ACPの診療報酬点数化
エムスリーに、ACP(アドバンスケアプランニング)の普及には
診療報酬化が必要だ、という提案が、全日本病院協会の総会で出た
ようですが…正直「またか」という想いで私は大反対です。
ACPについて、最近私はこんな記事を書きましたが、
kotaro-kanwa.hateblo.jp
まさにACPの『終末期相談支援料』化の予感しかしません。
上記の記事でも書いた通り、ACPは『プロセス』が大切ですが、
このような診療報酬によって無理に導かれたACPでは、
一方的な医療者からの説明に対して同意書をとる、という
程度になるのが関の山です。むしろ、形骸化したACPをみて、
「あぁ、こんなものがACPか」
と一般の人たちが思うなら、かえって逆効果かもしれません。
確かに、医療者にとってACPは時間もかかり、精神的な負担も
多い地道な作業です。それだけやって報酬がないのか、という
考えも分からなくもありません。しかし、いい加減気付くべき
です。残念ながら医療費の総額が増えるわけではありませんから、
ACPに点数がつくということは、他の診療報酬が削られるだけです。
そしてかえって、その『ACP加算』か何かをとるための、面倒で手間
な事務作業が増える、という結果になるでしょう。良心的に時間を
割き、ACPに協力している医療者の足を引っ張ることにもなりかね
ません。
私は忙しい医療者の負担軽減という方向でも議論をして欲しい
と思います。ひとつは病院や診療報酬とは切り離した相談場所
の設置です。現役を退いた医師や看護師のほかに、法律家や
宗教家、AIの活用があって良いと思います。
医師は医療判断の専門家であり、もちろん法律やカウンセリング
の知識やスキルがあるに越したことはないかもしれませんが、
それを全て、ただでさえ多忙な医師に任せ良い結果を期待する
のは無理があります。
そして何より、ACPの重要性を医療を受ける立場の患者さん、
家族がその重要性を認識し、いかに自分達にとって必要で
役に立つものなのかが分からないと、いくら医療者が努力
したところで良いものが出来ないのは目に見えています。
啓蒙活動も含め、多職種の協力が必要です。本来のACPに
おいて恩恵を受けるのは医療者ではなく、他ならぬ患者さん
自身なのですから。