お一人様の在宅死(1)
まず、お一人様と一言に言っても、未婚、パートナーと離婚か
死別、子供や兄弟、姪や甥といった肉親がいる場合等色々で、
全くの天涯孤独では少し話が違って来ますがいずれにしても
結論から言えば在宅死は可能です。
ただ、全員いかなる場合もか、と言うとそうではありません。
最も大切なことは、御本人が強く自宅での看取りを希望して
いるかどうか、です。気持ちと覚悟があれば、介護保険/自費、
肉親・知人の協力を得て何とかなる場合が多いです。一方で、
御本人か身内に強い反対があれば、ほぼ無理です。
以前地域の講演で、独居の看取りが可能であるとお話をした
事がありますが、話が終わった後に「自宅で看取りなど無理
に決まっている」という方の御意見を、お怒りと共に頂戴した
ことがあります。「そうはおっしゃっても、実際に経験が
ありますので…」と言ってもますますお怒りになり、お身内が
一人でおられる時に倒れ、搬送が遅れて大変であった話を
されました。講演後はあまり時間がありませんので、詳しい
話し合いも出来ず、聞いて下さった皆様にも不快な想いをさせて
しまったのでは…と後で申し訳なく思った事があります。
しかし、その後「町医者日記」の長尾和宏先生も同様の経験を
blogに書いておられたので、私の経験や話し方だけの問題では
なかったのだな、と思いました。
上記の御意見を下さった方は、御自身の身内の経験から独居で
急変した場合の不安を想像し、「無理に決まっている」と
考えられたのだと思います。「無理」という方は、もちろん
在宅死は絶対にお勧めしません。説得するものではないからです。
(ちなみに、このお身内の方は看取りの段階ではなく、直前まで元気
で何もご病気のなかった方でした。まずここでかなり話が違います)。
看取りの段階では恐らく食事が摂れず、トイレにも行けず、一日中
寝て過ごす状況だと思います。その時に何かが起こったとして、
「病院へ行けば何とかなる、苦しまないで済む」と思うから搬送すべき
という考えになるのだと思います。確かにもしかしたら、良い結果に
なる「かも」しれません。
しかし、多くの場合、私はそうではないと思ってます。病院に搬送
されてしまった方が、延命処置により苦しみが多くなる。四肢を
抑制され尊厳が損なわれる。そういったケースをたくさん見て
来ました。看取りの間際の方が、「病院に搬送される」事が何を
意味するのか。その理解でも大きく意見が変わってくると思うのです。
…長くなりましたので、続きは明日。