Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

糖尿なのに脂質(あぶら)が主因!

糖尿なのに脂質(あぶら)が主因!―糖尿病とその合併症予防の脂質栄養ガイドライン

糖尿なのに脂質(あぶら)が主因!―糖尿病とその合併症予防の脂質栄養ガイドライン

2017年8月に、“あの”日本脂質栄養学会から出た本です。
主な内容は糖尿病の病態と絡め積極的に摂取すべき油脂と
避けるべき油脂がその理由と共に紹介されており、また
スタチン、ワーファリンで糖尿病を誘発する、という
内容になっています。ワーファリンは重症糖尿病では禁忌
であり、スタチンで2型糖尿病発症のリスクが高くなることも
周知の事実です。

本著は統計・生理学的なかなり専門的な内容となっています。
例えばオレイン酸、リノール酸などの油脂が、どのような
遺伝子を発現し、どのような酵素に影響を与え、結果として
身体にどのような影響がでるか。分子生物学的な深い考察が
なされおり興味深いです。

皆さんご存知の通り、2010年に日本動脈硬化学会の
ガイドラインに対して「コレステロールは高い方が長生き」
等の提言を発表し、有名な『コレステロール論争』が
ありました。とは言え、あまり噛み合った議論とはならず、
一般の患者さんにはもやもやしたものを残しつつ、収束
してしまいました。

この脂質栄養学会の提言について、糖質制限で有名な江部
先生は「結論は出ていないが一貫性・整合性がある」と
して一目置くスタンスのようです。一方、北里研究所病院
糖尿病センター長の山田先生は「仮説の段階であり提言は
時期尚早」というお立場です。

私も今後彼らの考えが少なくとも部分的には正しいことが
明らかになって行くのではないか、とは思っていますが、
確かに多くの主張はまだ「仮説」であり検証は全く行われて
いません
。また、自身の理論に反するところは全て「ねつ造・
陰謀」という結論であり、本著でもそうですが自説を裏付ける
引用文献の多くが自前の「脂質栄養学会」であったり、
「浜六郎」ばかりであったりするところも何だかなぁと思って
しまいます。

ところで、先程も述べたように江部先生はかなり脂質栄養学会を
評価しています(江部先生の本は多く読んでいるので間違い
ありません)が、脂質栄養学会は糖質制限をやや軽視して
いるのが本著を読めば分かります。序盤で、「糖質摂取が
増えて糖尿病が増えた」とする江部先生の考えを「摂取が
増えたのは脂質で、糖質摂取は50年で4割減少している」

否定。「糖質制限信奉者の主張は…」等とややdisった表現もして
いますし、習慣的に糖質制限を続けていたスウェーデンの
女性は寿命が短い、とも書いています。ちなみに江部先生
が勧めているオリーブオイルも、本著では「危険」とはっきり
書いています。糖質制限を栄養学の基本とする多くの方は
江部先生に限らず脂質栄養学会の主張を支持していること
が多いのですが、実は少々立場が違うように思います。

最後に脂質栄養学会は慎重さに欠ける印象こそありますが、
『The lower,the better』という極端な低コレステロール
主義
という考えに一石を投じたのは確かで、私達は物事を
鵜呑みにするのではなく自分で情報を集め考え、実践する
ことが大切だと思いますし、自分の身体は自分で責任を持つ
という気持ちが芽生える切っ掛けになるならそれは彼らの
功績と言えるでしょう。