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る2017年8月に、“あの”日本脂質栄養学会から出た本です。 主な内容…

韓国で「尊厳死」の選択が可能に

10月23日より、韓国の一部の医療機関で「尊厳死」を選ぶことが 出来るようになりました。試験期間を経て、来年2月から本格的 に法が施行されるとのことです。私は尊厳死法は賛成です。過剰な治療により苦しみ続ける患者さん、 そして介護者(家族)を本当に…

『ニルスの国の認知症ケア』

ニルスの国の認知症ケア―医療から暮らしに転換したスウェーデン作者: 藤原瑠美出版社/メーカー: ドメス出版発売日: 2013/08メディア: 単行本この商品を含むブログを見るはじめにお断りしておきますが、2013年出版の本です。 内容に感銘を受けたので紹介させ…