Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

施設系訪問診療の難しさ

昨日、「施設系訪問診療のピットフォール」という勉強会
に参加させて頂きました。その中でとても共感したことは、
施設の「担当者」、これは主に看護師さんですが時に
施設長さん等も含みますが、要するに「本人」と「家族」
以外の担当者が介在する難しさ
です。これは病院や、個人
の在宅診療ではあまりない問題です。

具体的には、報告をして下さる職員により、同じ事象に
対する報告が異なる
のです。これはある意味当然で、
人間は誰しも人生経験や価値観などを基準に物事を判断
し、そこに自らの感情や感想を加えて他者に伝達して
います。しかし、担当医としてはどの報告を基準に、
治療を考えたら良いか悩むことがあります

医師は2週間に一度程度、一人の患者さんに割ける時間も
多くはないですし、多くは白衣を着た医師の前で見せる
患者さんの顔は普段とは異なるので、それだけでの判断
や評価は逆に問題を見誤る可能性すらあります

例としては、BPSD。入居者の方の介護抵抗や暴言などが
あります。当然のことながら人間には相性や好き嫌いが
ありますので、患者さんも特定の職員に対して強く当たる
こともあるでしょう。これに対してある薬を使うことに
なったとして、その薬の評価を尋ねても当然職員により
評価や報告内容が違って来るのです。

これは仕方のないことで、勉強会でお話された先生も
対話を繰り返していくしかないとおっしゃっていました。
もちろん、いつも特定の職員から話を聞くことで
同じ「物差し」で判断出来るわけですが、それはそれで
評価が偏ってしまう可能性があります。

理想は、施設で話し合いの場があり、皆の意見を総括
し、医師に伝えてもらえれば助かるのですが、忙しい
介護施設ではそれはかなり難しいでしょう。

なかなか解決策を示せる問題ではないですが、最低限
必要なことは、報告をする職員も担当医も、「自分の
目で見る患者さんが全てではない」
という認識を持つ
ことです。可能な限り、周りの他の人と考えや気持ち
を共有することで、主観と客観を分けて患者さんを
みることが出来るのではないかと思います。
これは患者さんに対してプラスなだけでなく、
それぞれに新たな気付きや抱えるストレスの軽減に
なり得るのではないでしょうか。

最後に、関連する内容としてもしお時間があれば
こちらもお読み頂ければと思います。

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