Not doing but being

東京都大田区で開業している訪問診療医のブログ。主に緩和ケア、認知症、訪問診療、介護、看取り分野の話題です

看取り

救急搬送は訪問診療の「失敗」か

今日は、こんなタイトルにしてみましたが、訪問診療医の 多くは特に看取りを意識して訪問している患者さんの場合、 患者さんが救急搬送になると自分の訪問が「失敗してしまった」 と感じる医師が、あるいは看護師が、割合に多くいるようです。 講演や勉強会…

言えない医者、聞けない患者

Aさんは、あるかなり進行したがんの患者さんです。 一時期抗癌剤が効いて安定した時間を過ごせていましたが 治療に効果がなくなり、そんな中がんが原因と考えられる 腸閉塞で入院となりました。運よくイレウス管が抜けて 退院出来ましたが、腹水は溜まり食…

24時間体制、個人的な考察

最近、とある訪問看護ステーションが24時間対応の体制を やめたとお聞きしました。長くお付き合いをさせて頂いて いるステーションで、今後も良い関係を続けられたらと 思っていたので残念に思いました。もちろん、考え方の問題であり良い悪いではありません…

介護サービス導入の不安や抵抗感について

癌で療養中の患者さんが訪問診療を希望する段階、つまり 病院に通うことが難しい時、その患者さんに残された時間 は2~3か月以内ということが多いです。そしてこの2~3 か月は、これまでの数年に比べてずっと症状の変化が大きい です。私達は多くの患者さん…

「レスキュー」の適正使用について

ある患者さんの、レスキューで使うオキノームの 使用状況が不適切だったので確認したところ、 誰がどこで説明したのか分からないのですが、 御家族は5分経ったら再度使用して良い、と理解 されていたことが分かりました。オキノームはオピオイドを使用してい…

病気と居場所

前回、野田あすかさんの本から居場所について思ったことを 書いてみました。居場所とは、気持ちの通じる相手がいて、 「このままで、居てもいい」と思える場、そこにいれば 「頑張れる場」のことだと私は思っています。今日はこの 「居場所」を医療の側面か…

緩和ケアの本質は耳を傾けること

私は痛いこと、苦しいことが苦手な人間なので、患者さん の苦痛を減らす仕事がしたいと緩和ケアを学びました。 痛み止めの使い方を覚え、セデーションの方法を学び、 ある程度自信を持つまでにはそれ程長い時間はかかり ませんでした。しかし、そんな頃イン…

皮下輸液

在宅でお看取りとなる、多くの方に私はこの皮下輸液という 方法をとります。人は最期のときに近付くと、次第に柔らかい 食べ物しか受け付けなくなり、やがて水分を摂ることも難しく まります。水分なしで人間が生きることが出来るのは多くの 場合数日から長…

平穏死は良いが誰にでもベストだと言えるだろうか

Dr.和こと長尾和宏先生が、また鎮静について書いておられました。blog.drnagao.com面識はないですが非常に熱心な良い先生だと思います。 文才もおありなので、在宅医療や平穏死について数多くの本 を書かれ、啓蒙活動にも力を入れておられます。 賛同出来る…

『在宅がん医療総合診療料』の課題(2)

昨日の続きです。昨日の記事はこちら。kotaro-kanwa.hateblo.jp『在宅がん医療総合診療料』は在宅で療養されている末期がんの 患者さんに行われる在宅医療のひとつのかたちで、「医師と 看護師合わせて週4回以上」の訪問を条件にやや高額の医療費が クリニッ…

鎮静で苦痛はとれているのか

終末期に鎮静を行っていても患者さんは苦しそうだという話 を聞くことがあります。痛い、つらいのに声が出せない、と いった御自身の経験などから「苦しいのに声をあげられない のでは…」と心配する声も聞きます。基本的には、鎮静を開始するよりは楽になっ…

鎮静が必要なのは医師の技術が劣っているからか

興味深いタイトルの記事があるな、と思っていたら、大津 秀一先生 のブログでした。news.yahoo.co.jp色々な緩和ケア医がいますが、大津先生は最も勉強家で、何より とてもバランスのとれた先生の一人だと思います。おこがましい ですがとても私に近いお考え…

beingが苦痛な時は

新城拓也先生のブログ記事から。drpolan.cocolog-nifty.com新城先生は不器用なほどストイックで真面目に緩和ケア に向き合っている先生、と私は勝手に思っています。お会い したことがないので、あくまでブログの記事などからの想像 ですが。私も同じ道を歩…

これからの訪問診療制度に望むこと

CBnewsで、『「医師の高齢化」は在宅医療のブレーキに?』という タイトルを見掛けました。有料記事(月4600円!)なので読めません でしたが、2015~2017年は在宅訪問診療料のレセプト数はそれまでの 増加から横ばいに転じているとのこと。それはそうでしょ…

鎮静と安楽死

ここ最近、以前と比べて安楽死の議論がさかんになって来た ように思います。写真家幡野広志さんのブログやTwitterの 影響も少なからずあるのではないかと思います。 緩和ケアには、「鎮静」という治療が以前からありました。 患者さんの苦痛を取り除くために…

『在宅無限大』

在宅無限大: 訪問看護師がみた生と死 (シリーズ ケアをひらく)作者: 村上靖彦出版社/メーカー: 医学書院発売日: 2018/12/25メディア: 単行本この商品を含むブログを見る年末年始に読んだ本のひとつでしたが、 なかなか興味深い内容でした。 著者の村上靖彦さ…

医療者が死にゆく時

長年大病院で勤務したある看護師さんが退職後 に末期がんを告げられ、いよいよ病状が悪く なった時、自分とはふた回りくらい違う歳の 看護師の前で涙をみせられたそうです。「自分が思い描いていた最期とは違った、 こんなに辛いものだとは思わなかった」こ…

胃瘻を中止にすることは出来ない!?

ある胃瘻の患者さんの御家族から、 「胃瘻にしていると老衰は出来ないのですか?」 と尋ねられたことがあります。老衰とはこの場合、 老衰死=平穏死のことを指しているのでしょう。老衰死の場合、人は物を摂らなくなりますが、 多くの死をみているとこれは…

心肺停止で救急車を呼び警察沙汰になった話

訪問診療で看取りを前提にしている場合、もし患者さんが 呼吸をしていないと分かった場合は訪問医(私)にまず 連絡をするように、と伝えています。搬送になると運ばれた先 の病院では診断書が書けないという理由で、警察が呼ばれる のが普通です。呼ばれた…

老いと「受容」

私は患者さんが病気や死を受け入れるか、それ自体はどちら でも良いと考えています。投げやりな意味ではなく、それは 患者さんの価値観や生き方によるからです。過去のエントリーでも、 kotaro-kanwa.hateblo.jpkotaro-kanwa.hateblo.jpこの辺りで書かせて頂…

命の重み

私がレジデントの頃の話です。 病院かかりつけの患者さんが窒息で救急救命センターに 搬送されました。一命を取りとめましたが食事も会話も 出来ず、胃瘻に。また、もともと透析をするかどうか ギリギリの方でしたが、救命後は透析も必要となりました。 経過…

「一番苦しいのは本人」ですか?

がんの末期に限ったことではありませんが、介護している家族 に向かって「あなたも大変だと思うけれど、御本人の方が辛いの ですよ」等と声がかかることがあります。これは間違っていると 思います。もちろん、痛みや呼吸苦、嘔気などの身体的な苦痛を 感じ…

「死の受容」に対する疑問(2)

昨日の続きになります。kotaro-kanwa.hateblo.jp昨日のブログでは、西先生のブログ記事、「患者さんは死を 受け入れられるのかどうか」を紹介させて頂きました。 そして我が国のホスピスがキュブラー・ロスの影響を強く 受け、まるで「死の受容」に至ること…

「死の受容」に対する疑問(1)

3月28日、川崎市立井田病院の西先生がこんなブログを書いて おられました。https://www.buzzfeed.com/jp/tomohironishi/shihaukeirerarerunoka?utm_term=.yxG1bjPa#.end58z4Zwww.buzzfeed.comTwitterでも散々絶賛したのですが、私がこの仕事をしながら 長年…

ホスピス医を目指す私が言われた言葉

医師になる前から緩和ケアに興味があった私は、がんという 病気を学ぶために消化器内科が良いと考え入局しました。 消化器は、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、 胆嚢・胆管がんなど悪性疾患の患者さんが多いのが理由です。 しかし、医局の…

『痛い在宅医』

2017年12月に出た、長尾和宏先生の著書。 在宅療養を、特に看取りを考えている御家族に必須の本 ではないかと思います。痛い在宅医作者: 長尾和宏出版社/メーカー: ブックマン社発売日: 2017/12/21メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見…

スパゲティ症候群とクオリティ・オブ・デス

「ピンピンコロリが良い」「眠るように死にたい」と多くの 方がおっしゃいます。しかし「ピンピンコロリ」で死を迎える ことが出来る人は5%に過ぎない、と在宅医の長尾 和宏先生は おっしゃっています。「スパゲティ症候群」という言葉を御存知でしょうか。…

「どちらが、本人がより幸福か」という軸

胃瘻造設に当たり、多くの患者さんは自分の意思を表現 出来る状態にないため、家族が決断を迫られることが しばしばあります。「延命」か「実質的な患者の死」を 限られた時間の中で決断しなければならない苦悩は 計り知れないものがあります。また、少し異…

終末期の輸液

本日は『いまいホームケアクリニック』さんのこちらの記事 から。imai-hcc.com書いてある内容は、私個人は全く賛成です。 ただ、少し自分の意見を加え、書かせて頂こうと思います。少しずつ衰弱された患者さんが、口から水分を摂れなく なった場合、多く余命…

VSEDに対する私見

新城先生が書かれた、VSED (voluntary stopping eating and drinking) に関する記事が、Twitterで話題になっていました。headlines.yahoo.co.jpVSEDとは患者さんが自ら飲食を止めることによって死期を早める 行為を指します。上記の記事では、新城先生が10年…