Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

希望

川崎市立井田病院の、西先生のブログの記事から。

tonishi0610.blogspot.jp

西先生は緩和ケアを専門にされているという理由もありますが、
とても私と考えが近く、「本当にそうだよなぁ」と思うことが
多くあります。大学の同期が以前西先生と同じ病院に勤めて
おり、話を聞いたことがありますが、ブログイメージ通り
勉強家で、患者さん思いで優しい先生のようです。

緩和ケアに限ったことではありませんが、
患者さんの「希望」って何だろう。
私も、ずっと考えて来ました。
患者さんの希望に沿うことはとても重要なのは
間違いありません。
しかし同時に、「希望するなら何をしても良い」
も明らかに間違いです。

その分かりやすい例が、西先生も挙げておられるがん治療
の「免疫細胞療法」です。理論はともかく、わずかな例外
を除き、費用に見合う効果はありません。希望したから、と
何百万もする効果の怪しい治療をするのは誠実なことなの
でしょうか。免疫細胞療法に対する私の考え、スタンスは
西先生とほぼ同じなので、ここでは敢えて書きません。

しかし、ここからは西先生とは意見が違うと思うのですが、
私は『代替治療』そのものについては医療者はもう少し
寛容であって良いと思っています。問題は、代替治療
そのものではなく、立場の弱い患者さんや家族の足元を
見て高額な商品を売りつける医師や業者がたくさんある
こと、つまり「騙し」です。
また患者さんが失うものの大きさです。

逆に、抗がん剤が「有意に生命予後延長」という「有意」
時に「一ケ月半」等と、患者さんの期待しているものと
大きく異なる
ことがあり、個人的にはそちらも同じくらい
問題だと思っています。患者さんは治癒、もしくは年単位の
効果を期待して辛い治療に耐えている、ということが
今でも多くあり、それは患者さんが失うものはやはり多く
考え方によっては、代替治療でキノコを食べたり軟骨を
食べたりするよりも、ある意味もっと有害かもしれません。

そして、多くの医師は(勤務医なので)直接患者さんから
料金をとることはしませんし、恐らく騙すようなことは
しませんが、意識するしないは別にしても「自分の考えに
従わないなら診ない」という、これはこれで弱い立場にある
患者さんや家族を「脅す」ようなことをしている
かもしれません。

私が考える理想の状態は、患者さんと医師が対等であり
患者さんは自分の病状と、治療の効果と限界を医師同様
に理解している
こと。そのうえで、受けたくない
治療は受けずに済み、「これは偽りの希望かもしれないけれど、
受けてみたい」と納得して受ける代替治療があるならば、それも
責められずに選択肢に入れて良いこと、です。
老い、不安に苛まれ理解し決断が難しい状況にある患者
さん、御家族も多くおられます。しかし、そこは周囲が
易しく(優しく)時間を掛けて理解を助けること、
そしてたとえ残酷な現実であっても誠実に伝え、良い
関係を築き続ける努力をすること。本当の意味での希望
は、自分らしく考えられるようになって初めて出てくる
ものではないかと思います

私はこのような医療者の態度は、医学で治癒不能と判断された
患者さんには、「科学的に正しい医療」を行う以前に大切な
ことだと思っています。