Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

本当は月1回でも訪問診療が可能な件

昨日、訪問診療についての基本的な説明をさせて頂き
ました。その中で、訪問診療は原則『月2回以上』
書きましたが、実は平成28年4月より月1回の訪問診療
が可能になっています。月1回でも、24時間365日の、
従来の訪問診療のサービスが利用出来る
ということです。

確かに訪問診療を受ける患者さんは症状が重い方が
多いので、月2回以上診察するように、という方針は概ね
妥当だと思います。しかし、比較的軽症であったり、
ADLは悪くても病状が落ち着いている方もおられる
ため、月1回という選択肢が出来たものと思います。
月1回の訪問診療では、1割負担の方は月3500円くらいから
訪問診療が行えるようになりました

ところが、月1回の訪問診療という選択肢が出来たことは
殆どアナウンスされていないようです。周囲でもあまり
聞きませんし、支援診療所のホームページ等を見ても、
訪問診療の条件は殆ど「月2回以上」となっています。
と、いうより「月1回から可能です」という説明を、
そもそもネット上でまだ見たことがありません

私は早い段階から月1回の訪問を始めていますが、やって
みると確かに色々な問題が起こります。まず、月1回の
患者さんは点数が低いため、クリニックの収支を維持
するためには多くの患者さんを担当する必要があります。
当然、やるべき事は確実に増えます。

次に、開始時に「比較的軽症」であったとしても、一人
で通院が難しいくらいの状態の患者さんは、ちょっと
した切っ掛けで急に体調が悪くなることも稀ではありま
せん
。すると、場合によっては「月2回訪問している
患者さんよりも月1回の患者さんの方が具合が悪い」と
いうパターンが起こって来ます。ここで月2回に急に
変えようとしても枠がなかったり、患者さん側で月2回を
なかなか納得されないケースもありました。

当たり前と言えば当たり前です。半分近い料金で、訪問
診療を受けるのに慣れてしまった方は、同じサービスで
倍の料金になるのは嫌に決まっています。
ただ、月1回か2回かを決めるのは患者さんの希望だけ
聞けば良い、という訳にはいかないので、病状が不安定
と考えられる場合は説明し納得してもらうようにはして
いますが。

ただ、私としては訪問診療を続ける目的だけに体調が安定
している患者さんに月2回訪問するのも何か違うと思いますし、
そのために重症の患者さんが受けられなくなってしまう
のも嫌なので、継続可能なうちはなるべく月1回のサービス
を続けて行こうと思っています。

推測でしかありませんが、月1回の訪問診療はクリニック
側にとってこのような難しい点が多いため、広まって
いないのではないかと考えています。