Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

これからの訪問診療制度に望むこと

CBnewsで、『「医師の高齢化」は在宅医療のブレーキに?』という
タイトルを見掛けました。有料記事(月4600円!)なので読めません
でしたが、2015~2017年は在宅訪問診療料のレセプト数はそれまでの
増加から横ばいに転じているとのこと。それはそうでしょう。
少なくとも現行の訪問診療制度では。

団塊世代後期高齢者となる2025年。
現在年間110万人程度の「看取り」が160~170万程度に増加する
と予想されています。一方、医療費と医療者の不足から、急性期
病院は今後ベッド数を減らしていくことになっており、不足分を
「在宅医療」でカバーしようという考えのようです。にも関わらず、
訪問診療が伸びないのは何故か。

2006年の診療報酬改定で「在宅療養支援診療所」が創設され、今年
で13年目になります。国はこれまで通り「高い診療報酬で誘導」と
いうやり方で在宅医療を推進して来ました。しかし、いい加減この
方法は止めた方が良いと思うのです。
案の定、報酬目当てに在宅医療に参入し、荒稼ぎをする医療機関
出現。これに対し、国は施設の在医総管・特医総管をいっきに75%
減額という壮大な「梯子外し」をしてしまいました。おまけに
レセプトも年々複雑・煩雑化。こうした状況に、「普通の」医療機関
は振り回され、困惑しています。
診療報酬目当ての医療機関はメリットがないと分かれば撤退し他に
移動しますし、なかなか地域に根差したクリニックにはなりにくい
と思うのです(もちろん、そうではない医療機関もありますが)。

長い期間、自分の外来に通ってくれた患者さんが通院出来なくなった
時、「代わりに自分が訪問しよう」と思う開業医は多いのではないか
と思います。患者さんにとっても、きっとその方が安心という方も
多いでしょう。国は高い診療報酬をちらつかせて訪問診療の新規参入
を煽るのではなく、このような地域のかかりつけ医が安心して訪問
診療が出来る仕組み作りをやって頂きたいと私は思います。

確かに開業医は高齢化が進んでいます。一人で24時間365日の対応は、
特別な人を除いては、やがて無理になるでしょう。真面目にやれば学会
も行けない、旅行も行けない。お酒も飲めない。私ももうすぐ50ですが、
今のまま頑張れるのはせいぜいあと15年くらいではないかと思います。
個人的に求めたいことは、各医師会などが主導し、訪問診療参入の
支援(煩雑な届け出書類の代行など)、電子カルテの統一化・整備、
当直・強化型連携システムの構築の手伝いをやって頂きたい。不可能
ではないと思います。いつまでも若い勤務医だけに訪問診療を頼って
いくだけではなく、その若い先生が高齢になるまで安心して続け
られる在宅医療・訪問診療であって欲しい。いや、そうでなければ、
在宅医療の将来は暗いと言わざるを得ないと思うのです。