Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

「本人には言わないで下さい」

がん等の病気が判明し、説明が必要な時に、
我が国はまず、本人ではなく家族に告知をする傾向が
あります。特に患者さんが高齢者である場合、その
配偶者と、お子さんがいらしゃる場合にはお子さんを
一緒に呼んで病気の事実を伝えることが多いです。

そうすると、現在は昔ほどではありませんが
「かわいそうだから、本人には伝えないで下さい」
という方がまだまだいらっしゃいます。
このブログでも、告知について様々な方向から検討を
しています。自分で言うのも何ですが興味深い内容だと
思いますので時間があったら是非お読み下さい。

kotaro-kanwa.hateblo.jp

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何事にも良い面と悪い面があります。
確かに、告知が良い結果に結び付くとは限りません。
何が何でも告知を、という立場でもありません。

しかし、私がどうしても申し上げたいことは、
御本人が知りたいと言っている以上は
「悪い結果」がもたらされる可能性があったとしても
事実を告げるべき
だと思っています。
それは「自分で決める権利」こそが人生において最も大切
なことのひとつであるという考えからで、それは正確な
情報なしでは決して実現が出来ない
からです。

もう一つ「告げる」「告げない」以上に大切なことは、
周囲がその中で精一杯の関わりと援助を続けること

最近の医療者にみられる、「告知した、ではさようなら」
では告げないよりも悪いかもしれません。

「告げるのが不幸」だと考えておられる方にひとつお伝え
したいことは、「告げないことは幸福か」ということです。

有名なハーバード大学の『成人発達研究』、これは700人
超の人々を80年に渡り追跡し、「良い人生は良い人間関係」
であると結論、逆に「健康と幸福に最も悪影響を及ぼす
のは孤独であった」
としています。
※詳しく知りたい方はググってみて下さい。

例えば、がんの患者さんの場合「胃炎」とか「膵炎」等と
告げ、「大丈夫」等ということは本人のためを思った
としても「嘘」です
。また、「矛盾」や「気付かれること」
を心配し周囲は徐々に遠ざかる、話をしない傾向が出て来ます。
「重大な病気かもしれない」と不安になる患者さんに
絶えず向き合い「嘘」を言い続けることはとても難しいことです。
結果、患者さんが孤独になりやすいと言えます。

一方で、「根治出来ない疾患、余命も長くない」という事実は
もちろん幸福とは言えませんが、本音で語り合い、全力
で支援してくれる家族や医療者がいることは、少なくとも
不幸とまでは言えない
と思うのです。
実際、この人生最悪のニュースを聞いても、その後に適切な
支えがあれば殆どの方は人生をより良く生きよう、と思える
くらいに回復されています。

もちろん、それでも強い決意を持って告知しない方が良い
と考える方もおられるでしょう。家族の判断で告知をしなかった
としても、確かに良好な人間関係が築けないとは決め付けられません。
繰り返しますが大切なことは告げなかった後に御本人とどう関わるか
だと思います。

人間、いつかは「死」が避けられません。
事実は変えられませんが、考え方次第で残りの
時間が変わる可能性はあるのです。

少なくとも、家族が向き合いたくないという理由で
告知を回避しようとしていないかは一度自問して下さい。