Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

在宅緩和医療、保険適応外の壁

2017年6月7日の、薬事日報の記事です。
とても大きな問題だと思うので紹介させて頂きます。

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緩和ケア領域の薬剤は保険適応外処方が多く、病院から
在宅へのスムーズな以降に支障を来たす例があるという内容。
長野県の医師を対象としたアンケートでは、

「地域の医師、在宅医の保険適応外処方に対する問題意識は強く、
症例によっては在宅に戻さなくてもよいと考えているのを知り、
切実だと感じた。大学病院の医師は保険適応外処方に関して、
在宅の医師やかかりつけ医のように苦労していないのかもしれない。
勤務医と地域医の温度差を解消しないと緩和医療の均てん化に
つながらない」と問題提起した。

とあります。

DPCや緩和ケア病棟はいわゆる包括医療制をとっています。
包括医療制では、保険適応に縛られず必要な治療が提供出来ます。
在宅でも『在宅がん医療総合診療料』というものがあり
ますが、訪問看護師の費用も包括されてしまい、一日に
複数回の訪問看護の訪問があると利用が難しくなります

高額な薬剤が加わると尚更です。
土曜から開始で一週間が単位となっており、途中で患者さんが
入院したり亡くなると請求が出来ません。この可能性を
考えるとやはり保険外適応の薬を使うのは躊躇するでしょう。
他にも同月は在医総や院内処方のも算定出来ない等、制限が多い
です。私を含め、『在宅がん医療総合診療料』を利用しない
クリニックも多いと思います。すると、「退院したらこの注射は
継続出来ません」
という事になる可能性があります。

保険適応外使用は、確かに開業医にとっては大きな壁です。
高額な薬剤が多いのに保険請求が認められない可能性、
これは勤務医の先生には理解出来ないかもしれません。
私も日々、やりにくさを感じながら仕事をしています。
また制度もややこしく在宅医療に参入出来ない
クリニックがあるのも問題ではないでしょうか
。麻薬の
注射剤の管理も本当に煩雑で、これでは在宅でモルヒネの
持続注射など夢のまた夢です。せめて使い方を
まとめたマニュアルくらい整備してもらいたいです。

ただでさえ、精神的・身体的負担の大きいがん末期の
患者さんの訪問診療。「軽い患者さんをふたり診た
方が楽で儲かる」ので、終末期を担当する支援診療所
は限られている現状があります。本当に末期がんの患者さん
の在宅療養や看取りを推進するのであれば、これは
間違いなく避けて通れない問題
です。国は是非これら
の問題を早期に、真剣に考えて欲しいと思います。

そして、京都府立医科大学病院の梅林祐子氏のこの言葉。

日本緩和医療学会のガイドラインに収載されている七つ
の鎮静剤全てが「保険適応外」
であるなど、ガイドライン
推奨薬が保険の範囲で使えない中でエビデンスを発信して
いく意義を強調した。第一選択薬のミダゾラムについては、
「国内外で有効性のエビデンスが構築されつつあるが、
リスクマネージャーである薬剤師の立場としては安全性の
検証が大切だと思っている」
と述べた。

前半は良いです、本当にその通り。確かに在宅では鎮静が
必要ない事も多いのですが、当然必要なケースもあります。
今どれだけの在宅医が自宅での鎮静が出来るのでしょう。
鎮静のため入院が必要、もしくは患者さんは自宅で我慢
というのはあまりに惨いではないですか

しかし最後の「安全性の検証が大切」という言葉は非常に
気になります。これまでも何十年も緩和ケア病棟を中心に、
もちろん在宅でも使われて来たミダゾラムの使用方法に、
今更何を言っているのか…。これ以上何を検証したいのか
分かりませんがミダゾラムひとつ使うだけで一体何年
かかるのか…。

推進する立場の人間がこれでは悲しくなると共に、私が
訪問診療医をしているうちに整備してもらえるのだろうか
と心細いものを感じました。