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Not doing but being

主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

ハイスコ舌下

昨日の続きです。

※初めにお断りしておきますが、ゴロゴロいったから
と言って死前喘鳴とは限りません!他の病態でも、
喉もとでゴロゴロ言うことはあります。原因により、
薬剤の反応も当然違いますし、後述する吸引も全て
において推奨されない訳ではないのでご注意下さい!

「死前喘鳴」という言葉があります。
衰弱し意識も低下してくると、咽頭や上気道の内部に
唾液等の液体が貯留し、飲み込んだり喀出出来ないため
喉もとでゴロゴロという音が聞かれるようになります。

通常ここまで衰弱し意識レベルが低下した患者さんでは、
周りが思っている程この症状が不快という訳ではなさそう
です。しかし、それでも苦しそうだ、という場合に、
口腔内の唾液等の分泌量を低下させるために、抗コリン作用
を持つ薬剤を使用する場合があります。
患者さんは既に内服が出来ませんので、注射で使用する
事が基本ですが、「舌下投与」という方法も用いられて
きました。

ハイスコ注(0.5mg/1ml/A)0.5A 舌下

在宅では御家族がいちいちアンプルを切る事が出来ませんので、
代わりにアトロピン点眼薬を処方しておき、喘鳴が強い時に
2滴程度使用して頂く、という工夫もありました。

正直これは効いているのか?という疑問がありましたが、
Heislerらによってやはりプラセボと差のないという研究
が発表されました。同様の研究は他にもあるそうです。

www.ncbi.nlm.nih.gov

今回の『がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン』
でもこの結果を踏まえ、死前喘鳴への抗コリン薬の使用は
非推奨になっています

しかし、ひとつ疑問なのは、抗コリン薬の全身投与に関しては、
少なくとも唾液分泌量を減らし、口腔内を乾燥させる作用を
持つことは疑う余地がないのではないかということです。
上記論文等で効果が否定されているのは舌下投与なのに、
全身投与も効果がないと一緒に結論付けられているのは
なんだか腑に落ちないものが残ります
(全身投与をプラ
セボと比較したものはないはずです)。

もちろん、抗コリン薬による口腔内乾燥というのは、患者さん
の意識があれば気分の良いものでないのは確かです。また、
唾液が少なくなるとは言え、(ここが大事なのですが)痰
の場合、粘稠となりかえって取りにくくなる場合もあると
思います。また意識を低下させ、せん妄にも影響すると思う
ので、患者さんの状態によっては使いにくいのも確かで、
私もハイスコを良いものと考え「使いたい」と言っている
訳ではありません。ただ、根拠もなく全身投与も効かない
と言い切ってしまう(あやふやにしてしまう)態度は科学者
としてどうなのか、という疑問を持っているだけです。

いずれにしても死前喘鳴は患者さんの自然な死の経過であり
基本的に良い方法はないが患者さんがこの症状でとても苦しい
思いをすることはないこと、これを周囲がきちんと認識する
ことが一番大切なように思います
。ただ、それがとても難しい
場合は、おまじない程度かもしれませんがアトロピンの点眼を
処方し使って頂くことも、止める程悪いことではない気が
します(結構苦いようですが)。痰の吸引よりは余程患者
さんの苦痛は少ない
ものと思われるからです。