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Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

医師ならばその治療を受けるのか

救急ドラマの患者さんは殆ど元気になりますが、
現実とのギャップがあり過ぎです。
心肺蘇生を受けた患者さんで一ヶ月後に生きていたのは8%、
社会復帰したのは3%
。これでも多いと感じるのが医療者の
感覚です。メディアで奇跡ばかりをとりあげれば、それは
医療に幻想を抱いても無理はありません。

これは3年前に私がTwitterでつぶやいたものですが、
1000人以上の方々にリツイートして頂きましたので
興味を持って下さった方が多くおられたのだと思いました。
実はこれは2012年のウォール・ストリート・ジャーナル
の記事から引用した数字です。

jp.wsj.com

この記事のタイトルは、『終末医療―医師と一般人はなぜ
選択が異なるのか』というもので、「医療者と一般の方の
医療行為への認識の違い」の一例として挙げられたもの
です。医療者は日々の診療の中で、医学・医療の限界を
知っています。しかし、一般の方々はメディア等の限られた
情報の中からでしか、それを知り得ません。病院や施設で
亡くなる患者さんが多い中で、人が衰弱し、死にゆく過程も
良く知らないという人も多いのではないかと思います。

この記事は、次のようにも述べています。

言いたくはないことではあるが、医者も死ぬ。ここでの
彼らの特徴は、大半のアメリカ人より、いかに多くの
治療を受けているかではなく、いかに「少ないか」である

医者は、病気の進行について正確に理解しており、どんな
選択肢があるのかを知り、受けたいと思う治療はどんな
ものでもたいてい受けられる。しかし、どちらかといえば、
医者の最期は静かで穏やかだ。

同じような記事は他にもあります。『How doctors want to die
is different than most people』というCNNニュースの記事
です。こちらは和訳されていませんがブラウザの和訳機能でも
意味は十分分かると思います。私がざっと検索しただけでも
同様の記事はいくつも見つかります。

edition.cnn.com

この記事で印象に残るのは、CPRを行う医師の、
「死にゆく人を殴っているように感じた」
という言葉。そして
「ごめんなさい、ごめんなさい、さようなら、と言いました。
何故なら私には(蘇生が)成功するとは思っていなかったから」
という言葉。

そして、

「スタンフォード大学の研究によると、終末期の病気に直面
した場合、医師の約90%が蘇生と積極的な治療を諦めること
が示されています。」

と、あります。

少し話は変わりますが日本の医師は、自分自身が延命治療を
受けることに関してはどのように考えている
でしょうか。
2012年、CareNetというサイトの医師会員1000人にアンケート
した結果がここに紹介されています。

news.mynavi.jp

こちらによると、70%の医師が延命治療を受けたくないと
回答
しました。では30%は希望しているのかと言うと、
「家族に任せる」「主治医に任せる」「分からない」等の
回答が多く「決められない」という考えに思えました。
これに対して積極的な治療を希望するのは1.4%だったと
いうことです。

一応断りしておきますが、延命治療の一環として心肺蘇生
を行うことはあっても、本来心肺蘇生は健康な方が急に
心肺停止になった時に行われる治療です。上記のように確率
は低いながらも、社会復帰する方もおられるので、同列に
扱うべきではないかもしれません

ただ、心肺蘇生を行い一か月後に生存していた方が8%という
数字の裏には、「一旦蘇生はしたがすぐ亡くなってしまった」
方が一定数おり、その人たちは結果的には「2回亡くなった」、
もしかしたらとても苦しい想いをしたのではないか、とも
想像出来ます
。また、社会復帰出来なかった方の中には、
二度と言葉を発することもなくベッドに横たわるだけの人生
である人も含まれるのです。ですので、医療者の中には
たとえ低確率で助かる見込みがあっても、心肺蘇生自体を
受けたくない、という意見があるのも当然だと思います。

Twittweでも繰り返し言っていますが、私の願いは延命治療を
なくすことではなく、誰もが医療者のように正しく医療の
可能性と限界を知り、自らの意思で治療を受けたり受け
なかったりが選択出来ることです。

そして自身が判断が出来なくなった時のために、
事前に情報を集め意思を表明しておく事の大切さ
を一人でも
多くの方に伝えたいと思っています。