Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

訪問診療

『いのちの停車場』

5月から上映が始まった、『いのちの停車場』。 訪問診療を題材にした映画です。 残念ながら都内では「緊急事態宣言」延長の ため観ることが出来ません。 俳優陣がとても豪華で良さそうなのですが 他県に行く時間もなく、私は小説を読むこと にしました。いの…

『早川一光の「こんなはずじゃなかった」』

往診医の大先輩である早川一光先生は、多発性骨髄腫の ため2018年6月にご自宅で亡くなりましたが、この本は 同タイトルで京都新聞に連載していた早川先生の連載を 娘さんがまとめ、介護の様子を加筆して出版された本になります。早川一光の「こんなはずじゃ…

「何処で亡くなるか」より大事なこと

最終的に自宅で亡くなった患者さんの家族から、 「最後まで家にいさせてあげられて良かったです」 という言葉を頂くことが多いです。 「そうですね」と答えると同時に、在宅医として お役に立てたと嬉しく思う瞬間でもあります。しかし、自宅でなく病院で亡…

『がんになった緩和ケア医が語る「残り2年」の生き方、考え方』

この秋に出版された、緩和ケア医 関本 剛先生の著書です。 タイトル通り、肺がん脳転移、治癒は見込めず、 生存期間の中央値は2年と。 少し前に購入してしましたが、同じ世代の緩和ケア医、 開業医であり訪問診療も行っている先生ということもあり なかなか…

『死亡直前と看取りのエビデンス』

今日は久し振りの本の紹介です。全く新刊ではないです。 過去にTwitterでも紹介したように記憶しています。 既に読まれたという方も多いかもしれませんが、まだ の方は是非お勧めしたい本になります。死亡直前と看取りのエビデンス作者:森田 達也発売日: 201…

訪問をお断りすること

今回は日記のような内容になります。開業して、7月1日で7年目を迎えます。 訪問診療の殆どは紹介で成り立っています。 病院の連携室、訪問看護師さん、ケアマネジャーさん が、「この患者さんは虎太郎先生が合っているのでは」 と考えて下さりご紹介を頂くこ…

電話・オンラインによる訪問診療についての提言

新型コロナウイルスの流行を受けて、厚生省は2月28日から 定期的な外来受診の代わりに、電話・オンラインでの再診を 認め、続いて4月13日より初診も、直接クリニックや病院を 訪れることなく診察を受け、薬を受け取ることが可能と なりました。しかし、4月15…

「カウンセリング」から学ぶこと

私は今、カウンセリングの資格を勉強していますが、 医療とカウンセリング、どちらも「問題の解決」を 目的としながら、考え方が大きく異なることは興味 深いと思います。医療は、具体的な問題の解決策を医師が考えて提案 します。より専門的な知識が必要で…

24時間体制、個人的な考察

最近、とある訪問看護ステーションが24時間対応の体制を やめたとお聞きしました。長くお付き合いをさせて頂いて いるステーションで、今後も良い関係を続けられたらと 思っていたので残念に思いました。もちろん、考え方の問題であり良い悪いではありません…

介護サービス導入の不安や抵抗感について

癌で療養中の患者さんが訪問診療を希望する段階、つまり 病院に通うことが難しい時、その患者さんに残された時間 は2~3か月以内ということが多いです。そしてこの2~3 か月は、これまでの数年に比べてずっと症状の変化が大きい です。私達は多くの患者さん…

皮下輸液

在宅でお看取りとなる、多くの方に私はこの皮下輸液という 方法をとります。人は最期のときに近付くと、次第に柔らかい 食べ物しか受け付けなくなり、やがて水分を摂ることも難しく まります。水分なしで人間が生きることが出来るのは多くの 場合数日から長…

『在宅がん医療総合診療料』の課題(2)

昨日の続きです。昨日の記事はこちら。kotaro-kanwa.hateblo.jp『在宅がん医療総合診療料』は在宅で療養されている末期がんの 患者さんに行われる在宅医療のひとつのかたちで、「医師と 看護師合わせて週4回以上」の訪問を条件にやや高額の医療費が クリニッ…

これからの訪問診療制度に望むこと

CBnewsで、『「医師の高齢化」は在宅医療のブレーキに?』という タイトルを見掛けました。有料記事(月4600円!)なので読めません でしたが、2015~2017年は在宅訪問診療料のレセプト数はそれまでの 増加から横ばいに転じているとのこと。それはそうでしょ…

「一番苦しいのは本人」ですか?

がんの末期に限ったことではありませんが、介護している家族 に向かって「あなたも大変だと思うけれど、御本人の方が辛いの ですよ」等と声がかかることがあります。これは間違っていると 思います。もちろん、痛みや呼吸苦、嘔気などの身体的な苦痛を 感じ…

「それでも良いですよ」~私の考える良い在宅医

いつも参考にさせて頂いている、いまいホームケアクリニック の今井先生のブログ記事から。「在宅医に求められる資質」に ついてのお話です。imai-hcc.com私も全く賛成です。在宅医に求められる資質は、病院医とは 少し異なります。いえ、究極的には人間とし…

『痛い在宅医』

2017年12月に出た、長尾和宏先生の著書。 在宅療養を、特に看取りを考えている御家族に必須の本 ではないかと思います。痛い在宅医作者: 長尾和宏出版社/メーカー: ブックマン社発売日: 2017/12/21メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見…

オンライン診療の可能性

医療関係者の方は既にご存知の通り、今回の報酬改定から オンライン診療にルール付けと保険点数が設置されました。 ただ、定められた点数は非常に微々たるもので、手間と初期 費用、維持費を考慮すると完全にペイしないものでした。例によって、今井先生のブ…

施設訪問診療の終焉か

昨日、中医協から2018年度の診療報酬改定の個別項目が発表 されました。細かい点数配分はこれからですが、訪問診療は 大きな節目を迎えることになりそうです。個人的にはだいたい 要件を満たしていますので、今回は大きな影響はないと 思っていますが…。具体…

平成30年診療報酬改定における『訪問診療』予測と私の考え

平成30年4月の診療報酬改定に向けて話し合いが行われて います。この中で訪問診療ではどのような変更がありそう でしょうか。まず、全体的な見通しですが前回までの、 特に施設(特医総管)の大幅な削減がたたり、在宅支援 診療所の数は緩やかに減少していま…

顔の見える連携(関係)

在宅医療はクリニックだけでは成立しません。ケアマネージャー と訪問看護師、時に介護士やデイサービスとの情報交換も大切に なります。もちろん、病院とクリニックの連携も重要になります。 ですので、いかに良好な連携を組めるかが重要になり、 しばしば…

平穏死ー患者は本当に苦しんでいないのか

長尾和宏先生のブログにこんな記事がありました。blog.drnagao.com長尾先生は在宅医療の一線で活躍されている先生です。 たくさんの本を書かれ、あちこちで講演を行うなど 在宅医療普及に向けた活動も精力的に行っておられます。 胃瘻の本などはとても良く書…

『がんと命の道しるべ』

がんと命の道しるべ 余命宣告の向こう側作者: 新城拓也出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 2017/07/24メディア: 単行本この商品を含むブログを見る素晴らしい本です。多くの患者さんとその御家族、そして さまざまな場所で緩和ケアに従事しているスタッフ、…

「訪問診療をせずに往診だけお願い出来ますか?」

訪問診療をやっていると、表題のような質問を受けることが 時々あります。そもそも訪問診療というものが分かっていない 方が大部分だと思いますので少し説明をします。在宅療養支援診療所(在支診)が制定され、今の形の訪問診療が 始まったのが2006年です。…

「なんとめでたいご臨終」で私が感じた違和感

なんとめでたいご臨終作者: 小笠原文雄出版社/メーカー: 小学館発売日: 2017/06/21メディア: 単行本この商品を含むブログを見る昨日、この本の紹介をさせて頂きましたが、本日は その続きです。書籍の主旨には賛同しますし、決して ケチを付ける目的ではあり…

末期がん患者さんの吐下血

報告によりまちまちではありますが、末期がんの患者さんの 1~5%に顕著な吐下血が起こると言われています。特に吐血 は御本人にとっても死を強く連想する恐ろしい出来事だと 思います。この場合医療者は、家族はどのような対処をすべき でしょうか。まず、…

目的と手段を入れ替えてはいけない

Twitterで見た、ある薬剤師さんのツイートを御紹介します。 在宅医療の主語は誰か? 他ならぬ患者さんである医療従事者が訪問するから在宅医療なのではなく、 患者さんが自宅で暮らしながら受ける医療が在宅医療なんだと思うだからこそ、訪問は手段なんだと…

がん医療の狭間

東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンターの大津秀一 先生のブログから。ameblo.jp抗がん剤治療の継続が困難になると、これまでの担当医の 外来に通院出来なくなる事がしばしばあります。がんの 治療医は多くの治療中の患者さんを担当しており、その後 …

『100点中10点』に思う

6月24日のm3(エムスリー)に、めぐみ在宅クリニック院長、 小澤竹俊先生のインタビューが載っていました。ホスピスを 経験し、現在は訪問診療医として多くの患者さんと関わり、 たくさんの方を看取って来られた先生です。診療体制に ついてのお話のあと、こ…

終末期の在宅酸素使用は保険適応外

先週末、私がTwitterで取り上げた話題です。 多くの方に知って頂いた方が良い内容なのでブログでも お話させて頂こうと思います。まず、6月15日の記事にも書きましたが、終末期医療は 患者さんの苦痛を取り除くために行う医療には保険適応 外のものが多く、…

在宅緩和医療、保険適応外の壁

2017年6月7日の、薬事日報の記事です。 とても大きな問題だと思うので紹介させて頂きます。www.qlifepro.com緩和ケア領域の薬剤は保険適応外処方が多く、病院から 在宅へのスムーズな以降に支障を来たす例があるという内容。 長野県の医師を対象としたアンケ…