Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

がん医療の狭間

東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンターの大津秀一
先生のブログから。

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抗がん剤治療の継続が困難になると、これまでの担当医の
外来に通院出来なくなる事がしばしばあります。がんの
治療医は多くの治療中の患者さんを担当しており、その後
の緩和医療に時間を割けない、というのが一番の理由です。
ある程度仕方のないことだと思いますが、この事実は事前
に知らされていない事も多く、患者さんは「見捨てられた」
と感じ途方に暮れてしまいます。

一方、この時に緩和ケアの紹介がルーティンに行われることも
多いのですが、緩和ケアの外来は『緩和ケア病棟への登録』を
することが目的で、登録した患者さんを外来で定期的に診て
色々な相談にのってくれる事は少ない
です。これは緩和ケア
病棟を持つ病院もまた物理的な制約があり全ての登録患者さん
を引き受けるということは難しいのです。

また、中には抗がん剤治療を断り、主治医との関係が悪く
なり通院が出来なくなってしまう患者さんもいます。
『免疫療法』を謳うクリニックの門を叩く患者さんも
いらっしゃいますが、一部の例外を除き本当に悪くなって
しまった時に、これらのクリニックが緩和まで親身に治療を引き
受けてくれる事は稀有
で、多くの患者さんは直前で匙を
投げられてしまう事が多いです。

抗がん剤治療の継続が難しくなった患者さん、あるいは
このような標準治療を拒否した患者さんのホスピスまでの
緩和ケアを引き受ける医療機関がないことは以前より問題視
されて来ました。以下は2012年に私が書いたブログの記事
ですが、この問題は現在でも改善されることなくそのままに
なっています。

blog.goo.ne.jp

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今の状況では、この狭間の医療は『訪問診療』がベストだと
思っています。訪問診療医には緩和ケアの知識に長けた
医師が割合に多くおり、また患者さん一人当たりに時間
をかけることが可能です。例えば大津先生のブログにある
ような、咳・痰・睡眠障害・せん妄・食欲不振等の症状
でいちいち病院を受診し診察を待つことが負担になる事も
多いと思いますし、夜間や休日に体調を崩した時に相談
出来る場所があるのは大きな助けになるはずです。
緩和ケア病棟との連携があれば、尚更心強いと思います。
是非ケアマネージャーに訪問診療の相談をして頂きたいと
思います。