Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

医療連携の難しさ

昨日は、地域の医療・介護職の集まりに参加しました。
毎回活発な情報・意見交換があるのですが、昨日は
医療連携の難しさについて、でした。

在宅をやって8年になりますが、医療連携については一貫して
ほぼ全員に共通した悩みだと感じています。たまに悩みが
ないという人もいますが、それはきっと周囲がその分悩んで
いると思ってほぼ間違いない
でしょう。

何故難しいか、その難しさを一言で言えば人と人との「相違」
です。医療者同士でも、価値観や信念、仕事に対する考え方
などが大きく違うからです。例えば仕事に対する「情熱」の
温度差
。私などは24時間携帯を持ち連絡を受けるのが
当然の生活をしていますし、休みでも時間外でも大切な連絡は
むしろすぐに頂きたいと思う方ですが、パートでなくても
休みは休みとメリハリをつけた生活を望む方も当然多いと思います。
大学病院の先生や看護師さんは、エビデンスに基づいた「正しい」
医療を優先する傾向にありますが、訪問診療・訪問看護では
優先事項が患者さんや家族の生活や幸福であったりします。

連絡の手段についても毎回話題に上がりますが、これもそれぞれ
が好む連絡手段が異なり、どの方法も一長一短だからでしょう。
一般には電話・FAXがよく使われます。FAXの方が忙しい相手を
配慮した良い方法とされていますが、私は電話の方が相手が
求めていることが分かりやすく返信の手間もないので有難いです。

最近はSNSのような手段も注目を集めています。
大田区では医師会主導で『カナミック』が広まりかけましたが、
利用者さんの登録が非常に(!)面倒で、表示も少し見にくい
ので、結局あまり使う人がいなくなっている状況です。
『MedicalCareStation』や『チャットワーク』はこの点かなり
簡便で使いやすいですが、やはりどれも登録が必要で、
みんなが同じツールを使わないとかえって面倒かもしれません。
また経験上、ツールに不慣れな方には使ってもらえないことも
当然あります。

結局連携を深めるには相手がどういった人かが分からないと
余計な気を遣ったり遣わせたり、怒ったり怒らせたり…と
いうことになります。そうそう、この「怒る」というのは
最低に近い行為です。たぶんコミュニケーションを最も
阻害する因子の一つです。どうしても怒らなければいけない
問題もあるでしょう。患者さんの危険や命に関わることなど。
しかし殆どは勘違いや機嫌の良し悪しなどの些細なことです。

そういうことで、私なりの結論としては医療職・介護職が
出来るだけ顔を合わせ相手の人となりを理解することに
尽きると思います。そこまでの関わりが苦痛な人も当然
いますが、なるべく足を運び顔を覚え、覚えてもらう。
これを意識しやっていこうと思います。冒頭に『相違』
という言葉を使いましたが、この違いの認識こそが
連携の第一歩
ではないかと思っています。