Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

『カロリー制限の大罪』

まず、私自身の糖質制限の報告です。2017年5月より、正確に
お書きするとまずカロリー制限で開始し、7月よりロカボ
(以下参照)に切り替え、ここ1~2ヵ月はだいたい9kg減
で落ち着いています。だいたいとお書きしたのは、測定する
タイミングで随分体重が異なるからで、平均すると9kgと
いうことです。ロカボは結局、カロリーを制限することになる
から痩せるんだろう、という意見もありますが、私は全然違う
と思います。カロリー制限は過去に何度もチャレンジしている
からで、辛さも効果も、そして体力も全然違います。
体重計にのるたびに、「増えていたらどうしよう」という
感覚もまるでなく、ただここ最近採血は受けていないので
また結果が出たら御報告させて頂きます。

さて、2017年6月に発売された、山田悟先生の書籍の紹介です。

カロリー制限の大罪 (幻冬舎新書)

カロリー制限の大罪 (幻冬舎新書)

山田悟先生は北里大学病院の糖尿病センター長をされている
先生です。2013年より糖質制限の効果を、中でも先生は
緩やかな(1日70~130g程度の)糖質制限を推奨しています。
この緩やかな糖質制限を、1日60g以下に制限し、ケトン体の
産生を期待するややストイックな糖質制限と区別して
『ロカボ』と表現します。

ちなみに、ダイエット効果を期待するだけならロカボでも
強い糖質制限と同じくらい効果があるようです(本文を
参照)。楽しく無理なく続けられる方が良いという考え
も賛同出来ます。

ところで過去の山田先生の著書では、カロリー制限に寿命延長
効果があるとするアカゲザル研究を踏まえ、カロリー制限を
第一としながら、実行出来ない方々へのオプションとしてロカボ
を勧めておられました。

しかし、本著では上記アカゲザルの研究の後日談、その他
これまで実はあまりなかったカロリー制限のエビデンス
等を踏まえ、カロリー制限はとうてい患者さんに勧めること
の出来る方法ではなかった、という結論に達し、このことを
詳しく書いておられます。カロリー制限では、深刻な栄養の
不足をもたらす危険がはっきりとして来たのです。

私が山田先生に絶対の信頼を置く点は、知識の多さはもちろん
のこと、非常に慎重な立場でおられること、そして御自分の
考えと異なる研究についても、「こういった考えもある」と
紹介が出来、また長年信じていた事実も違うと分かれば「間違って
いました」ときちんと言えることです。これは当たり前のよう
でいて、なかなか出来ることではないと私は考えています。

山田先生は、糖質を60g以下に制限するケトジェニックダイエット
(江部先生の言うスーパー糖質制限)にも触れ、確かに糖尿病
専門医の中でも「ケトン体はやはり良いのではないか」という
流れにはなりつつも、一方で胎児奇形や突然死についての報告
にも触れ、決定的なことは言えないというお立場です。

脂質の摂取についても書かれています。最近よく悪いとされて
いるω6系の多価不飽和脂肪酸については心臓病の発生や死亡率
について上昇する、相関がないと両方の研究結果があり、一概
に結論は出せないとおっしゃっています。その他トランス脂肪酸
やMCTオイルについても、偏りのない御意見が書かれています。

さて、栄養学、食事制限はとても思い込みが強くなる分野だと
思っています。人間にはもともとそういった性質があるのですが
傍で見ていると自分に反対する意見は強く非難し、一致する
意見は殆ど批評を加えず鵜呑みにしてしまう傾向があります。
まずそういった自覚があるとないでは大違いですし、御自分の
意見と一致するように見える内容こそ、本当は慎重に吟味する
必要があるのではないかと思います。色々な意見が飛び交う
栄養学の分野で、広くコンセンサスが得られている部分と
そうでない部分を慎重に見極めたい
、という方には一番
お勧めの本です。