Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

ホスピスの実情

本日はホスピスについて、知られているようで知られていない、
しかし多くの方に知って頂きたい内容をまとめてみます。
殆どの医療者にとっては常識の話題になります、御了承下さい。

www.hospat.org


まず、教科書的な説明は、例えば↑この辺りをご覧になると
分かります。が、表向きの『奇麗ごと』は「ググれば」他の
ページでも確認出来ますので、ここではもう少し現実的な
お話をします。

まず、ホスピスは「がんの末期」の方に限定された施設です。
例外的にエイズの末期を引き受ける場合もありますが治療の
進歩により殆どホスピスでエイズの方は見掛けません。
日本では、他の疾患ではホスピスは利用出来ません
告知は原則必須です、というより告知なくホスピスに入っても
患者さんは「ここは治療していないから退院したい」と不信感
を募らせることになると思います。

末期の定義は主治医により「余命半年以内と考えられている
こと」です。抗がん剤治療中の方はホスピスに登録出来ない
のが普通です
。ホルモン療法については各ホスピスの担当医
の判断になります。内服なら継続可、という辺りが多いのでは
ないかと思いますが、『リュープリン』辺りになると微妙です。

ちなみに、「抗がん剤が緩和治療になっている」場合もあり
ますが、現実には「治療」と「緩和」にきれいに線を引く
ことは出来ません。治療中でも緩和ケアが必要な方がおら
れるのは確かですが、ホスピスについてはほぼ例外はないと
お考え頂いた方が良いと思います。

受けられる治療も、ホスピス間で差があります。麻薬等を用いた
身体的な苦痛を軽減する治療は(ある意味それがホスピスの目的
なので)受けられますが、例えば経過中に肺炎を起こした時の
抗生剤の治療や、吐血した時の内視鏡、輸血、胸水への胸腔穿刺
や胆管閉塞に対するステント・PTCD等、また食事が摂れなかった
時の点滴をするかどうか等は施設によりかなり違います
気になる方は登録の前に聞いてみる事をお勧めします。
実施してくれるから良い病院とは限りませんので総合的に考えて
下さい。

ホスピスを利用するためには事前に外来にを予約し受診する
必要があります。受診時御本人がいなくても大丈夫ですが、
外来受診時にかかる金額は自費になると思います(5000円
~8000円程度でしょうか)。予約が取れるのが一か月から
一か月半くらい先になるのが普通で、急に利用したいと
言っても利用出来ない施設
なので、抗がん剤治療が終了した
辺りで登録しておく事を強くお勧めします。施設がきれい、
等のハード面に目が向きがちですが、主治医や職員の人柄
が患者さんに合うかどうかが一番大切です。

「ホスピスは高い」と思われています。間違いではありません
が高額医療が適応され、一般の入院とさほど変わらないはず
です。高いのは「差額がかかる個室」を選ぶからで、ホスピス
は必ず差額無料の部屋を半分以上用意するのが決まりになって
います。入院時は空いていないかもしれませんが、「空いたら
差額のかからない部屋に移動させて下さい」等は希望があれば
入院の時に話しておくと良いと思います。

それからとても大事なことですが、入院を希望した時にすぐに
入院出来るのか、入院出来なかったらどうするのか
、は事前に
確認して頂くことをお勧めします。ホスピスを利用する
患者さんの殆どは、「そろそろホスピスに入ろうかな」という
ものではなく、急に具合が悪くなり、「すぐに入れて下さい」
という緊急に近い入院が多い
と思います。その場合、部屋が
空いているとは限らず、夜間・休日も含めて常にホスピスの
先生がいる、ということはまずありません
。多くのホスピスは
「急変時は前の病院にかかって、部屋が空いたら転院して
下さい」という説明をしているはずです。中には休日夜間の
入院も引き受けているところがありますが少数です。
「具合が悪くなったら、すぐに入院出来ますよ」と言われても、
先生の言う「すぐ」と患者さんの期待する「すぐ」が違う
場合があります
ので注意が必要です。

最近は分子標的薬などがんの治療も変わってきており、本当に
具合が悪く患者さんが寝たきりに近い状況まで抗がん治療が
行われている場合が多いです。また、患者さん・御家族にも
「まだホスピスは大丈夫だろう」と考える傾向が強いのですが
実際には病院に通院出来ない体力からではホスピスの予約が
間に合わない事が多いです
。患者さんの病状は最後の二か月
程度で著しく変わりますが、これが抗がん治療の中止の
タイミングと重なることが多いのです。治療中止のショック
が強い時期にホスピスなんて…というお気持ちは尤もですが
いざという時に治療を行ってくれた病院に長く入院出来ると
いう保証は全くありませんので、保険の意味でも早めの対応
をして下さい。

ちなみに、○○先生のいる「有名なホスピス」は当然入院
したい人もたくさんいますので、いざ入りたい時になかなか
入院出来ず、間に合わずに亡くなる方もいらっしゃいます。
そこまで有名なところに拘らなくても、良い施設はたくさん
あります
ので、出来れば御自分の目でホスピスを見学して
おくと良いと思います。

最後に、「自宅での最期」を思い描いていても、様々な理由で
それが出来ない可能性があります。自宅療養を決めていても、
ホスピスの登録を済ませておいて「必要がなければ入院しない」
ことも出来ますので、療養の選択肢を拡げておく事は良いこと
だと思います。助けてくれる味方は多い方が良いですし、多く
の場合ホスピスは「心強い味方」になってくれると思います。