Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

「易怒」に使う薬

患者さんの易怒に薬が効くか、というと結構効きます。
介護者が助かる場面ばかり強調して来ましたが、易怒
の症状を呈する患者さんの多くは強い不安や苛立ちを
抱えていますから、御本人も楽になると思います。
せん妄で興奮している方にも同じアプローチは可能
ですが、より強い治療が必要になると思います。
それから興奮させる作用を持った薬は一旦中止する
事も重要です。

1.ベンゾジアゼピン系(以下BZ系)
BZ系は覚醒度を下げせん妄を招く、筋弛緩作用により
転倒を招く、常用量依存と断薬時に起こる反跳性の
不眠・苛立ち等のために認知症の高齢者には使いにくい
と教えられました。ただ、コウノメソッドではセルシン
を使いますし、睡眠薬としてもBZ系をむしろ推奨して
います。私も敢えて第一選択では使いませんが、他が
合わない時にはワイパックス等を使うことがあります。
すごく良かったという経験はあまりありません。

2.使いやすい薬
意外と推奨出来るのが、抑肝散・メマリー・グラマリール
ではないでしょうか。

河野先生はメマリーを「どこに落ちるか分からない変化球」
「眩暈が多い」と注意を呼び掛けていますが5mgくらいでも
意外と易怒が軽減したりします。増やすと確かに具合が悪く
なる患者さんが多いです。逆に20mgまで普通に増やせる方の
易怒には殆ど効きません
。適応はアルツハイマー型認知症
だけですが、前側頭葉型認知症っぽい患者さんにも結構有効
のようです(あくまで私の経験です)。

抑肝散はレビー小体病の幻視・妄想に効くと有名になり
ましたが、広く「苛立ち」に効果があります。コウノメソッド
でもレビー小体病には第一選択で勧めています。低K血症は
無視出来ない頻度で起こりますが他の薬より安全であること
に間違いはありません。他とも組み合わせやすいです。

グラマリールは「脳梗塞後遺症に伴う攻撃的行為」等の
適応病名があります。コウノメソッドでもアルツハイマー
型認知症や脳血管型認知症では第一選択として推奨して
います。効く人にはかなり効きます。但し、レビー小体病
やパーキンソン病では症状を悪化させるので使わない方が
良いと思います。

ちなみに、コウノメソッドでは「ピックスコア」
「レビースコア」を用いての薬剤の選択を勧めています。
これは非専門医には分かりやすい試みだと思います。
詳しくは『コウノメソッド2016』をダウンロードしご覧
下さい。

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コウノメソッド2016

http://www.forest-cl.jp/method_2016/kono_metod_2016.pdf


3.デパケン
抗けいれん薬。コウノメソッドでは推奨していませんが、
錐体外路症状がなく鎮静作用も一般的にあまりないため
使いやすい
です。シロップはいかにもという感じの赤色
ですが、ジェネリックのエピレナート等は透明ですので
飲み物に混ぜるのもありだと思います。200mg/日程度
から始めます。副作用は高アンモニア血症が有名です。

4.その他の抗精神病薬
コウノメソッドで言うところの「ピック病らしさ(上記)」
がある患者さんにはウインタミン(=コントミン)が確かに
合います。特記事項として書いておきます。但し、肝機能
障害には注意です。

セロクエルは他の抗精神病薬とくらべ効果/副作用のバランス
から使いやすいです。私は1日~2回12.5mg程度から使うように
しています。御承知の通り糖尿病では禁忌です。眠気は強く
ないという記載も見ますが、個人的には強い方だと感じます。

リスパダールはコウノメソッドでは屯用程度の使用まで
とされています。内服液などがあり使いやすいですが
強い反面副作用も強い印象です。コウノメソッドでは
むしろ0.3~0.75mg程度のセレネースが勧められますが
私はこの辺りの薬剤は使用しても屯用か短期間に留め
ています。

あまり人気がないですが、ルーランは副作用が少なく、
私は高齢者向きではなかいと思っています
(1回4mg~)。

以上です。まとめると私は初めにメマリーを少量の使用
を考え、使えないか効果がなければコウノメソッドによる
ピックスコア、レビースコアを参照し抑肝散・ウインタミン・
グラマリールを考慮します。これらが使えない、効かない
場合はデパケンかセロクエル・ルーランを考えます。

最後に、いくつかのの薬は保険で切られないという保証は
出来ません。御了解のうえ御使用下さい。