Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

「より良い医療」を受けるために

日本の医療の特徴は、国民皆保険、フリーアクセスと
されています。「医療費が高かった」という声も聞き
ますが、一方でかかった金額の7~9割は公費で賄われ
ています。最近、情報提供書なしで総合病院を受診
すると窓口で一定額の負担を求められるようになり
ましたが、それでもかかりたい病院/医師に診てもらう
ことは制限されていません。

しかし、「全てが良い」ということはあり得ません。
フリーアクセスにも問題点があることは、いまい
ホームケアクリニックの今井先生がブログでまとめ
られています。

imai-hcc.com

ここでは少し皆保険について考えてみます。

安いということは受診の回数は当然増えます(日本は
他の先進国の平均の2倍以上)し、当然外来は混みあい、
「2時間待って3分診療」と揶揄される状況を招いて
います。医師は患者の訴えを平均20秒以内に遮ると
言われますが、更に「身体に触れてもくれない」、
「電子カルテばかり見ている」と言われることも、
半日(4時間程度)で40~50人の診察をする状況であれば
ある意味当たり前だと思いませんか?

また、国民一人一人が自分や家族の健康に責任を
持たなくなることも、重大な問題だと思います。
治療が安いので、どうにか予防しよう、気を付けよう
という気持ちが希薄です。特に歯科領域などは本来、
予防がほぼ全てとも言えると思います。

医療費の問題もあります。既に40兆円をとうに越しており、
毎年数%程度膨れ上がっています。窓口の負担は少ない
ですが、その分税金で徴取されているというわけです。
これだけ医療費がかかっていても、多くの総合病院が
潰れたり大きな赤字を抱えている現実があるのですが。

昨日医療者ではない方とTwitterで少しお話をした時に、
「忙しい中でもきちんと患者の話を聞き、説明してくれる
医師もいた」という意見を頂きました。これはその通りです。
しかし、どこの世界でも人格者を例に出し、「こうなれ!」
と言うだけでは実現はしないでしょう。もう少し時間があれば
どの医師の心にも余裕が生まれ、より良い診察が出来ることは
殆ど疑いの余地がありません。

そして上述のように、話を聞かないのは医師の問題だ、という
考えになりがちですが、これだけ連日医師の過労死や過重労働
の実態が報道されていても、それでも患者さんの話を聞くために
割く時間がない、という状況は、やはり異常だと思います。

私は訪問診療をしています。だいたい一人の患者さんに15~20分、
必要であれば30分くらいの時間を持つことが出来ます。さすがに
これだけ時間があると問診も診察も丁寧に出来ますし、患者さん
の生活史、内服の調整など考える余裕があります。
私だけでなく、時間がとれれば皆これだけのことが出来るのです。
この点訪問診療は恵まれているな、と私はいつも思っています。
もちろん、訪問診療もいつまでもこのような状況が許されるとは
思いません。徐々に「数をこなす」ことが求められているからです。

私は、医療は「薄利多売」、「質より量」であってはいけない
と思っています。しかし、高齢者・患者が増えていく中で、
医療はますますその傾向を強めざるを得ないでしょう。
つまり、このままではますます医療の質は落ちる、という意味
です。

私は良い医療(介護も同じです)を受けるためには、国民も
「健康や制度、医療のメリットや限界に対する知識
(リテラシー)を持ち、医療を上手に利用する。また医療制度を
守るためにお互いに協力出来るところは協力する」
、という
能動的な姿勢が必要になっていると思っています。