Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

医療用麻薬の依存について

緩和ケア医、大津秀一先生のブログに、アメリカにおける
医療用麻薬乱用についての記事が出ていました。

ameblo.jp

大津先生がおっしゃるように、アメリカは医療用麻薬使用
の事情が違い過ぎるので鵜呑みにしない方が良いのはその
通りだと思います。

医療用麻薬では、依存が起こりませんか?

とYesかNoかで聞かれれば、絶対に起きないとは断言は
出来ないので、Yesになります。

しかし、だからと言って
「なんだ、じゃあ危険じゃないか」
という思考はあまりにも短絡的です。
確率で言えば蕎麦を食べて亡くなる方がいますが、
蕎麦は全員にとって危険でしょうか?
車に乗って亡くなる方が毎年10000人弱いますが、
危険だから車に乗らないという方が
どれだけいるでしょうか?
依存ということではアルコールや煙草の依存の方が
より深刻ではありませんか?

「依存」という言葉は、「身体的依存」と「精神的依存」を
含みますが、いずれにせよ「止めたくても止めることが出来ない」
場合に使います。がんの場合、オピオイドを止めましょう、
というケース自体がそれほどないので、「依存」が問題とならない、
という面は確かにあるでしょう。定期内服では、オピオイドが
身体から切れる状態にはならないので、依存が形成されているか
分からないじゃないか、と言われればそれもそうかもしれません。

しかし、オピオイドを何らかの理由で中止にした方も何人も
経験していますが、中止後依存が臨床的に問題になった経験
は一度もありませんし、聞いたこともありません。

よく言われるように、がんの痛みがあるという条件で、
「既に確立したオピオイドの使用法に従って使う」のであれば、
オピオイドの依存が問題になるケースは極めて稀
である事は確か
です。

ごくごく稀に起こる「依存」を恐れ、それが理由で避けられた
がんの強い痛みを経験しなければいけないのであれば、それは
私にとっては先程の蕎麦や車の例と同様に、どうなのかなぁ…
と思ってしまいます。

しかし、確かに慢性疼痛ということになると話は少し変わって
来ます。慢性疼痛に関しては、がんの痛みほどオピオイドは
効かない印象です。恐らく痛みの性質が、がんの痛みよりも
複雑で、痛みをコントロールする脳の働き等も関与している
からではないかと思います。このような痛みに、がんの痛み
と同様に医療用オピオイドが有効かどうか、依存は形成され
ないかは、少し話が変わって来る可能性があると私は思って
います。また、年単位、何十年単位のオピオイドの使用は、
それ程データがある訳ではありません。

私は何度も言っていますが、オピオイドは副作用もなく、どんな
痛みもたちどころに良くなる魔法の薬ではありません。しかし
投与方法や問題は比較的知り尽くされており、安全に使える薬
のひとつです。イメージではなく、きちんと学んで判断する
ことをお勧めします。

もちろん私は無理にオピオイドを勧めることはしません。
オピオイドのメリット・デメリットを理解した上で選択しない
のであれば、その考えは尊重されるべきだと思っています。