Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

延命治療を強いるのは50代息子が多い

diamond.jp

看取りの場で、「救急車を呼べ!生き返らせろ!」と叫ぶ息子。
そんな場面からこの記事は始まります。80代、末期がんの親。
望まない経鼻栄養を強いただけでもどうかと思うところです。

傾向としては、お嫁さん任せで、なかなか介護にコミット
しなかったご長男、あるいは遠方に住んでいて、施設任せで
来たような家族に、そういう治療を望むケースが多いですね。

それまで親と、きちんと向き合えていないから、いざその時が
来た時に、子どもとしての覚悟が全くない。だから右往左往し、
本人が決して望まないことを強制する
。子どもとして、今まで
向き合ってこなかった分これからなんとかしたいから、最善と
いう名の下、望まない延命治療をさせてしまう、というのが
よくあるストーリーです

※赤字は私が勝手につけています

めぐみ在宅クリニック、小沢竹俊先生の指摘は的確です。

同じく別の記事で、やはり東京に出て仕事をしている息子が
田舎の親の看取りの頃にやって来て介護を掻き回してしまう
状況を、『東京の息子シンドローム』と書いていたことを
思い出します。ここでも、キーワードは介護に関わって
来なかった息子です。

この記事では50代のビジネスマンを想定し、「プロジェクト
マネジメント」という言葉を使い、家族で話し合い、目的
を決めて介護の計画を立てることを勧めています。目的は、
「自分の納得」ではなく、「親の幸せ」であるべきです。
仕事と同じで、明確なビジョンなくその場しのぎの対応では
全員を巻き込み不幸にするだけです。ダメ上司と一緒です。

…上司。そう。多くの場合50代息子は介護には素人にも
関わらず、声が大きく、決定権を持つ場合が多い。だから
こそ、結果を受け入れられず右往左往しているとみんなが
困ります。

このブログでも、似たような話題を何度も取り上げています。
このエントリーでは遠方に住む家族の立場を想像して書いて
います。小沢先生も触れていますが、私達も「遠方の家族」
を悪者にしたくてこのような記事を書いている訳ではありま
せん。御本人の人生を最高のかたちにするために、前もって
色々と考えて頂きたいのです↓

kotaro-kanwa.hateblo.jp

また、忙しい息子さんには最高に元気に振る舞おうとする
のも親心です。弱音は、近くにいる話しやすいお嫁さん、
娘さん、看護師さんに、という場合も多いのです。

自分の見た、限られた時間の親の姿を全てだと思わず、
いつも周りにいて介護をしている『現場の人間』の言葉
を信じて欲しいと思います↓

kotaro-kanwa.hateblo.jp

つい先日も家族間の葛藤をテーマに記事を書かせて頂き
ました↓

kotaro-kanwa.hateblo.jp


お互い、大切な家族の死という事実を前に、感情的に
なりやすいです。皆苦しく、悩んでいて、きっと親の
ことを大切に想っているのは同じ。ただ、考え方や
結論はどうしても異なるものです。大切なのはお互い
を信頼する気持ち。これなくして、重大なプロジェクトが
成功するわけがないではありませんか。